更新日:2024年1月31日
犬の涙が多い原因にはどのようなものがあるのでしょうか?
また、涙の原因として考えられる病気や対処法について見てみましょう。
この記事の監修者
獣医師
三宅 亜希
TRIPECT lab.代表、東京都獣医師会広報委員
TRIPECT lab.代表、東京都獣医師会広報委員
涙は眼球を守ってくれる大切な成分で、いつも眼球の表面を覆っています。
通常、涙は鼻涙管という細い管を通って鼻に流れていくため、目からあふれることはありません。
しかし、涙の生成量が増えたり、鼻涙管への流出量が減ったりすると、目からあふれ、涙が多いという現象が起こります。
生理現象
目にゴミが入るなどの刺激があると、生理現象として涙がたくさん出てきます。
顔の毛があたっている
トイ・プードルやヨークシャー・テリア、シー・ズーなど、毛が長く伸びる犬種は、周りの毛が目にあたって涙が出ることがあります。
毛を短く切ったり、逆に伸ばして結んだりすることで防げます。
以下の病気などにより涙が多くなることがあります。
異所性睫毛、睫毛重生、睫毛乱生
まつ毛が異常な場所から生えていたり、異常な向きに生えていたりすることにより、目にあたってしまうことがあります。
角膜炎
黒目の表面を覆っている角膜の炎症です。
ゴミなどの異物が入ることや自分でこする、物が当たるなど、目に傷がつくことで症状がでます。
ほかにも、病原体の感染や涙が少ないことが原因になることがあります。
結膜炎
まぶたの裏側から白目の表面を覆っている結膜の炎症です。
病原体の感染のほか、砂・ほこりなどの異物、アレルギー、涙の減少が原因で発症することがあります。
ぶどう膜炎
目のぶどう膜に起こる炎症で、角膜の傷から波及することがあります。
ぶどう膜炎が原因となり緑内障が起こることもあります。
緑内障
視神経や網膜に変化を起こして視力を失う恐れがある疾患です。眼圧を下げることにより目の障害を抑えられます。
眼球内には、眼房水という液体で満ちています。常に生成と流出を繰り返し、一定の量を保っているので眼圧も一定に保たれていますが、眼房水が増えると眼圧が上昇します。
腫瘍
眼球や第三眼瞼、鼻腔などに腫瘍ができることがあります。
眼瞼内反、眼瞼外反
遺伝的素因などにより、まぶたが内側に入っていたり外側に反ってしまったりすることがあります。
鼻涙管閉塞
先天的な疾患あるいは、炎症などにより、目から鼻へ涙を通す鼻涙管が閉塞したり狭くなったりすることがあります。
鼻炎
鼻の粘膜が炎症を起こしている状態のことです。
鼻の粘膜が刺激を受けることにより、くしゃみ、鼻水などの症状がでます。鼻水は、最初はサラサラとした形状ですが、ネバネバとした鼻水になったり、膿が混じったり、鼻粘膜から出血が起こることで血液が混じったりすることもあります。
目に刺激があることで涙はたくさん出るため、まつ毛の刺激や角膜炎や結膜炎が原因となることが多いです。
腫瘍によるもの、まぶたの形状が涙を保持できないため涙があふれるなど、目や目の周りの病気の可能性もあります。
また、鼻炎により目と鼻をつなぐ鼻涙管にも炎症が広がった場合、涙のとおり道である鼻涙管が狭くなり、目から涙があふれるということもあるので、早めに病院に行き、検査で原因を特定し適切な治療を受けるようにしましょう。
涙以外に、充血、めやに、目を開けづらそうにする、目を気にするなどの症状がみられた場合は、目に傷ができている可能性が高くなります。
目の傷は進行が早く、放っておくと重症化することがあるので、あまり様子は見ずに早めに病院に行くようにしましょう。
目に違和感や痛みがある場合、床にこすりつけたり、前肢でひっかいたりしようとすることがあるので、エリザベスカラーを装着しておくと安心です。
※涙やけ
涙が流れることで、目頭から鼻にかけて毛の色が変わってしまう状態をいいます。とくに毛色が薄い犬で目立ちます。
涙やけ自体は病気ではありませんが、涙がついたままにしておくと皮膚が炎症をおこすこともあるので、こまめに拭いてあげるといいでしょう。
それでも、涙やけが気になる場合は、涙が多く流れる、なにかしらの病気かもしれません。