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社会保障制度を学ぶ
日本の医療保険制度は、すべての国民が何らかの公的医療保険に加入する「国民皆保険制度」です。公的医療保険の種類は次のとおりです。
種類 | 加入対象者 | 運営者 |
---|---|---|
健康保険 | 企業の従業員で一定の労働時間があり、一定の雇用契約期間がある人とその人に扶養されている家族 | 全国健康保険協会 各種健康保険組合 |
共済組合 | 国家・地方公務員や私学教職員とその人に扶養されている家族 | 各種共済組合 |
船員保険 | 船舶の船員とその人に扶養されている家族 | 全国健康保険協会 |
国民健康保険 | 自営業者や退職者、無職者とその人の家族 | 都道府県市町村 各種国民健康保険組合 |
後期高齢者医療制度 | 75歳以上の人および65〜74歳で一定の障害の状態にある人 | 後期高齢者医療広域連合 |
日本の国民は、このいずれかの公的医療保険に加入しています。
国民健康保険の対象者は、自営業者、農業者、会社を退職した人、無職者などです。言い換えると、健康保険、共済組合、船員保険、後期高齢医療制度の対象者ではないすべての人が対象となります。国民健康保険は、原則として都道府県が主体となり市町村とともに運営を行っていますが、そのほかの保険者に国民健康保険組合があります。
国民健康保険組合とは、国民健康保険の1つで、特定の業種や職種に従事する人が加入でき、医師、薬剤師、弁護士、税理士、建設、食品販売、青果市場などで働く人などが該当します。
国民健康保険の対象者は、次のような場合、14日以内に市区町村の窓口に届出が必要です。国民健康保険組合の対象者は、組合の窓口に届け出ます。
<14日以内に届出が必要なケース>
国民健康保険に加入するとき
・ほかの市区町村から転入したとき
・日本人が帰国したとき
・会社の健康保険をやめたとき、扶養から外れたとき
・国民健康保険の加入者に子どもが生まれたとき
・生活保護を受けなくなったとき
・外国人が加入するとき
国民健康保険を脱退するとき
・ほかの市区町村へ転出するとき
・会社の健康保険にはいるとき、扶養になるとき
・国民健康保険の加入者が死亡したとき
・生活保護を受けるようになったとき
・出国するとき
そのほか
・同じ市区町村で住所が変わったとき
・氏名や世帯主が変わったとき
・修学のためほかの市区町村に移るとき
・修学を終了したとき
・保険証を紛失したり汚したりして使えなくなったとき
保険給付の対象となるのは届出日以降となるため、国民健康保険に入る届出が遅れると、さかのぼって保険給付を受けることはできません。加入資格が発生した日から届出日までの医療費は、全額自己負担(10割負担)となります。なお、国民健康保険の保険料は、加入資格が発生した日までさかのぼって納めなくてはいけません。
国民健康保険を脱退する届出が遅れたときは、国民健康保険に加入した状態が続くので、引き続き保険料を請求されます。また、国民健康保険の加入資格がないにもかかわらず、その保険証を使って医療機関で受診してしまうと、国民健康保険から保険給付された分の医療費を返還しなくてはいけません。
国民健康保険料の計算方法や保険料率は、市区町村や国民健康保険組合によって異なりますが、
基本的に、国民健康保険料は、医療分・後期高齢者支援金分・介護分(40歳以上65歳未満の介護保険第2号被保険者のみ対象)を合算して算出します。そして、それぞれの項目の保険料は、所得に応じて計算する所得割と被保険者の人数で計算する均等割で構成されています。世帯ごとにかかる平等割や保有資産にかかる資産割が加算されるところもあります。
つまり、国民健康保険には扶養という概念がなく、保険料は被保険者の前年(1月〜12月)の所得と被保険者の人数などを基礎にして、世帯単位で計算します。
今回は、東京都港区を例に保険料の計算方法を解説します。
所得割 | 均等割 | |
医療分 最高限度額65万円 |
被保険者全員の賦課基準額×7.16% | 被保険者数×42,100円 |
後期高齢者支援金分 最高限度額20万円 |
被保険者全員の賦課基準額×2.28% | 被保険者数×13,200円 |
介護分 最高限度額17万円 |
介護保険第2号被保険者全員の賦課基準額×2.02% | 介護保険第2号被保険者数×16,600円 |
所得割 | 均等割 | 合計 | |
---|---|---|---|
医療分 | 賦課基準額159万円×7.16%=113,800円(100円未満切捨) | 被保険者数1人×42,100円=42,100円 | 155,900円 |
