更新日:2024年9月10日
猫の真菌による感染症とは、どのような傷病なのでしょうか?
症状や原因、治療法について見てみましょう。

この記事の監修者

獣医師
三宅 亜希
TRIPECT lab.代表、東京都獣医師会広報委員
TRIPECT lab.代表、東京都獣医師会広報委員
真菌(カビ)による感染症は、外部からの感染、または常に存在する菌がなんらかの原因で増殖して発症する傷病です。
感染場所も、皮膚に局所的に感染するものから、全身感染を起こすものまでさまざまです。
ここでは、猫での感染が比較的よくみられる真菌感染症についてみていきましょう。
クリプトコックス症
環境中に存在する真菌で、主に鳥のふんなどに存在します。
人にも感染しますが、感染したペットを介して人に感染する可能性は低いと考えられています。
真菌を吸い込むことで、猫では鼻、鼻腔、眼球などに感染が起こります。
脳に感染した場合は、神経症状がみられ、その後の経過はあまりよくないことが多いです。
カンジダ症
口、鼻、耳、消化管、生殖器官など、猫の粘膜にいる常に存在している菌です。
免疫が低下していたり、組織が損傷を受けたりした場合に発病します。
ヒストプラズマ症
日本国内での猫での感染報告数は多くありませんが、強い病原性を持った真菌で、鳥のふんや有機物が多い土壌中に存在します。
人にも感染しますが、ペットから人への感染は報告されていません。猫では、呼吸器疾患がみられることが多いですが、呼吸器だけではなく、多臓器感染を起こすおそれもあり、骨、骨髄、肝臓、脾臓、皮膚、リンパ節への感染がみられることも多いです。食欲不振、呼吸困難、跛行、発熱などの症状が起こりやすいですが、急性死亡の例もあります。
皮膚糸状菌症
皮膚に感染を起こす病気で、脱毛、フケなどが起こります。
猫から人に感染することもあり、免疫力の弱い子猫や高齢猫、長毛種(ペルシャ猫など)で多くみられます。
クリプトコックス症
真菌を吸い込むことで感染するため、鼻などの呼吸器の症状がみられることが多く、くしゃみ、鼻水、鼻が大きく腫れる、などの症状がみられます。
中枢神経系に感染すると、体がうまく動かせない、麻痺、などの症状がみられます。目に感染が及ぶと、瞳孔がひらく、などの症状がみられ、最悪の場合、失明することもあります。
カンジダ症
耳に感染すると強いかゆみが出るため、耳をかいたり、床にこすりつけたりします。かゆみがひどい場合、耳をかきむしって出血することもあります。
泌尿器に感染するとぼうこう炎になり、何度もトイレに行くため、排尿姿勢をとってから尿が出るまでに時間がかかる、ほとんど排尿しない、などの症状がみられます。また、口腔内に感染した場合は、よだれを流すようになり、角膜に感染した場合は、角膜炎が起こります。
ヒストプラズマ症
食欲不振、呼吸困難、うまく歩けない、発熱、などの症状がみられます。
皮膚糸状菌症
顔、耳、四肢など、感染部位に円形の脱毛が起こり、その周りにフケがみられます。
クリプトコックス症
空気中にあるクリプトコックス属の菌を吸い込んだり、傷口についたりすることで感染します。
カンジダ症
粘膜や皮膚に存在しているカンジダ属の菌が、損傷した組織から体内に入り込むなどして感染します。
ヒストプラズマ症
ヒストプラズマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)を吸い込むことで感染します。
経口感染が起こるおそれもあります。
皮膚糸状菌症
皮膚糸状菌との接触感染で、通常は感染動物の被毛から感染します。
また、汚染された環境中のほこりや感染動物に使用したブラシなどから感染することもあります。
皮膚糸状菌症は、子猫や高齢猫、長毛種(ペルシャ猫など)でかかりやすいことがわかっています。
クリプトコックス症やカンジダ症では、ほかの病気の治療で免疫を抑えるような薬を使用していたり、猫白血病ウイルスや猫免疫不全ウイルスを発症して免疫が低下していたりすると、感染リスクが高くなります。
投薬
基本的には、原因となっている真菌に対して効果のある内服薬で治療します。
どの真菌症の場合でも、投薬期間が数カ月ほど必要なこともあり、治療には時間がかかります。
皮膚糸状菌に関しては、局所的な外用薬の使用、毛刈り、シャンプーなどで治療をすることも多いです。
真菌による感染症にかかってしまった場合、どのくらいの治療費がかかるのでしょうか? 保険会社の保険金請求データをもとにした治療費の例を見てみましょう。
猫種:ラグドール(6カ月)
内容:通院1日(皮膚糸状菌症)
| 診療明細例 | |
|---|---|
| 診療項目(内容) | 金額(円) |
| 診察 | 700円 |
| 皮膚検査 | 1,000円 |
| 外用薬(抗真菌薬) | 2,000円 |
| 合計 | 3,700円 |
完全室内飼育
鳥のふんなどで汚染された土壌に近づかない、ほかの猫と接触しないようにする、などのために完全室内飼育にしましょう。
部屋を清潔にする
抜け毛を掃除したり、猫のベッドなどの洗濯をしたり、日にあてたりするなどして、部屋の中を清潔を保つようにすることで真菌の増殖を防ぎましょう。