更新日:2024年8月29日
猫の歯周病とは、どのような傷病なのでしょうか?
症状や原因、治療法について見てみましょう。
この記事の監修者
獣医師
三宅 亜希
TRIPECT lab.代表、東京都獣医師会広報委員
TRIPECT lab.代表、東京都獣医師会広報委員
歯周病は、歯垢の中の細菌が原因となって起こる炎症で、若くても罹患します。
歯肉だけではなく、歯や歯の周囲にある靭帯、歯を支えている骨にも炎症が起こることがあります。
鼻腔や顔の皮膚の下に膿がたまったり、血管を通って口腔内の菌が運ばれたり、腎臓、心臓、肝臓などに影響を与えることもあります。
猫は人に比べると歯垢が歯石に変わるのがとても速く、歯石には歯垢が付きやすいため、悪循環が起こります。
人の場合、虫歯に悩まされることが多いですが、実は猫には虫歯がなく、今までに1件も報告されていません。
猫が虫歯にならない理由は以下となります。
歯の構造
人の奥歯は、形状的に平らで表面にくぼみがあるのが特徴です。上下の奥歯が合わさることで、物をすりつぶして細かくします。このくぼみの部分に歯垢がたまりやすいので、奥歯は一番虫歯を起こしやすい場所だといわれています。
一方、猫の歯はするどくとがっていて、「矢じり」のような形をしています。上下の奥歯は合わさらず、ハサミのように肉を切り取ります。そのため、人の奥歯のように歯と歯が合わさる面が少なく、虫歯になりにくい歯の構造をしているといえます。
虫歯菌の存在
虫歯は、炭水化物や糖を好む虫歯菌が出す酸が原因で起こります。この虫歯菌は、ミュータンス菌とよばれる細菌ですが、猫の口腔内には存在しないことがわかっています。
完全肉食動物
虫歯菌は糖を好みます。そのため、甘いものをよく食べていると虫歯になりやすくなります。犬では、定期的に飼い主さんから甘いお菓子を与えられていると虫歯になるリスクが高まります。また、自然界でも果物などを好む動物には虫歯があるといわれています。
一方、猫は完全肉食であり、通常、果物など甘いものを自ら食べることはありません。甘いものを食べる習慣のない完全肉食動物には、虫歯菌が住みつくことがないと考えられます。
猫は虫歯にならないので、歯のケアが不必要かというと、そうではありません。虫歯にはならないものの、歯周病菌は猫の口腔内に住みついていて歯周病になりやすく、3歳以上の猫の多くが歯周病を発症していると考えられています。また、難治性の口内炎を発症することもあるので、歯のケアはしっかりしましょう。
歯肉炎
歯茎が赤く腫れる、歯茎に炎症がある、などの症状があります。
歯垢の中の細菌が原因となり炎症を起こすところは歯周病と同じですが、病巣が歯肉までのものを歯肉炎といいます。
歯周病(歯周炎)
歯肉炎が深いところに浸食した状態を歯周炎といいます。
口臭がきつい、歯茎から出血する、物を食べづらそうにする、などの症状があります。
進行すると、歯が抜ける、顔の皮膚に穴が開き、歯根にたまった膿が排せつされる、などの症状がみられます。あごの骨を折ることもあります。
歯垢の中の細菌が原因となって起こります。
不十分な歯のケアで、歯垢が残っていることなどが原因となります。
かかりやすい猫種はとくになく、どの猫種でもかかる可能性があります。
歯垢・歯石の除去
全身麻酔をかけて歯石を除去し、歯周ポケットに入り込んでいる歯垢もきれいに取り除く処置を行います。ぐらつきがひどい場合は抜歯をし、できた穴は縫合します。歯石を除去した歯の表面をつるつるに磨き、口腔内を徹底的に洗浄します。
投薬
抗生剤や痛み止めなどの内服薬を処方されることもあります。
歯周病にかかってしまった場合、どのくらいの治療費がかかるのでしょうか?保険会社の保険金請求データをもとにした治療費の例を見てみましょう。
猫種:マンチカン(7歳)
内容:手術1回、入院1日
| 診療明細例 | |
|---|---|
| 診療項目(内容) | 金額(円) |
| 診察 | 800円 |
| 半日入院 | 1,500円 |
| 検査 | 16,000円 |
| 全身麻酔 | 15,000円 |
| 歯科処置 | 35,000円 |
| 抜歯 | 24,000円 |
| 点滴 | 3,000円 |
| お薬 | 2,000円 |
| 合計 | 97,300円 |
歯周病の予防は、歯石や歯垢がたまらないようにすることが大切なので、自宅での歯のケアを十分に行いましょう。
歯磨き効果のあるおもちゃなどを日頃からかませるのもいい方法です。
歯のケアに慣れさせる方法
@ 顔や口の周りを触る
A 手前の歯を触る
B 歯ブラシ(歯磨きシート)が顔の近くにある状態に慣れさせる
C 歯ブラシ(歯磨きシート)で歯を触る
D 歯ブラシ(歯磨きシート)で歯を一本磨いてみる
すべてのステップは、ご褒美を与えながら行い、少しでも嫌がるそぶりを見せたらすぐにやめます。ステップを進めるのに焦りは禁物です。
なかなか次のステップに進めないこともあれば、前のステップに戻ってやり直しをしたほうがいいこともあります。
無理をして、嫌な思い、怖い思いをさせてしまうと、なかなかスムーズに進まないので、少しずつ階段を上っていくようなイメージで行いましょう。
嗜好性の高い歯磨きペーストを利用するのもいいでしょう。
猫が口を触らせてくれない場合は、歯磨き効果のあるドライフードなども販売されているのでかかりつけの病院で相談してみましょう。