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執筆者平野 敦之(ひらの あつし)
CFP(R) 1級FP技能士 宅地建物取引士
住宅ローンアドバイザー
火災保険は、火災や台風など保険金の支払い対象になる事由が契約で決められています。
そのため、たとえば水害などの被害に遭った際、保険金が支払われるかどうかということだけに目が向きがちです。しかしあまり知られていませんが、火災保険で支払われる保険金には「損害保険金」と「費用保険金」の2種類があるのです。
火災保険の保険金というと建物などを再築・修理するための損害保険金をイメージする人がほとんどですが、損害を受けた場合に費用保険金にも重要な役割があるのです。
費用保険金とは?
火災保険では、事故や災害などで建物や家財などに損害が発生するとその修復だけでなく、そこから色々な費用がかかることがあります。費用保険金とは、そうした各種の費用をカバーする保険金のことをいいます。
たとえば火災で建物が全焼してしまった場合、火災保険から損害保険金が支払われることで建物を再築あるいは再購入することができます。しかし、実際には新たな建物を再築する以前に焼け残ったがれきなどを撤去しなければなりません。もちろんこの撤去にもお金がかかります。
このようなときに費用保険金の一つである残存物取片付づけ費用保険金によってかかる費用をまかなうことができます。一般的に費用保険金は損害保険金などの所定の割合(10〜30%)を契約で定めた金額(100万〜300万円程度)を限度に保険金として支払います。
以前は、もともと費用保険金が火災保険に自動セットされており、各社その内容もほぼ共通していましたが、現在では、各社さまざまな費用保険金をつけており、特約扱いとなっていることもあります。
損害保険金と費用保険金の違い
損害保険金と費用保険金の主な違いは以下のようになります。
損害保険金 | 火災や台風などの保険金の支払い対象となる損害が原因で、建物や家財など保険の対象に直接発生した損害に対して支払われる保険金 |
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費用保険金 | 火災や台風などの保険金の支払い対象となる損害が原因で、主に間接的に発生する損害に対する各種費用を支払う保険金 |
事故や災害が起きると想定以上に色々とお金がかかります。火災保険の設計においてどのような保険金が、どのようなときに支払われるか確認することはとても重要なことです。
費用保険金の種類
費用保険金にはいくつか種類があるので、主なものを確認してみましょう。
臨時費用保険金 | 損害によって臨時に発生する各種費用をカバーする保険金でさまざまな用途に利用することができる |
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残存物取片付づけ 費用保険金 |
建物などの残存物の撤去などにかかる費用を支払う保険金 |
地震火災費用 保険金 |
地震・噴火これらによる津波を原因とする火災で、建物が半焼以上の損害を受けたとき臨時に生ずる費用に対して支払われる。近年この保険金の支払い割合の上限を50%まで引き上げて、地震などによる火災の損害を地震保険と合せて100%にしている商品もある |
失火見舞費用 保険金 |
建物から発生した火災、破裂・爆発により、第三者の所有物に損害を与えた際の見舞金などの費用を支払う |
このほかにもさまざまな費用保険金があるので契約の際に内容をチェックするようにしましょう。
費用保険金をセットするか決める
費用保険金には、自動でセットされているものと自分で選択してセットするものがあります。商品によっては費用保険金が支払われる割合や限度額を選べるケースもあります。
補償を増やしていけば保険料が高くなっていくのはほかの保険と変わりません。事故や災害などで被害に遭った際、ストレスをなるべく少なくすることが大切です。費用保険金をセットの有無、またその補償内容や支払われる金額についてパンフレットや見積書などでしっかり確認することを心掛けてください。
火災保険の費用保険金とは?
2020年9月掲載