更新日:2025年1月8日
犬のよだれの原因にはどのようなものがあるのでしょうか?
また、よだれの原因として考えられる病気や対処法について見てみましょう。
この記事の監修者
獣医師
三宅 亜希
TRIPECT lab.代表、東京都獣医師会広報委員
TRIPECT lab.代表、東京都獣医師会広報委員
よだれというと、おいしい食事を前にした犬を想像するかもしれません。しかし、さまざまな病気でよだれを垂れ流す症状がみられます。
なぜか、よだれがよく出る、よだれ以外にも気になる症状があるというときには、病院に行き検査をしてもらうと安心です。
食事をするための準備
空腹時に食事を目の前にして、マテをしているときなどによだれが増えます。
これは、食事(消化)の準備としての役割のため、気にする必要はありません。
刺激物の摂取
洗剤などの刺激物を少量なめたり、薬などの苦いものを飲ませたりした後などに、よだれが増えることがあります。
口の中の苦みや刺激を和らげようとして、よだれの分泌が増えているだけなので心配はありません。
水を飲ませたり、フードを与えたりすることで落ち着くでしょう。
洗剤などを飲んでしまったときは、すぐに病院へ行くようにしましょう。
超大型犬の特徴
セントバーナードやマスティフのような超大型犬では、正常な状態でもよだれが垂れるほど出ることがあります。
以下の病気などにより、よだれが生じることがあります。
歯肉炎
歯垢の中の細菌が原因となり、歯肉に炎症を起こします。
歯周病
歯垢の中の細菌が原因となって起こる炎症です。
歯肉だけではなく、歯や歯の周囲にある靭帯、歯を支える骨にまで炎症が起こることがあります。
具体的には、歯が抜けたり、顔の皮膚に穴が開き歯根にたまった膿がでたりします。
また、あごの骨に影響し骨折することもあります。
口内炎
口腔内に炎症が起こります。
ただれたり、潰瘍ができたりすることで、痛みから食欲が低下することもあります。
口腔内腫瘍
良性腫瘍、悪性腫瘍ともに発生します。
悪性のものには、メラノーマ、扁平上皮癌、線維肉腫などがあります。
やけど
電気コードをかじるなどして口腔内をやけどすることがあります。
唾液腺疾患
唾液腺炎、唾液腺嚢腫(ガマ腫)
食道疾患
食道内異物、食道の腫瘍、食道炎、巨大食道症など
消化管疾患
胃拡張、胃捻転、胃潰瘍など
てんかん
脳の構造そのものは正常で、機能にのみ異常が起こる病気です。「突然脳に嵐が起こる」と表現されることもあります。
てんかん発作は、部分的で小さな発作から、全身を痙攣させる大きな発作までさまざまで、発作が起こる間隔もまちまちです。
脳神経異常
脳神経に異常があり、顔にまひが起こったり、嚥下ができなくなったりすると、よだれを垂れ流す症状が現れます。
※嚥下:口の中のものを胃に飲みくだすこと
吐き気
吐き気があると、よだれが増えます。
吐き気を起こす原因には、消化器の病気以外にも、前庭疾患(さまざまな原因によって平衡感覚を失う疾患)などもあげられます。
中毒
自然毒、薬品、細菌の毒素などの影響により急性中毒や慢性中毒を起こします。
腎機能不全
腎臓の機能障害が起こった場合、尿として出るはずの毒素が体内にたまり、吐き気が生じ、よだれが出ることがあります。
急性腎不全は、救急管理が必要な病気です。急激に腎機能が低下し死にいたることもありますが、適切な治療により腎機能が回復する可能性もあります。
一方、慢性腎不全は、数か月から数年かけて徐々に腎機能が低下する病気です。初期のころは、ほとんど症状が出ないことが多いです。
しかし、悪くなってしまった腎臓は残念ながら元に戻ることはありません。
肝機能不全
急性肝臓病、慢性肝臓病、門脈シャントなどにより、肝臓の機能障害が起こった場合、肝臓で代謝されるはずの毒素が体内にたまり、神経症状としてよだれが出ることがあります。
熱中症
過度の熱に対して体が熱をさげられなくなる状態でで、41℃を超える高熱になり多臓器機能障害が引き起こされることもあります。
気温や湿度が高いところでの過度の運動、車内に閉じ込められていた、水分補給のできない環境にいた、などが原因となることが多いです。
よだれが出る原因としては、口腔内の病気、唾液腺の病気、代謝異常によるもの(肝機能不全や腎機能不全など)、神経の病気など、多くの病気が考えられます。
まずは、口の中を観察し、痛みの原因となるようなものがないかチェックしましょう。
口の中にとくに異常が見られない場合は、別の病気が考えられます。
吐き気や食欲不振がないか、顔の表情がいつもと異なっていないか、何か毒物を間違って飲んでいないかなどよく観察をしてください。
よだれをふき取っても、すぐにまた垂れてくるのであれば、あきらかによだれの出すぎなので、病院に行くことを検討しましょう。
また、熱中症でも、よだれを垂れ流す症状がみられますので、夏の暑い時期に、激しい開口呼吸やよだれ、体温の上昇などがみられたら、すぐに身体を冷やし病院に行くようにしましょう。
犬のよだれを予防するには、歯肉炎や歯周病を防ぐ、日々の口腔ケアが重要です。また、犬の歯垢は短期間で歯石に変わるため、できるだけ毎日(可能であれば毎食)ケアをしましょう。
もしも、歯ブラシを使ったケアが難しい場合は、軍手をはめたうえで、歯と歯の間をこすってあげるなど、手軽に始められる方法から試してみましょう。
また、そのほかの疾患が原因でよだれが出ている場合は、処方された薬をしっかりと投薬することや、定期的に受診をすることが一番の予防方法です。