更新日:2021年8月2日
猫の口内炎とは、どのような傷病なのでしょうか?
症状や原因、治療法について見てみましょう。
この記事の監修者
獣医師
三宅 亜希
獣医師/電話どうぶつ病院アニクリ24 院長
獣医師/電話どうぶつ病院アニクリ24 院長
口内炎とは、口腔内にできる炎症のことです。歯肉、舌、頬の内側などに起こります。口内炎ができると、出血をしたり、痛みや違和感から、食事がしづらくなったり、よだれが出たりするようになります。口内炎を起こす原因はさまざまで、歯石などの刺激、免疫不全、薬品類の誤飲、ほかの疾患の影響などがあります。また、猫では、投薬を止めると繰り返し再発するような、難治性の口内炎を起こすことがあります。
・口腔内の潰瘍
・出血
・口臭
・柔らかいものを好む
・物を食べづらそうにする
・食欲不振
・奇声(痛みによる) など
舌、歯茎といった口腔内の粘膜に腫れや炎症が起こって、出血、よだれ、口臭がひどくなる、などの症状がみられます。
口内炎の痛みにより、食事をしづらくなり、体重減少がみられることも多いです。また、重度の場合は、水を飲むことが困難になるおそれもあります。
外傷
歯石による刺激、やけど、薬品の誤飲、電気コードをかむなどで口腔内に傷を負うことで起こります。
口腔内の衛生状態
不十分な歯のケアにより口腔内の衛生状態が保たれていないことが原因で起こります。
ほかの疾患
猫エイズ発症による免疫不全、腎臓病による血中尿毒素の上昇、糖尿病による血管炎などが原因で起こります。
かかりやすい猫種は特になく、どの猫種でもかかる可能性があります。
歯石の除去
全身麻酔をかけて歯石を除去し、口腔内を清潔にします。
投薬
炎症を抑える薬や細菌に効果がある薬を内服します。
内科療法によって口内炎の状態は良化しますが、投薬をやめると再び悪化することがあり、根治させることが難しいものも多くあります。
外科治療
外科療法として抜歯が選択されることがあります。
抜歯は、臼歯(奥歯)のみをすべて抜くケースと、口腔内の歯をすべて抜くケースがあります。
臼歯のみを抜歯した場合、改善率は約6割、すべての歯を抜歯した場合、改善率は9割以上といわれています。
しかし、グラグラしていない健康な歯を抜くというのは非常に大変なことで、顎の骨が弱っていたりすると、骨折してしまうこともあります。
そのため、十分な術前検査を行い、どのような段階を踏んで抜歯をしていくかを担当医が慎重に決めます。
口内炎にかかってしまった場合、どのくらいの治療費がかかるのでしょうか? 保険会社の保険金請求データをもとにした治療費の例を見てみましょう。
猫種:ソマリ(2歳)
内容:通院1日
診療明細例 | |
---|---|
診療項目(内容) | 金額(円) |
診察 | 1,000 |
検査 | 2,000 |
注射 | 5,000 |
処方 | 2,000 |
合計 | 10,000円 |
歯のケア
口内炎は、歯周病などで口内環境が悪化して起こることが多いです。
歯石や歯垢がたまらないようにすることが大切なので、自宅での歯のケアを十分に行いましょう。
上の奥歯が一番歯石がたまりやすくなっているので、歯を磨く際は重点的に磨くようにするとよいでしょう。
歯磨き効果のあるおもちゃなどを日頃からかませるのもいい方法です。
歯のケアに慣れさせる方法
① 顔や口の周りを触る
② 手前の歯を触る
③ 歯ブラシ(歯磨きシート)が顔の近くにある状態に慣れさせる
④ 歯ブラシ(歯磨きシート)で歯を触る
⑤ 歯ブラシ(歯磨きシート)で歯を1本磨いてみる
すべてのステップは、ご褒美を与えながら行い、少しでも嫌がるそぶりを見せたらすぐにやめます。ステップを進めるのに焦りは禁物です。
なかなか次のステップに進めないこともあれば、前のステップに戻ってやり直しをしたほうがいいこともあります。
無理をして、嫌な思い、怖い思いをさせてしまうと、なかなかスムーズに進みませんので、少しずつ階段を上っていくイメージで行いましょう。
嗜好性の高い歯磨きペーストを利用するのもいいでしょう。
どうしても口を触らせてくれない場合は、歯磨き効果のあるドライフードなども販売されているので、かかりつけの病院で相談してみましょう。
ワクチン接種
猫の免疫力を低下させるウイルスの感染症を予防するために、ワクチン接種を受けることも予防法の1つです。