「価格.com保険」は、株式会社 カカクコム・インシュアランスが保険契約締結の代理・媒介を行います。
保険 関連特集・記事
祖父母から孫へ、教育資金を贈与する動きが広がっています。あと押しをしているのは、「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税」の存在。2015年以降の相続税の増税を受け、その節税対策として、生前贈与が関心を集めています。
2024年6月11日更新
孫1人あたり1500万円までの教育資金を非課税で一括贈与できる制度がある
教育資金の一括贈与の非課税制度は、金融機関で手続きが必要
教育資金の一括贈与以外にも暦年贈与がある
暦年贈与で学資保険を活用する場合、契約者をだれにするかで贈与税額が変わる
以下、記事の詳細
祖父母が30歳未満の子供や孫へ、将来の教育資金を目的に一括して贈与しても、子供や孫1人あたり1500万円までは贈与税がかからない制度があります。それが2026年3月末まで利用できる「教育資金の一括贈与の非課税制度」です。
相続税の支払いが想定される場合に、税金を生ずることなく相続財産を減らせることから、相続対策として利用されています。
この制度は、祖父母からにかぎらず直系尊属(曽祖父母、祖父母、父母、養父母)からの贈与が対象になります。したがって30歳未満のひ孫、孫、子供がその直系尊属である曽祖父母、祖父母、父母、養父母から教育資金として贈与された場合に成り立ちます。
それでは、制度を利用するために必要な手続きを見ていきましょう。贈与される人は孫と仮定します。
まずは金融機関で、贈与相手である孫名義の教育資金口座を開設および契約を締結し、孫はその金融機関経由で、教育資金非課税申告書を税務署に提出します。
その後、学費などが必要になり、教育資金口座から引き出すときにも手続きが必要になります。
孫は金融機関に入学金や授業料の領収書などを提出することで、初めてお金を引き出すことができます。
教育資金の一括贈与のイメージ例
この制度を使わずに、祖父が孫1人に1500万円を一括で贈与した場合、贈与税額はいくらになるか見てみましょう。
贈与税額は、贈与を受けた年の1月1日時点で孫が18歳未満の場合と18歳以上の場合で異なり、それぞれ450.5万円、366万円になります。
1月1日時点の年齢 | 贈与税の金額 |
---|---|
18歳未満 | 450万5000円 |
18歳以上 | 366万円 |
本来、孫1人への贈与でこれだけの税金が生じるところを非課税にできるので、使い方によっては、相続税対策として相続財産を大きく減らすことができます。
そのほか、贈与税が1人1500万円まで非課税であるこの制度には、次のようなメリットもあります。
教育資金の範囲は定められており、一括贈与を受けた場合は使い道がかぎられています。
非課税になる教育資金は、大きく2つに分けられます。いずれも、目的外に使うと課税対象になるので注意が必要です。
教育資金として「学校等に対して直接支払うお金」は、1500万円まで非課税になります。
学校等にお金を支払ったことが領収書などで確認できるものだけが対象です。学校等で必要な費用でも、個人が直接業者などに支払った場合は、一定の条件のもと500万円までが非課税の対象になる場合があります。
「学校等」とは、幼稚園・小学校・中学校・高等学校・大学(院)・専修学校および各種学校、一定の外国の教育施設、認定こども園または保育所などをいいます
認められている目的は次のとおりです。
教育資金として「学校等以外に支払われるお金」は、1500万円の非課税枠のうち、500万円までを非課税にできます。
このお金は、「学校等以外の人に直接支払われるお金」と「それ以外(業者等)に支払われるもの」の2つに分けられます。
まず、「学校等以外の人に直接支払われるお金」として認められている目的は次のとおりです。
社会通念上相当ではないものとしては、酒類やタバコを楽しむ講習やマージャン・カラオケなどの遊技を内容とするもの、娯楽目的の鑑賞などがあげられます
「それ以外(業者等)に支払われるお金」として認められている目的は次のとおりです。業者からの領収書などだけでなく、学校等からの書面などの必要書類を金融機関に提出しなければなりません。
メリットのある制度といえますが、上記のように非課税になる使い方がかぎられています。ほかにも注意点があるので確認しましょう。
とくに、教育資金の使い残しがあると贈与税がかかりますが、一括贈与をしなかった場合の相続税より高くなる可能性もあるので、贈与額は慎重に決めるとよいでしょう。
ところで、そもそも贈与税は、贈与を受けた人1人あたり1年につき110万円までは非課税です。これは暦年贈与といわれる、贈与税の課税方式の1つです。
暦年贈与による贈与税額は、1月1日から12月31日までの1年間に贈与された財産の合計から110万円の基礎控除額を差し引き、税率を掛けて求めます。
まず、毎年同じ時期に同じ額を贈与すると、暦年贈与ではなく、「定期金給付契約に基づく権利の贈与」を受けたものとして契約や約束をした年に合計額の贈与を受けたとみなされる可能性があります。
たとえば、10年にわたって100万円の贈与をすると合計1000万円になります。しかし、「はじめから1000万円の贈与契約があって10回に分けたのではないか?」と判断されると、1000万円に対する贈与税がかかってしまう、ということです。
それを防ぐためには、@贈与契約書を毎年作成することや、A贈与する時期や金額を毎年変えること、Bわざと非課税枠の110万円より多めに贈与して贈与税を払っておくことが考えられます。
