更新日:2023年12月18日
猫が肢を引きずる原因にはどのようなものがあるのでしょうか?
また、肢を引きずる原因として考えられる病気や対処法について見てみましょう。
この記事の監修者
獣医師
三宅 亜希
TRIPECT lab.代表、東京都獣医師会広報委員
TRIPECT lab.代表、東京都獣医師会広報委員
猫が肢を引きずるしぐさがみられたら多くの飼い主さんが異常があると感じてすぐに受診すると思います。つま先を少し擦るように歩くなど、異常があるかどうかわかりにくいこともありますが、猫が肢を引きずっている場合、原因はケガだけでなく、重大な病気などのおそれもあるため、早めに受診し検査するようにしましょう。
猫が肢を引きずる原因は、ケガや病気によるものがほとんどです。まれに、叱られて驚いたときや、過去に肢を痛めた際に、飼い主さんが心配してくれた、おいしいおやつをくれた、などの経験をしている猫が痛みがないのに肢を引きずることもあるようですが、あまり一般的ではありません。
以下の病気などにより、肢を引きずることがあります。
軽度の痛み(捻挫など)
関節や筋肉が軽度に痛む場合、肢を引きずることがあります。軽度の症状でも、繰り返してしまうと関節を損傷してしまうので注意が必要です。強い痛みやするどい痛みの場合は、引きずるのではなく、地面と接触しないように肢をあげることが多いです。このような症状がみられた場合は、受診して適切な処置を受けるようにしましょう。
脊髄疾患
外傷、脊髄炎、椎間板ヘルニアなどにより、脊髄に障害が起こった際、神経の伝達が正常に行われず、肢にマヒが起こって引きずるようになります。肢の感覚を失ってしまうこともあるため、早急に受診するようにしましょう。
脳炎
脳の炎症で、感染によるものや免疫介在性のものなどがあります。
動脈血栓症
血栓によって血流が流れなくなり、筋障害や神経障害が起こります。とくに肥大型心筋症を患っていると血栓ができやすくなります。肥大型心筋症でできた血栓は、後ろ肢に血液を流す部分に詰まることが多いため、後ろ肢が突然マヒを起こします。この場合、マヒを起こした肢先は血の気がなくなり冷たくなってしまいます。
腫瘍
神経や脳に腫瘍ができることにより、神経異常が生じて歩行異常がみられることがあります。
重症筋無力症
神経と筋肉が接合している場所で、正常に神経伝達物質が伝わらないことで起こる疾患で、筋肉の虚弱が起こります。
早急な受診
基本的に神経疾患によってマヒを起こしているときに、肢を引きずる症状が多くみられます。突然のマヒがみられることもありますが、病気によっては肢を引きずる症状を起こす前に、運動を嫌がるようになったり、ソファに飛び乗らなくなったり、段差を登らなくなったりなど、普段と違う様子がみられることもあるので、年のせいかな、と思うような場合でも、早めに受診をしておくように心掛けましょう。また、肥大型心筋症を患っていて、後ろ肢のマヒがみられる場合は、動脈血栓症のおそれがあるため、早急に治療する必要があります。
跛行(※)の症状は、外傷、神経疾患、関節疾患、筋疾患、骨・関節疾患など、さまざま原因が考えられます。異変を感じたら、早めに病院に行き、原因を特定して適切な治療を受けるようにしましょう。
完全室内飼育
外に出た猫が帰宅後、肢を引きずるようなときは、事故などによる外傷も考えられます。外傷を負うリスクを軽減するために完全室内飼育に切り替えるのもひとつの方法です。