更新日:2024年9月10日
猫のてんかんとは、どのような傷病なのでしょうか?
症状や原因、治療法について見てみましょう。
この記事の監修者
獣医師
三宅 亜希
TRIPECT lab.代表、東京都獣医師会広報委員
TRIPECT lab.代表、東京都獣医師会広報委員
てんかんは、脳に起こる障害ですが、脳の構造そのものは正常で、機能にだけ異常が起こる病気です。「突然脳に嵐が起こる」と表現されることもあります。
てんかんは、犬に比べると猫ではあまり起きません。
てんかん発作は、体の一部分だけ痙攣を起こす部分的な発作から、全身を痙攣させるような大きな発作までさまざまで、起こる間隔もまちまちです。
てんかん発作を初めて見た飼い主さんは、その様子に驚き、「このまま猫が亡くなってしまうのでは?」と心配してしまうでしょう。
通常、てんかん発作はすぐに治まり、猫は何事もなかったかのように普段どおりにふるまいます。
しかし、発作が通常よりも長く続いたり、発作が治まる前にまた次の発作が始まったりした場合は、「てんかん重積」と呼ばれる重度の症状となります。
このような場合は、すぐに病院に行くようにしましょう。
てんかんが起こる原因の詳細は不明な点も多いです。発作を起こす病気はたくさんあるため、血液検査や画像診断などをもちいて、ほかの発作を起こす病気(脳腫瘍、代謝性疾患、中毒など)と見分けます。
体が硬直する、四肢をバタバタさせる、などの大きな発作がみられます。また、あくびを繰り返すなどの小さな発作、発作を起こしているときに、排尿や排便をする、大きな声で鳴く、などといった症状がみられることもあります。
発作を起こしているときは、心配して体を触ったり、呼びかけたりしてしまいますが、余計な刺激を与えることで、さらに症状が悪化してしまうことがあるのでやめましょう。まわりに物がある場合は、ぶつかってケガをすることもあるので、静かにどかして見守るようにしましょう。また、発作があった日、始まった時間と終わった時間、などをメモしたり、動画に撮っておいたりすると、受診の際に役立ちます。
脳の構造に異常はないものの、機能に異常があることによりてんかん発作が起こりますが詳しい原因はわかっていません。
また、脳の病気、感染症、外傷、などが原因で脳の機能に障害が起こる「症候性てんかん」と呼ばれるものもあります。
かかりやすい猫種はとくになく、どの猫種でもかかる可能性があります。
投薬
てんかん発作を抑える薬を内服します。「発作の回数を少なくする」ことが治療の目的となります。通常、発作頻度が月に1回以上のペースでない場合は、治療開始とはなりません。
また、「発作を完全になくす」ことはできません。発作が起こるのが、3カ月に1回程度まで抑えることが治療の最終目的ですが、その状態になるまで数年かかることもあります。薬を飲みながら定期的に血液検査を行い、発作の回数と血液中の薬の濃度をみながら投薬量を決めます。基本的に薬は一生涯必要になります。症状がよくなったと思って投薬を途中でやめてしまうと、症状が悪化してしまう恐れがあります。獣医師に相談なく薬を与えることをやめないようにしましょう。
1日に何度も発作を起こしたり、発作が落ち着く前に次の発作が始まったりする「てんかん重積」の場合は、脳にダメージを受けて、死に至る可能性もあるため、入院して治療を受けることが必要になります。
内服で発作をコントロールできれば寿命まで元気に過ごすこともできます。
てんかんにかかってしまった場合、どのくらいの治療費がかかるのでしょうか?
保険会社の保険金請求データをもとにした治療費の例を見てみましょう。
猫種:ミヌエット(3歳)
内容:通院1日
| 診療明細例 | |
|---|---|
| 診療項目(内容) | 金額(円) |
| 診察 | 700円 |
| 内服薬 | 4,500円 |
| 処方 | 500円 |
| 合計 | 5,700円 |
残念ながら、てんかんにならないための有効な予防法はありません。
定期的に健康診断を受けて、「症候性てんかん」を引き起こす病気の予防をすること、早期発見して治療を行うことが大切といえるでしょう。