後期高齢者支援金分 | 賦課基準額159万円×2.28%=36,200円(100円未満切捨) | 被保険者数1人×13,200円=13,200円 | 49,400円 |
介護分 | 0円(介護保険加入対象外) | 0円(左に同じ) | 0円 |
医療分+後期高齢者支援金分(+介護分)の合計 | 205,300円 |
東京都港区、30歳男性、世帯1人、前年の年収300万円の計算例
上記より、国民健康保険の年間保険料は205,300円となります。今回の計算例は、被保険者が40歳未満のため介護分は発生しませんでしたが、40歳以上65歳未満の場合は、介護分も加算されます(前年の年収が計算例と同じく300万円なら、所得割32,100円と均等割16,600円の合計48,700円)。
国民健康保険では、4月1日に国民健康保険の資格があり、保険料の決定日となる6月1日時点で引き続き国民健康保険に加入している世帯は、4月から翌年3月までの1年間の保険料を支払います。納付方法は市区町村によって異なります。6月に年間保険料を一括して納める方法や月ごとに10回払いで納める方法などがあります。
就職や退職により、加入する公的医療保険が変わる人は、住んでいる市区町村の役所で国民健康保険の加入・脱退の手続きをする必要があります。年度の途中で国民健康保険に加入する場合、保険料の納付義務は加入した月から発生します。また、年度の途中で脱退する場合は、脱退する月の前月までの保険料を支払います。国民健康保険料は月単位で計算されるため、加入・脱退の際の保険料の計算は月割になります。
国民健康保険には、保険事故(病気、ケガ、出産、死亡など)が発生した場合、どこの市区町村や国民健康保険組合に加入していても、法律により給付しなければいけないと規定されている「法定給付」と、市区町村の条例や国民健康保険組合の規約により給付できる「任意給付」があります。
さらに、法定給付は、保険者が必ず実施しなければいけない「絶対的必要給付」と、特別な理由があるときには実施しなくてもよい「相対的必要給付」に分けられます。相対的必要給付は、ほとんどの市区町村と国民健康保険組合で実施されています。任意給付については、ほとんどの市区町村で例がありませんが、一部の国民健康保険組合では実施されています。
国民健康保険の保険給付は次のとおりです。医療機関等で病気やケガの診療を受けた場合、一部負担金を支払うことで治療が受けられる「療養の給付」はなじみがあるでしょう。そのほか、さまざまな給付があります。
法定給付 | 絶対的必要給付 | 療養の給付 入院時食事療養費の支給 入院時生活療養費の支給 保険外併用療養費の支給 療養費の支給 訪問看護療養費の支給 特別療養費の支給 移送費の支給 高額療養費の支給 高額介護合算療養費の支給 |
相対的必要給付 | 出産育児一時金の支給 葬祭費の支給または葬祭の給付 |
|
任意給付 | 傷病手当金の支給 その他の給付 |
医療機関で被保険者証を忘れた場合は全額負担となり、後日請求すると「療養費」が支給されます。
共働きが増え、働き方が多様化している近年においては、1つの世帯で異なる公的医療保険に加入するケースは珍しくないでしょう。夫婦のどちらかが国民健康保険に加入していて、もう一方が会社の健康保険に加入している場合、国民健康保険料はどのように計算するのでしょうか。
国民健康保険料は、前述の計算方法のとおり世帯単位で、被保険者の前年の所得金額と被保険者の人数や年齢などで計算します。そのため、このケースでは、国民健康保険の被保険者数は1人になり、その被保険者の年齢と前年の所得金額で保険料は決まります。会社の健康保険に加入している配偶者は人数には含めませんし、所得金額も保険料の算定には含めません。
ただし、国民健康保険には、前年の所得金額が一定の基準を下回る世帯については保険料が減額される制度がありますが、この軽減判定をする際は、夫婦2人の所得を合算するため、減額にならない場合があります。
国民健康保険料の計算は世帯ごと
国民健康保険では、就職や転職をするときにも注意が必要です。国民健康保険から別の公的医療保険に加入するときは、自分で脱退手続きをしなくてはいけません。手続きを怠ったり忘れたりすると、新たに加入した公的医療保険と重複して加入していることになるので、国民健康保険料を納め過ぎていることになります。納め過ぎた国民健康保険料は、住んでいる市区町村の役所に申し出ると還付されます。通常、役所から郵送される還付通知書(各市区町村によって名称は異なる)に、振込先口座と必要事項を記入し返送すると還付されます。ただし、通知書が届いてから2年を過ぎると時効となり還付されない場合もあるため、速やかに返送しましょう。