更新日:2024年10月24日
犬の椎間板ヘルニアとは、どのような傷病なのでしょうか?
症状や原因、治療法について見てみましょう。
この記事の監修者
獣医師
三宅 亜希
TRIPECT lab.代表、東京都獣医師会広報委員
TRIPECT lab.代表、東京都獣医師会広報委員
老化、外傷、激しい運動、遺伝などが原因で椎間板が変性して突出し、脊椎の上にある太い神経(脊髄)を圧迫することで起こる病気です。頚部、胸部、腰部のどこにでも発症の可能性があり、痛みや麻痺といった神経症状が生じます。
椎間板は脊椎にかかる圧力を分散する役割があり、非常に重要なものです。脊椎(背骨)は1つひとつの短い骨が連なって形成されています。その短い骨と骨の間でクッションの役割をしているのが椎間板です。椎間板は外側が「繊維輪」という組織、内側が「髄核」という組織から成っています。
軽度であれば、「なんとなく激しい運動をしなくなった」と感じる程度で、なかなか症状に気がつかないこともあります。
病状が進行してくると、足元がふらついたり引きずったりするような歩き方になります。さらに病状が進行し重度となると、突然立ち上がれなくなったり、自身の力で排尿・排せつのコントロールができなくなったりします。骨折、脱臼、腫瘍、脊椎炎などでも椎間板ヘルニアと似た症状が見受けられることがあるので、気になる症状が出ている場合は早めに病院で検査を受けましょう。
椎間板ヘルニアの原因として大きく分けて二つあります。
@加齢によるもの
加齢により繊維輪が変性して亀裂が入り、髄核が入り込むことで繊維輪が押し上げられます。
繊維輪が押し上げられた分、脊髄が圧迫され、椎間板ヘルニアが起こります。
A遺伝的なもの
「軟骨異栄養症」という遺伝子を持つ犬は、ゼリー状の髄核が生まれつき固くなりやすくなっています。
固くなった髄核が繊維輪を圧迫することにより亀裂が入り、髄核が繊維輪から逸脱します。これにより脊髄が圧迫され、椎間板ヘルニアが起こります。
加齢によるものはどの犬種でもかかることがあります。
遺伝的なものでは、軟骨異栄養犬種(ミニチュア・ダックスフンド、ウェルシュ・コーギー・ペンブローク、シー・ズー(シーズー)、ビーグル、ペキニーズ、フレンチ・ブルドックなど)がかかりやすいです。
※軟骨異栄養犬種
遺伝性疾患により手足が極端に短く生まれてくることがありますが、この遺伝子をもともと持っている犬種を軟骨異栄養犬種といいます。この犬種は椎間板の早期変性を起こしやすいため、一般的には老齢で発生する椎間板ヘルニアが若いうちに発生しやすかったり、何か所もの椎間板が同時に変性して症状を起こしたりすることが知られています。
神経系の検査やレントゲン検査を行いますが、実際にどの箇所の椎間板がどのように突出しているのかを判断するにはCT・MRI検査が必要になります。
投薬
軽度の場合は、鎮痛剤などの投薬と安静にすることで改善を図ります。
数週間の安静が必要になりますが、症状が安定する前に通常の生活に戻してしまうと、重症化して歩けなくなるおそれがあります。
外科手術
重度となり麻痺を起こしている場合は、内科療法での治癒を期待することは困難です。
根治は突出した椎間板を摘出する外科手術となります。術後管理やリハビリが非常に大切です。
椎間板ヘルニアにかかってしまった場合、どのくらいの治療費がかかるのでしょうか?
保険会社の保険金請求データをもとにした治療費の例を見てみましょう。
犬種:ミニチュア・ダックスフンド(3歳)
内容:手術1回、入院6日
| 診療明細例 | |
|---|---|
| 診療項目(内容) | 金額(円) |
| 診察 | 1,500円 |
| 入院(5泊6日) | 20,400円 |
| 検査 | 39,700円 |
| MRI | 89,000円 |
| 全身麻酔 | 15,000円 |
| 手術 | 127,300円 |
| 点滴 | 12,200円 |
| 処置 | 7,100円 |
| 注射 | 23,000円 |
| お薬 | 2,450円 |
| 合計 | 337,650円 |
肥満を防止する
子犬のときからバランスのよい食事と適度な運動で柔軟な筋肉を作っておくことや、肥満にさせないことは大切です。
無理な姿勢を取らせない
二本足で立たせたり、あおむけに抱いたりなど、無理な姿勢を取らせないようにしましょう。
床材の見直し
足腰に余計な負担がかからないように床材を滑りにくいものにするなど環境の見直しも有効です。
歩き方に普段と違うところはないか、反射や痛覚に異常はないか、前肢や後肢に麻痺がないか、などを確認します。
頸部椎間板ヘルニアでは頸部に痛みが生じるため、頸部の筋肉が緊張する、首を持ち上げづらそうにするほか、歩行異常、姿勢の異常などが見られます。
胸腰部椎間板ヘルニアでは胸腰部に痛みが生じるため、背中を丸める、震える、後肢の歩行異常、後肢の麻痺、後肢の痛覚の消失などの症状が見られます。
また、頸部椎間板ヘルニアは、重症度によってグレード1〜3、胸腰部椎間板ヘルニアはグレード1〜5にわけられています。
なお、脊椎の状況はレントゲン検査で確認しますが、一般的なレントゲン検査では椎間板ヘルニアの診断は行えないため、造影剤を用いたレントゲン検査やCT検査、MRI検査を行う必要があります。
CT検査やMRI検査をする際は、一般的に全身麻酔が必要になります。