更新日:2023年10月4日
猫のしこりの原因にはどのようなものがあるのでしょうか?
また、しこりの原因として考えられる病気や対処法について見てみましょう。

この記事の監修者

獣医師
三宅 亜希
TRIPECT lab.代表、東京都獣医師会広報委員
TRIPECT lab.代表、東京都獣医師会広報委員
基本的に、しこり=できもの がある場合、それは腫瘍をさします。腫瘍というと、癌をイメージすると思いますが、悪さをしない良性の腫瘍もあるので、しこりがあったからといって「悪性の腫瘍(がん)」とは限りません。早期に正しい検査を行い、良性か悪性かを見極め、適切な処置をすることが大切です。
以下の病気などにより、しこりが生じることがあります。
乳腺の腫瘍
避妊手術をしていないメスでよくみられる腫瘍のひとつです。多くは10歳くらいでみられますが、若いうちに発生することもあり、まれではありますが、オスに発生することもあります。猫の場合、良性のことは少なく、ほとんどが悪性であることがわかっています。
皮膚の腫瘍
皮膚にしこりが触れる腫瘍はたくさん存在します。皮膚にできる腫瘍には、以下のものなどがあります。
○扁平上皮癌
扁平上皮由来の悪性腫瘍で、猫で1番よくみられます。外傷のようにみえたり、かさぶたのように見えたりすることもあります。白い毛の猫で発生が高くなります。猫の場合、顔(鼻や耳など)に発生することが多く、かさぶたのようにも見えます。
○メラノーマ
メラノサイトと呼ばれる細胞由来の腫瘍です。体表にできるものは悪性と良性どちらもあり、いずれも高齢の猫で発症することが多いです。
○皮膚型リンパ腫
皮膚に生じるタイプのリンパ腫で、主に中〜高齢の猫で発生する悪性腫瘍です。単発で生じたり、いろいろな部位に多発したりすることもあります。
○肥満細胞腫
肥満細胞由来の悪性腫瘍で、悪性度の低いものから高いものまでさまざまです。皮膚型肥満細胞腫は良性で経過がよいものが多いです。内臓に発生することも多く、脾臓と消化管に生じることが一般的です。内臓の肥満細胞腫が原発で、皮膚にできているものが転移する場合もあります。
○乳頭腫
扁平上皮由来の良性腫瘍で、パピローマウイルス感染が原因と考えられています。若い年齢でできることが多いです。
○脂肪腫
脂肪細胞由来の良性腫瘍で、中齢以降の猫でみられることが多いです。単発でできることが多いですが、同時に複数個生じることもあります。
そのほか
炎症、外傷、感染などによる皮膚疾患の場合でも、病変部がしこりのようになることがあります。
病理検査
一般的に皮膚にしこりが触れる場合、腫瘍の疑いがあるため検査をすることになります。良性か悪性かは見た目だけでは判断できません。しこりが小さい、猫が気にしていない、大きくなる様子がない、という場合でも、必ず受診して検査をしてもらいましょう。確定診断をするには、腫瘍を切除して病理検査をする必要がありますが、細い注射針でしこりの細胞を少量採って行う検査でも、ある程度どんな腫瘍なのかがわかることもあります。まずは、かかりつけ医にどんな検査が可能であるか相談しましょう。取りあえず様子を見ておこう、と放っておいたことで、腫瘍が大きくなり完全切除ができなくなってしまうこともあるので、早めの受診と検査が大切です。