ファイナンシャルプランナー(FP)とは、一般的には国家資格や日本FP協会が認定した資格を保有する専門家のことを指します。相談者のライプランを実現するため、毎月の家計改善や将来の資産形成の方法、教育・住宅・老後の資金計画など、経済的な側面から総合的な計画を考え、アドバイスとともに実行の支援を行います。
ファイナンシャルプランナーの資格とは、どのような資格なのでしょうか。また相談できること・できないことはどんなことなのでしょうか。ここでは、ファイナンシャルプランナーの資格の種類や内容、対応できる相談内容についてご紹介します。
ファイナンシャルプランナー(FP)資格の種類
ファイナンシャルプランナーの資格は国家検定であるFP技能士資格(1〜3級)と、日本FP協会が認定しているCFP®資格とAFP資格があります。これらは、FPとして必要な知識や経験を持つかどうかを示す資格になります。それぞれの資格の受講資格、必要な試験・要件を見てみましょう。
FP技能士資格(国家資格)
資格名 |
受験資格 |
必要な試験・要件 |
合格率 |
FP技能士資格 3級 |
なし |
学科試験+実技試験 |
学科試験:
80.78%〜87.01%
実技試験:
84.44%〜90.75%
1
|
FP技能士資格 2級 |
以下のうちどれか一つを満たす。
・AFP認定研修の受講修了
・3級FP技能検定合格
・FP実務経験2年以上
|
学科試験+実技試験 |
学科試験:
41.51%〜49.20%
実技試験:
56.33%〜62.11%
1
|
FP技能士資格 1級 |
学科試験、実務試験ともに以下いずれか一つを満たす。
■学科試験の受検資格
・2級技能検定に合格+1年以上のFP業務の実務経験を有する
・5年以上のFP業務の実務経験を有する者
・厚生労働省認定金融渉外技能審査2級の合格者で、かつ1年以上の実務経験を有する者
■実技試験の受検資格
・1級学科試験の合格者
・日本FP協会のCFP®認定者
・日本FP協会のCFP®資格審査試験の合格者
・FP養成コース修了者で、FP業務の経験が1年以上ある者
|
学科試験+実技試験 |
学科試験:
6.67%〜12.28%
実技試験:
84.59%〜86.07%
2
|
- 1 出典:日本FP協会 FP技能士の取得者数 及び 試験結果データ(2022年1月/5月/9月)
- 2 出典:一般社団法人 金融財政事情研究会 試験結果(2022年1月/2月/5月/6月/9月)
FP技能士資格を取得するには学科試験と実技試験の2種類の試験に合格する必要があります。3級の試験は実生活に役立つ、お金に関する基礎知識程度のレベルですが、2級以上の試験はFP相談を対応できるレベルの知識が求められます。
特に1級は学科試験の受験資格が「2級取得+1年以上の実務経験」または「5年以上の実務経験」など、FP業務の実務経験がある人しか受けられません。また、学科試験の合格率は6.67%〜12.28%と低く、難易度の高い試験であることがわかります。
CFP®資格・AFP資格(FP協会認定資格)
資格名 |
受験資格 |
必要な試験・要件 |
合格率 |
AFP資格 |
2級FP技能検定に合格 |
AFP認定研修の受講終了 |
- ※試験なし、研修終了により取得 |
CFP®資格 |
AFPを所持 |
・CFP®資格審査試験
・CFP®エントリー研修の受講・修了
・3年以上のFP業務の実務経験を有する
|
1科目ずつ受験する場合:
各科目の合格率 31.4%〜38.5%
6科目一括受験の場合:
4.5%
3
|
- 3 出典:日本FP協会 2022年度第2回CFP®資格審査試験結果
AFP資格とCFP®資格はどちらもFP協会が認定する民間資格です。AFP資格はFP技能士資格2級を持ち、FPに必要な専門知識を学習できる研修講座を受講した人が取得できます。CFP®資格はAFPを持ち、「3年以上のFP業務の実務経験」がある人しか受けられないため、より難易度の高い資格となります。
ちなみにAFP資格とCFP®資格の取得はどちらも研修講座の受講が必要ですが、具体的にどのような研修で・どんな知識・スキルを習得するものなのでしょうか。具体的に見ていきましょう。
AFP認定研修では、ファイナンシャル・プランニングに必要な倫理やコンプライアンス、ライフプラン、金融、保険など6つの専門分野にわたる専門知識を習得します。また、所定の課目・単位を履修した後に「提案書(ファイナンシャル・プラン)」を作成し、基準点をクリアする必要があることが特色の1つです。そのためAFP資格を持つ人は、FP業務に即した専門的かつ実践的な知識・スキルを持つ専門家であると考えてよいでしょう。
CFP®エントリー研修では、CFP®認定者に求められる倫理・コンプライアンスや、相談実務の基礎となるFP実務の6ステップを通信研修で習得します。FP実務の6ステップとは、相談者とFPとの関係確立から始まり、プランの提示、そして実行の援助、プランの見直しまで、相談者に最適なアドバイスを行うために定められたプロセスのことを指し、これらは各国のCFP®資格と同水準のものとなっています。そのため、CFP®資格は世界で認められた共通水準のファイナンシャル・プランニング・サービスを提供できる専門家の証明となっています。
信頼度の高い資格はどれ?
