更新日:2024年11月20日
猫の膀胱炎とは、どのような傷病なのでしょうか?
症状や原因、治療法について見てみましょう。
この記事の監修者
獣医師
三宅 亜希
TRIPECT lab.代表、東京都獣医師会広報委員
TRIPECT lab.代表、東京都獣医師会広報委員
膀胱炎とは、膀胱の粘膜に炎症が起きる病気です。細菌感染や、膀胱結石(結晶)などが原因となりますが、猫では原因不明のことも多いです。細菌感染による膀胱炎は、通常、原因の菌に対して効果のある薬を使用することで治ります。しかし、くり返し膀胱炎になったり、治るまでに長期間かかったり、といった難治性のものもあります。
膀胱炎になると、残尿感からくり返しトイレに行くようになる、落ち着きがなくなる、といった症状だけではなく、痛みが生じる、膀胱粘膜から出血が起こる、血尿が出る、などの症状がみられることもあります。
猫の下部尿路疾患
猫では、「下部尿路疾患」という言葉がよく使われます。これは、膀胱炎や尿道炎を起こしているときの症状(頻尿、血尿、粗相など)がみられる病気の総称です。下部尿路疾患で原因が特定できるものは犬よりも少なく、原因不明の膀胱炎とされるものが多くあります。
軽度の場合、頻尿などの症状が目立ちます。何度もトイレに行くため、排尿姿勢をとってから尿が出るまでに時間がかかる、ほとんど排尿しない、といった症状がみられます。また、排尿時に痛みがあって鳴く、血尿が出る、といった症状がでることもあります。
通常、腎臓から尿管を通って膀胱へ尿がたまり、膀胱から尿道を通って排せつされます。しかし、尿路結石が原因で膀胱炎になっている場合は、結石が尿管や尿道などにつまって尿が出なくなってしまう尿路閉塞を起こすこともあります。完全な尿路閉塞が生じると、急性腎不全を起こし、症状が急激に悪化するため救急管理が必要となります。尿路閉塞は、尿道が細いオスでリスクが高くなります。
細菌感染
多くは細菌感染であり、ウイルスや真菌(カビ)などによって発症することは、あまり多くはありません。通常、外部から雑菌が尿道へ侵入・増殖しないための防御機能が働いていますが、なんらかの原因で防げなかったときに起こります。メスは肛門と尿道口が近く、下痢などで腸の菌が侵入しやすいことがわかっています。疲労やストレスなどで防御機能が衰えて菌が侵入することもあります。
結晶・結石
泌尿器にできた結晶や結石が膀胱粘膜を傷つけてしまい膀胱炎を起こします。体質、遺伝的素因、食事内容などが関与していると考えられます。
その他
原因が特定できない膀胱炎も多くみられます。
また、膀胱腫瘍や外傷などから膀胱炎が起こることもあります。
かかりやすい猫種はとくになく、すべての猫種でかかる可能性があります。
皮下補液・点滴
水分をたくさん取らせて排尿をうながし、膀胱内をきれいにすることが大切です。
猫にたくさんの水を取らせることは難しいため、皮下補液(水分や電解質などを皮下に投与)を行うことで排尿をうながします。
急性腎不全を起こしているような場合は、点滴を行いながらの入院治療をなります。
閉塞解除
尿道が詰まっている場合は、尿道口からカテーテルを挿入し、尿道に詰まっているものを流しだす処置が第一優先となります。
投薬
細菌感染による膀胱炎の場合は、原因となる細菌に対して効果のある薬を使用します。
療法食
結石や結晶による膀胱炎の場合は、療法食などで対応します。
外科治療
療法食で改善がみられない、対応できない結石の場合は、外科的に摘出しなくてはならないこともあります。
膀胱炎にかかってしまった場合、どのくらいの治療費がかかるのでしょうか?保険会社の保険金請求データをもとにした治療費の例を見てみましょう。
猫種:メインクーン(5歳)
内容:通院1日
| 診療明細例 | |
|---|---|
| 診療項目(内容) | 金額(円) |
| 診察 | 1,500円 |
| 検査 | 4,000円 |
| お薬 | 3,000円 |
| 合計 | 8,500円 |
定期的な検査
定期的に尿検査を行い、結晶ができていないかなどを確認するようにしましょう。
結晶ができている場合は、獣医師の指示に従って対応することが重要です。
トイレの環境を整える
トイレを常に清潔にし、落ち着いた場所に設置するようにします。多頭飼育の場合は猫の数+1のトイレ数を設置しましょう。
排せつ器官を清潔に保つ
メスの場合、下痢などで陰部が汚れるようなときは拭き取るなどして、清潔に保ってあげましょう。
食事に気をつける/肥満を防ぐ
体質的に結晶ができやすい場合は、日頃の食事を見直し、獣医師の指示に従って療法食を検討することも1つの方法です。また、肥満が原因で、水を飲むことや排尿が面倒になって、ギリギリまで我慢することで膀胱炎になることがあるので、肥満にならないように体型を維持することが大切です。
頻尿や血尿、粗相など膀胱炎を疑わせる症状の有無や、症状が始まった時期を確認します。また、尿検査を行い、血漿成分、細菌、タンパク、尿比重、pHなどを調べます。最終的な診断のために細菌培養検査(※)を行うこともあります。
尿検査のための採尿方法としては、自然に排尿した尿、尿道カテーテルを用いた採尿、膀胱穿刺による採尿などがあります。採尿時に細菌が混入すると検査結果に影響を及ぼすため、できるだけ膀胱穿刺による採尿が望ましいです。
また、全身の状態を確認するために血液検査を行うこともあります。
そのほか、レントゲン検査や超音波検査で腎臓の状態や、結石の有無を確認します。超音波検査では膀胱の粘膜の状態も確認できます。
※尿中の細菌が増殖しやすい環境下で尿を保管し、細菌の種類を特定します。この検査にとって、原因菌に対して効果的な抗生剤を選択できます。