更新日:2024年9月10日
猫の貧血とは、どのような傷病なのでしょうか?
症状や原因、治療法について見てみましょう。
この記事の監修者
獣医師
三宅 亜希
TRIPECT lab.代表、東京都獣医師会広報委員
TRIPECT lab.代表、東京都獣医師会広報委員
貧血とは、血液中のヘモグロビン濃度が薄まった状態をいいます。
ヘモグロビンは赤血球の中に存在します。そのため、赤血球の数が少なくなったり、赤血球は十分にあるが、1つひとつの赤血球の中にあるヘモグロビンが少なくなったりすると、貧血になります。
ヘモグロビンは、脳、内臓、筋肉、など体内のすべての組織が活動するために必要な酸素を運搬する能力を担っています。血液の中に存在している赤血球が、さまざまな組織に酸素を送ってくれることで、体の隅々まで酸素が行きわたり生きていけます。貧血を起こすと、すべての臓器が正常に働けなくなり命に関わる可能性もあります。貧血には、十分に治療を行えるものもあれば、輸血するしか方法がないものもあります。
貧血が起こる原因は、大きく分けて二つあります。端的に表現すると、ヘモグロビンが「消費されすぎている」か「生産できていないか」です。
「消費されすぎている」というのは、赤血球はきちんと作られているが、なんらかの原因(ケガによる失血、病気による溶血など)で、失われてしまうことによるものです。一方、「生産できていない」というのは、なんらかの原因(急性白血病など)で、正常に赤血球を作れなくなってしまうことによるものです。
軽度であれば、あきらかな症状がみられないこともあります。症状が進行すると、歯肉が白っぽくなる、疲れやすくなる、などの症状がみられます。
重度の貧血は、酸素が行き渡らなくなることで、呼吸困難を起こしたり、臓器がダメージを受けたりするため、命に関わります。
猫の貧血の原因には、以下のようにさまざまなものがあります。
失血性貧血
交通事故、臓器にできた腫瘍が破裂することなどにより血液が失われて起きる貧血です。
鉄欠乏性貧血
ヘモグロビンを作るのに必要な鉄分が足りないことによる貧血です。
吸血性の寄生虫感染などによる慢性的な貧血で起こることもあります。
溶血性貧血
たまねぎ中毒や自己免疫疾患などにより血液中の赤血球が破壊されることによって起きる貧血です。
腎性貧血
腎臓から分泌される赤血球を作らせるホルモン(エリスロポエチン)の減少により起きる貧血のことです。腎性貧血は、慢性腎臓病の猫で起きる貧血です。
慢性的な炎症
慢性的な炎症により(感染や腫瘍など)により鉄代謝に異常が起こり貧血が起きます。
骨髄の病気
白血病などの骨髄の病気により貧血を起こすこともあり、この場合は赤血球だけではなく、白血球や血小板なども同様に減少してしまいます。
かかりやすい猫種はとくになく、どの猫でもかかる可能性があります。慢性腎臓病を患っている猫や、寄生虫予防をしていない野外に出る猫の場合は注意が必要です。
治療は原因によりさまざまです。
鉄分やホルモンの補給
貧血がみられるものの、血液を作る機能は十分にあるという場合は、治療をすることで貧血の改善が見込めます。
駆虫、鉄分の補給、赤血球を作らせるホルモンの補給、外科的処置などが行われます。
輸血など
貧血が重度の場合は、輸液、輸血、酸素吸入などが行われます。
赤血球を作っている骨髄の病気は、血液を作る機能が失われているため、輸血をするしか方法がない場合もあります。
貧血になってしまった場合、どのくらいの治療費がかかるのでしょうか?保険会社の保険金請求データをもとにした治療費の例を見てみましょう。
猫種:スコティッシュ・フォールド(5歳)
内容:通院1日(免疫介在性溶血性貧血)
| 診療明細例 | |
|---|---|
| 診療項目(内容) | 金額(円) |
| 診察 | 700円 |
| 血液検査(CBC) | 3,000円 |
| 内服薬(14日分) | 2,800円 |
| 処方 | 500円 |
| 合計 | 7,000円 |
寄生虫の予防
貧血が重度の場合は、輸液、輸血、酸素吸入などが行われます。
鉄欠乏性貧血は、吸血性の寄生虫の感染などによる慢性的な貧血で起こることもあるので、寄生虫予防などを行うことも大切です。
定期的な検査
貧血が重度の場合は、輸液、輸血、酸素吸入などが行われます。
猫では高齢になると慢性腎臓病を患うことが大変多く、腎臓の働きが低下することにより腎臓から分泌される赤血球を作らせるホルモンが低下します。
そのため、慢性腎臓病を患っている猫では、定期的にモニターを行い、貧血の有無を確認していくことも重要です。