また、贈与するときには、贈与する人の預金口座から贈与される人の預金口座に送金して記録を残すことも大切です。
そして、子供や孫名義の預金通帳をあずかり勝手にそこに積み立てていっても、暦年贈与したことにはならないので注意しましょう。
このケースで相続が発生すると、本人の財産として相続税の課税対象になります。贈与とは、贈与する人と受ける人が合意して行う契約だからです。
さらに、贈与してくれた人が死亡して財産を相続する場合には、相続開始前(死亡前)7年以内の贈与については相続財産に加算されます。
令和3年4月以降は、教育資金の一括贈与された管理残額について、贈与者の子以外の直系卑属(孫、ひ孫)に相続税が課される場合には、その管理残額に対応する相続税率が2割加算の対象とされることとなりました。
このような注意点があるとはいえ、暦年贈与のほうが、制約の多い教育資金一括贈与よりも活用の幅が広い面があります。
そこで、教育資金を準備する手段としてよく使われる学資保険の保険料に、暦年贈与を活用するとどうなるか見ていきましょう。
このケースでは、保険料負担者≠学資金の受取人のため、受け取る満期金は贈与税の課税対象になります。
暦年贈与は1年間に110万円まで非課税になるので、受け取る満期金をそれ以下に抑えるのがポイントです。
なお、契約の注意点としては、商品によって孫との同居を要件としていたり、契約者の年齢制限が設けられていたりで、加入できないことが考えられます。
また、契約者に万一のことがあったときに保険料の払い込みが免除されるような商品では、契約者の健康状態によって加入できないこともあります。
このケースでは、祖父母が子供に贈与する金額を1年間に110万円までに抑えるのがポイントです。つまり、学資保険の保険料を年間110万円以下で加入し、祖父母からもらったお金で保険料を払います。
ただし、祖父母は先ほど「暦年贈与の注意点」でしめした「定期金給付契約に基づく権利の贈与」にあたらないように贈与しなければなりません。
祝い金や満期金を受け取るとき、払い込んだ保険料相当額を超える場合は、その利益部分について所得税がかかる場合があります。
満期金など一時金で受け取る場合には、その利益は一時所得となりほかの一時所得とあわせて年間50万円以内であれば税金は生じません。50万円を超える場合には、超えた額の2分の1が課税対象になります。
また、大学1〜4年のあいだなど一定期間続けて受け取る場合には、その利益部分は雑所得として課税対象となります。(アルバイトなど給与所得者であれば年間20万円までは原則確定申告の必要はありません。)
このように、受け取る満期金などに対する税金も考慮して、いくらの学資保険に加入するか検討しましょう。
事例1・事例2における契約者・被保険者・受取人と税金の関係
なお、学資保険は子供が小さい頃に加入する前提の商品が多く、子供の年齢によっては加入できないことも想定されます。検討する場合には早めを心掛けましょう。(関連ページ:学資保険はいつから入る?)
このように使いやすい暦年贈与があるにもかからず、どのような人に教育資金の一括贈与が向いているのか、3つの判断基準を見ていきましょう。
暦年贈与を利用して生前贈与を進めていったとしても、贈与を受けた日から7年以内に贈与者が亡くなってしまった場合、その贈与財産は相続財産として加算され相続税の課税対象となります。重い病気をわずらってから相続対策を始める場合などは、教育資金の一括贈与の活用や併用が役立ちます。
相続税が見込まれる場合には、節税効果を目的に、たとえば子供に暦年贈与しつつ、孫には教育資金の一括贈与で使途を教育資金に限定して贈与することも考えられます。
一度贈与すると、そのあとお金が必要になったとしても取り戻すことはできません。
自分の将来の生活費だけでなく介護費用施設に入所する可能性などを考えても、やはり金融資産に余裕がある場合は、子供や孫といった家族のために教育資金の一括贈与の活用や併用が考えられます。
ただ、教育資金を贈与したいけれども、一括贈与が不安であれば、必要な都度教育費を支払う贈与方法もあります。
そもそも「夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの」に贈与税はかからないとされています。ここでいう教育費は、学費や教材費、文具費などを指し、非課税になるのは「必要な都度」これらに充てるためにあげる財産にかぎられます。
学費の入金をするときに子供や孫の口座にお金を振り込んでOKで、証明書などはいりません。ただし、すでに支払ったあとの学費などに対してはさかのぼれないので、贈与税がかかってしまいます。
また、贈与されたお金をほかのものに使ったり、預金したりした場合も贈与税がかかるので注意してください。
教育資金の一括贈与と都度贈与の違い
今回は、教育資金の一括贈与の非課税制度および暦年贈与についてお伝えしました。
いずれの贈与においても、相続税の節税だけでなく、家族とのよりよい関係性も意識したものにすると贈与する人も受ける人も満足度が高まります。
たとえば、長男の孫だけに贈与をしたい場合には、ほかの家族が不公平と感じないようなフォローも忘れずに行うとよいでしょう。
各制度の特徴を理解し、自分を含めた家族みんなの幸せが続く贈与を目指しましょう。
当記事で提供する情報はあくまでも個人による一般的な意見です。当情報の利用およびその情報に基づく判断は読者の皆様の責任によって行ってください。個別の商品・サービスの詳細はそれぞれの規約・約款等をご確認ください。