更新日:2025年1月8日
猫の嘔吐の原因にはどのようなものがあるのでしょうか?
また、嘔吐の原因として考えられる病気や対処法について見てみましょう。

この記事の監修者

獣医師
三宅 亜希
TRIPECT lab.代表、東京都獣医師会広報委員
TRIPECT lab.代表、東京都獣医師会広報委員
猫は、勢いよく食べて吐き戻したり、毛玉を吐き出したりすることがあるため、よく吐くことがある動物と認識している人も多いでしょう。
しかし、くり返しや定期的に吐く場合は病気のおそれがあります。
食事を変更してから吐くようになった場合は、以前の食事に戻してみましょう。また、勢いよく食べないように早食い防止用の食器を使用したり少量ずつ与えたりするといいでしょう。食欲・元気があり、下痢などのほかの消化器症状がない場合は、少し様子をみてもいいでしょう。
また、胃が空っぽの時間が長く続くと、胃酸がたくさん分泌され、胃液を嘔吐することがあります。朝ごはんを食べる前に黄色っぽいものを吐いているときは、このケースが多いです。まずは、少量のフードを与えて状態を確認しましょう。よく食べて、吐くしぐさがなければ、少し時間をおいてから残りのフードを与えてみましょう。空腹による嘔吐が疑われるような場合でも、吐き気が続いたり、食欲不振がみられたりするときは、受診が必要になります。異物や刺激物を食べてしまった場合も受診が必要です。
病気の治療や予防で薬を処方されていて、薬を飲んでから嘔吐を起こすような場合は、薬の影響が考えられますので、かかりつけ医に相談しましょう。
換毛期で毛がたくさん抜ける時期は、毛づくろいで飲み込む毛の量も増えることで吐くことがあります。ブラッシングをして余分な毛を取り除いたり、消化管内の毛玉をほぐすような毛玉除去のサプリを使用したりしましょう。
以下の病気などにより、吐くことがあります。
感染性腸疾患
細菌、ウイルス、寄生虫などの病原体が感染することによって、嘔吐や下痢などの消化器症状を起こします。
炎症性腸疾患
原因不明の炎症により、慢性的な嘔吐や下痢などの消化器症状を起こします。
腸粘膜が異常な免疫反応を起こすことが要因になっていると考えられています。
膵炎
膵炎とは、膵臓に炎症が起こる病気のことで、急性膵炎と慢性膵炎があります。
食欲不振、吐く回数が多くなる、下痢などの症状がみられます。
腫瘍
腸にできる腫瘍としては腺癌、リンパ腫、平滑筋腫、平滑筋肉腫、炎症性ポリープなどがあります。
異物誤飲
異物を飲み込んでしまったことにより、胃が刺激を受けたり消化管が通過障害を起こしたりして嘔吐が生じることがあります。
毛球症
毛づくろいで飲み込んだ毛が原因で嘔吐が生じることがあります。
腸閉塞
腸が完全にふさがれている状態、もしくは、腸の内容物が深刻な通過障害を起こしている状態になることで、排せつされるはずの毒素が体内にたまり、嘔吐が引き起こされることがあります。腸管の中がふさがってしまう「機械的閉塞」と、腸管が正常な動きをできなくなってしまう「機能的閉塞(麻痺性腸重積)」があります。
腎機能不全
急性腎臓病、慢性腎臓病などにより、腎臓の機能障害が起こった場合、尿として排せつされるはずの毒素が体内にたまり、嘔吐が引き起こされることがあります。
肝機能不全
急性肝臓病、慢性肝臓病などにより、肝臓の機能障害が起こった場合、肝臓で代謝されるはずの毒素が体内にたまり、嘔吐が引き起こされることがあります。
食物アレルギー
特定の食べ物に対してアレルギー反応を起こして吐くことがあります。
中毒
自然毒、薬品、細菌の毒素などの影響により急性中毒や慢性中毒を起こして吐くことがあります。
熱中症
過度の熱に対して体が熱をさげることができなくなる状態で、41℃を超える高熱になり多臓器機能障害が引き起こされることもあります。
気温や湿度が高い場所で過度の運動をした、車内に閉じ込められていた、水分補給のできない環境にいた、などが原因となることが多いです。
吐く症状は、胃腸炎、おもちゃ、ひもなどの誤飲事故、腸閉塞でよく見られます。
ほかにも、中毒や神経の炎症が原因で吐くこともあれば、臓器の機能不全によって血中に毒素がたまることで吐くケースもあり、さまざまな病気の症状として起こります。
ただし、激しく吐いている場合は早急に受診しましょう。
また、吐く回数が少なくても、元気や食欲がない、下痢をしている、腹痛を訴える、いつもと様子が違うなど、気になる症状があれば、ただちに受診しましょう。
猫が吐くのは珍しいことではないですが、毎月のように吐いている場合は、体に問題が生じている可能性が高いので、ほかに気になる症状がなくても、健康診断を兼ねて検査をすると安心です。
以下に、受診の目安について説明します。
病院へ行く必要のない嘔吐の症状について
毛づくろいで、自身の毛玉を飲み込んで嘔吐した、勢いよく食べた直後に嘔吐した、投薬後すぐに嘔吐した、空腹時に胃液を嘔吐した、などが該当します。
その後、再び嘔吐することもなく食欲や元気がある場合は、しばらく様子を見てもいいかもしれません。
病院行く必要のある嘔吐の症状について
上記が原因として当てはまらず、繰り返し嘔吐をした場合や、嘔吐以外の症状(食欲不振、元気消失、下痢など)が見られるときは、注意が必要です。
このような場合、病気や中毒、アレルギー、異物誤飲、臓器機能不全、熱中症などを疑い、受診をしましょう。
猫の嘔吐を予防するには、食事管理、ブラッシング、ワクチン接種、寄生虫予防が重要です。
また、食事管理では、フードを変更するときは一気に変更せず、これまでのフードに新しいフードを少しずつ混ぜて与えるようにしましょう。
なお、初めておやつを与える際も、少量からにしてください。
毛づくろいで、自身の毛玉を飲み込んで嘔吐をした場合は、ブラッシングなどが有効です。特に、換毛期には小まめにブラッシングを行いましょう。
そのほかの疾患が原因で嘔吐を起こしている場合は、処方された薬をしっかりと投薬することや、定期的に受診をすることが、一番の予防方法になります。