ファイナンシャルプランナーの資格には、国家資格と民間資格で複数あることが理解できたかと思いますが、どの資格が信頼度の高い資格なのでしょうか。各資格の受験・受講資格に基づいた関係性を図で表すと以下のようになります。
ファイナンシャルプランナー資格の関係図
- 1級FP技能検定の実技試験は、CFP®資格試験の合格者は免除されますが、免除期間は合格した年度の翌々年度末までとなります。
こちらの図の通り、AFPとCFP®、FP技能士1級の資格は、FP技能士2級以上の所持が前提となるため、信頼度の高い資格となります。CFP®はAFPを所持していないと受けられないため、CFP®の方がAFPより信頼度の高い資格となります。FP技能士1級とCFP®がファイナンシャルプランナーの最上位資格と理解していただければと思います。では、FP技能士1級の資格とCFP®にどのような違いがあるのでしょうか。
まず、学科試験における知識レベルには大きな違いはありません。CFP®の資格試験に合格すると、一定期間の条件付きで1級FP技能検定の学科試験が免除されます。これはCFP®の資格試験は1級FPの学科試験と同等レベルの試験として認められるためです。
CFP®とFP技能士1級の違いは資格更新の必要有無です。CFP®は資格取得後2年ごとに継続教育単位を満たす必要があるため、一定の知識レベルを維持することが求められます。一方、FP技能士1級でも継続的な学習を行う制度がありますが、CFP®のような更新は必要ありません。
このように保有資格によって試験の難易度や更新の有無が異なるため、相談先を選ぶ際は保有資格も一度確認してみましょう。
ファイナンシャルプランナー(FP)に相談できること・できないこと
ファイナンシャルプランナーには家計の見直しや資産運用の方法、住宅ローンの仕組みなどさまざまなお金の相談ができます。一方で、ファイナンシャルプランナーにはFP資格を所有するだけでは、対応できないことも存在します。よって、できること・できないことを把握した上で、相談サービスの利用を検討する必要があります。はじめに相談できる分野について見ていきみましょう。
ファイナンシャルプランナー(FP)に相談できること
家計・貯蓄に関する相談
家計改善 |
・家計の見直しの方法が知りたい
・貯蓄の方法を知りたい
|
資産運用・保険に関する相談
資産運用 |
・NISA、iDeCoを活用した投資のやり方を知りたい
・金融商品の選び方を知りたい
|
保険 |
・将来設計にあわせ必要な保険を知りたい
・毎月支払う保険料を抑えたい
|
ライフイベントにかかる費用に関する相談
ライフプラン全体 |
・将来、何にいくらお金が必要なのか知りたい
|
教育資金 |
・子どもの教育資金にどう備えるべきか知りたい
・必要資金を準備する方法を知りたい
|
住宅購入費用 |
・無理のない住宅ローンを組みたい
・将来に備え借り換えを検討したい
|
老後の生活費 |
・老後の生活費がいくらかかるのか知りたい
・老後の生活費用を貯める方法を知りたい
|
社会制度に関する相談
税制・年金・社会制度 |
・年金がいつから・いくらもらえるのか知りたい
・各種控除の有効活用する方法を知りたい
|
相続・贈与 |
・相続税軽減方法など相続対策でできることを知りたい
|
このようにファイナンシャルプランナーは家計管理から、相続・贈与に関する相談まで、幅広く対応できます。一方、FP資格のみ所有するファイナンシャルプランナーでは、対応できないことはどういった業務でしょうか。事例でみていきましょう。
FP資格以外の資格や登録が必要な業務の一例
税務相談や税務書類の作成業務 |
個別の具体的な税務相談や、税務書類の作成などの業務には税理士資格が必要 |
法律相談及び法律事務 |
法律相談及び法律事務などの業務には弁護士資格が必要 |
保険の募集・勧誘・販売 |
保険の募集・勧誘・販売には保険募集人としての内閣総理大臣の登録が必要 |
金融商品の販売 |
有価証券などの金融商品の販売には金融商品取引業者あるいは金融商品仲介業者として内閣総理大臣の登録や証券外務員資格の登録が必要 |
このように税理士資格や弁護士資格など特定の資格が必要な分野や、保険や投資商品などの金融商品を取り扱う業務はFP資格のみでは対応できません。
「ライフイベントにあわせ保険を見直し乗り換えたい」場合や「将来の資産形成のため投資信託を始めたい」場合など、相談にあたって具体的なイメージを持っている場合には、その分野に対応できるファイナンシャルプランナーかどうかはしっかり確認した方がよいでしょう。