更新日:2023年5月31日
猫の便秘の原因にはどのようなものがあるのでしょうか?
また、便秘の原因として考えられる病気や対処法について見てみましょう。

この記事の監修者

獣医師
三宅 亜希
TRIPECT lab.代表、東京都獣医師会広報委員
TRIPECT lab.代表、東京都獣医師会広報委員
便は健康のバロメーターといわれることも多く、猫の便をチェックしている飼い主さんも多いと思います。食べるものを見直したり、運動させたりすることで改善する便秘もあれば、病気の症状として現れる便秘もあります。便の回数(便が出ない日数)、硬さ、おなかが張っているか、などに注意して観察するようにしましょう。
食べ物の影響/水分不足
繊維質を過剰に食べる、自分の毛や消化しない異物を飲み込む、水分不足、などによって便が硬くなり便秘になります。猫は水をたくさん飲む動物ではないので、水分不足になりがちです。積極的に水分が取れるように、ウエットフードを与えたり、スープを与えたりするのもいいでしょう。
運動不足
運動不足で消化器の動きが悪くなることで、便秘になることあります。
病気やケガで運動を控える必要があるという場合は除いて、十分に運動をさせるようにしましょう。
加齢
加齢によって筋力が低下し、排便時に力を入れることが困難になって便秘がちになることがあります。
高齢になると便秘になることが多いので、適度な運動、水分の補給をして便秘にならないように注意しましょう。
生活環境の問題
トイレが汚れている、トイレの場所が落ち着かない、といった場合、排便を我慢して便秘になることもあります。
トイレは人の出入りが激しい場所は避け、常に清潔に保つようにしましょう。
内服薬の影響
まれに、病気の治療で飲んでいる薬の影響で便秘が起こることがあります。
処方された薬を飲んでから排便がしづらいなどの様子がみられたときは、かかりつけの医師に相談してください。
以下の病気などにより、便秘が生じることがあります。
肛門に痛みを生じる疾患
肛門付近には、左右に肛門嚢という分泌器官があり、そこに蓄えられた分泌液は排便のときなどに排出されます。しかし、なんらかの理由で肛門嚢から分泌液が排出されにくくなる、細菌感染、などで肛門嚢が炎症を起こします。炎症による痛みの影響で、排便を嫌がり便秘になってしまうことがあります。
また、肛門周囲瘻といって肛門周囲に細長い穴が開いていく病気などがあります。この病気の場合も排便が困難な状態になり、便秘になってしまうことがあります。
直腸に痛みを生じる疾患
直腸内の異物、直腸脱、直腸の炎症などがあります。
排便が困難な状態になり、便秘になってしまうことがあります。
異物誤飲
飲み込んだ異物が原因で便秘が生じることがあります。
毛球症
毛づくろいで飲み込んだ毛が原因で便秘が生じることがあります。
骨折
交通事故などによる骨盤や四肢の骨折で便秘になってしまうことがあります。
腫瘍
直腸内の腫瘍やポリープ、直腸近辺の臓器の腫瘍、リンパ節の腫脹などが起こることで、便が通りにくくなり便秘になってしまうことがあります。
脊髄疾患
脊髄の炎症や損傷などにより、神経伝達に異常が生じ、排便機能が正常に働かなくなることがあります。
巨大結腸症
結腸が広がったままの状態になり、結腸の働きが弱くなってしまうことで、排便が困難になります。
早急な受診
便自体も消化管の動きも正常なのに、排便時に痛みがあるため我慢をしてしまい便秘になる、というケースがあります。これは、肛門疾患や、直腸の炎症、骨盤や四肢の骨折などが原因となります。これらが原因で便秘が起こっている場合は、痛みの原因を治療により取り除けば、便秘も改善されます。
便の通り道が狭くなり便秘になるケースもあれば、腸が伸びきった状態になり排便困難なることもあります。また、神経の問題で排便障害が起き、便秘になるケースとしては、脊髄疾患、椎間板疾患などがあります。
どの病気も経過をみて治るものではありません。排便しづらい様子がみられたり、便が細くなったり平たくなったりする場合は、早い段階で受診をするようにしましょう。