更新日:2024年10月24日
犬の腸閉塞とは、どのような傷病なのでしょうか?
症状や原因、治療法について見てみましょう。
この記事の監修者
獣医師
三宅 亜希
TRIPECT lab.代表、東京都獣医師会広報委員
TRIPECT lab.代表、東京都獣医師会広報委員
腸閉塞とは、腸が完全にふさがれている状態、もしくは、腸の内容物が深刻な通過障害を起こしている状態をいいます。
腸管の中がふさがる「機械的閉塞」と、腸管が正常な動きをできなくなる「機能的閉塞(麻痺性腸重積)」があります。どちらも治療が必要ですが、とくに「機械的閉塞」は救急管理が必要になることが多いです。
腸閉塞の原因はいろいろありますが、気をつけたいのが異物誤飲です。通常、食べ物以外を好んで食べようとしないですが、まれに異嗜といって、食べ物ではないものを好んで飲み込むことがあります。異嗜ではなくても、革製品などを好きな犬は多く、大型犬ではベルトを丸のみしてしまうという事故もあります。また、大きなものでなくても、梅干しの種などで腸閉塞が起こることもあります。そのほかにも、おもちゃで遊んでいるうちに一部が取れて飲み込んでしまったり、歯のケア用の歯磨きシートを飲み込んでしまったりすることもあります。
通過障害が軽度であれば、食欲不振、嘔吐、便秘、下痢などの症状があり、長引くと体重が減少します。
完全な閉塞を起こしていたり、腸粘膜が損傷していたりすると、腸内細菌の毒素が体内に入り込みショック状態に陥ることもあります。
機械的閉塞と機能的閉塞にかかる原因としては、以下のものがあげられます。
機械的閉塞
異物誤飲、捻転、腫瘍、腸重積、腸ヘルニア、重度の便秘、術後の癒着など
機能的閉塞
神経麻痺など
ジャーマン・シェパードは腸重積を起こしやすいといわれています。また、ミニチュア・ダックスフンドでは、腸にある種のポリープができやすいことがわかっており、腸閉塞の原因になる可能性はあります。誤飲事故などは若く活発な犬に多いです。
外科手術
投薬などの内科的な治療が行えるものもありますが、外科治療による腸の整復や異物除去などが必要なことが多いでしょう。
腸の中の異物を取り出すときは手術で腸を切開します。また、腸閉塞を起こしてから長時間経過して腸管が壊死している場合は、腸管を部分的に切除します。
腸重積を起こして、腸が変形したり、壊死したりしている場合も腸管を切除することになります。
また、腸にできる腫瘍には、化学療法(抗がん剤など)の効果が期待できるものもあります。
麻痺などにより通過障害が起こっている場合は、投薬などの内科的な治療法が選択されます。
腸閉塞にかかってしまった場合、どのくらいの治療費がかかるのでしょうか?
保険会社の保険金請求データをもとにした治療費の例を見てみましょう。
犬種:ミニチュア・ダックスフンド(2歳)
内容:入院5日、手術1回(開腹手術)
| 診療明細例 | |
|---|---|
| 診療項目(内容) | 金額(円) |
| 診察 | 1,000円 |
| 血液検査 | 8,000円 |
| 腹部エコー検査 | 5,000円 |
| レントゲン検査 (術前) |
6,000円 |
| 造影レントゲン検査 (術後) |
15,000円 |
| 入院(5日) | 15,000円 |
| 麻酔 | 20,000円 |
| 開腹手術 | 80,000円 |
| 点滴(3日) | 12,000円 |
| 注射(5日) | 12,500円 |
| 合計 | 174,500円 |
異物誤飲に注意する
異物誤飲に注意しましょう。床や犬が届く高さの場所には極力ものを置かないようにします。
また、散歩中に拾い食いをしないように、食べものを素通りするための訓練をしたり、口にくわえているものを渡してもらう訓練をしたりすることも大切です。
散歩のたびに落ちているものをなんでも食べてしまうという犬の場合は、犬の健康を守るために口輪が必要になることもあります。
異物誤飲の疑い、便秘の既往歴など、腸閉塞を引き起こす原因として思い当たるものがないかを問診で確認します。
超音波検査やレントゲン検査では、腸内に閉塞を起こす原因があるかを確認します。
また、通過障害を確認するために造影剤を使用したレントゲン検査を行う場合や、全身の状態を確認するために血液検査を行うこともあります。
腫瘍が疑われる際は、CT検査や内視鏡検査が行われることもありますが、いずれの検査時も全身麻酔が必要になります。
その後、病変部を採取して病理検査を行い、診断をすすめます。
場合によっては、試験開腹術が必要になることもあります。
試験開腹術とは、診断のためにおなかを開けて病変部を確認するほか、病変部の一部を採取することを目的とした開腹術で、治療を目的とした手術ではありません。