更新日:2025年1月8日
犬が震える原因にはどのようなものがあるのでしょうか?
また、震える原因として考えられる病気や対処法について見てみましょう。

この記事の監修者

獣医師
三宅 亜希
TRIPECT lab.代表、東京都獣医師会広報委員
TRIPECT lab.代表、東京都獣医師会広報委員
犬が震えていたら、「寒いのかな?」と思う飼い主さんは多いでしょう。
もちろん、寒さで震えることは多いですが、寒さ以外でもさまざまな理由で震えはおこります。
中には、受診が必要な震えの場合もあるので、よく観察するようにしましょう。
寒さ
一般的に、寒いときに発熱するために身体を震わせることが多いです。室温を確認し、寒いようであれば部屋を暖める必要があります。
寒さに弱い犬種の場合、冬の散歩時には服を着せることを検討しましょう。
恐怖心、警戒心
犬が怖がったり警戒する出来事がないか確認しましょう。
犬にとって見知らぬ人の来客中だったり、工事の音が聞こえていたりすることも原因になります。
ストレス
引っ越し、旅行、ホテルに泊まる、家族が増えたなど、環境の変化によるストレスが原因になります。
加齢による筋力の低下
年とともに筋肉が衰え、排便のときなど力を入れるタイミングで震えることがあります。
学習(震えていたときにかまってもらった経験から)
珍しい例ですが、寒さや恐怖などで震えていたときに、飼い主さんがかまってくれたなどの経験をしていると、なにもなくても震えるしぐさをします。
いずれの場合でも、飼い主さんの呼びかけ、散歩、食事のタイミングなどで震えが止まれば問題ないでしょう。
以下の病気などにより、震えが生じることがあります。
病気やケガによる痛み
多くの病気とほぼすべてのケガで痛みは生じますが、強い痛みによって震えが生じることが多いです。
水頭症
脳脊髄液が正常量以上に貯留し脳に障害を起こす病気で、さまざまな神経異常が生じます。
てんかん
脳の構造そのものは正常で、機能にのみ異常が起こる病気です。「突然脳に嵐が起こる」と表現されることもあります。
てんかん発作は、部分的で小さな発作から、全身を痙攣させる大きな発作までさまざまで、発作が起こる間隔もまちまちです。
脳炎
壊死性髄膜脳炎(通称 パグ脳炎)、壊死性白質脳炎などがあります。
脳腫瘍
脳に腫瘍ができ痙攣などの神経異常が生じることがあります。
中毒
自然毒、薬品、細菌の毒素などの影響により急性中毒や慢性中毒を起こします。
脊髄の疾患
脊髄の炎症や損傷などにより、神経伝達に異常が生じ、震えやマヒが起こることがあります。
腎機能不全
腎臓の機能障害が起こった場合、尿として出るはずの毒素が体内にたまり震えや痙攣などの神経症状が現れることがあります。
急性腎不全は、急激に腎機能が低下し死に至ることもありますが、適切な救急処置により腎機能が回復する可能性があります。
一方、慢性腎不全は、数か月から数年にかけて、徐々に腎機能が低下する病気です。
初期の頃は、ほとんど症状が出ないケースがありますが、残念ながら悪くなった腎臓は元に戻りません。
肝機能不全
急性肝臓病、慢性肝臓病、門脈シャントなどにより、肝臓の機能障害が起こった場合、肝臓で代謝されるはずの毒素が体内にたまり、震えや痙攣などの神経症状が現れることがあります。
低血糖
血液中の糖が著しく減少した状態をいいます。
血糖値が下がることで発作などの神経症状が現れます。
繰り返し体がブルブルと震える、元気がなくなる、体重が減少する、激しく震える、意識がはっきりしていない、などの症状がある場合は、ただちに病院に行ってください。
なお、震える原因には、中毒、神経の障害、臓器の機能不全によって血中に毒素がたまる影響によるものや、低血糖などが挙げられます。
また、てんかん発作の予兆として震えが生じる場合があり、その際にあくびなどの症状がみられることもあります。
さらに、多くの病気では、痛みに伴って震えることがありますが、痛み以外でも、神経の異常によって震える場合もあります。
そのほか、夏の暑い時期に、激しい開口呼吸やよだれ、体温の上昇などが見られた場合は、熱中症を疑い、ただちに体を冷やし、病院に行ってください。
一方で、震えが見られても日常生活に支障がない場合は、病気の可能性は低いです。
以下に、受診の目安について説明します。
病院へ行く必要のない痙攣の症状について
震えの原因として、寒さ、恐怖心、警戒心、ストレス、加齢による筋力の低下や学習(震えていたときにかまってもらった経験から)などが考えられます。
原因を取り除けるものであれば解消し、様子を観察します。
そのほか、抱き上げたときや、声をかけたときに震えが落ち着くか、普段と様子が変わらないかなども確認しましょう。
一方で、特発性てんかんと診断されており、発作として震えが起こった場合は、周囲の物に当たってケガをすることがないよう見守りながら、発作が治まるのを待ちましょう。
なお、声をかけたり抱き上げたりすると、さらなる発作を生む恐れがあるため、静かに見守るようにしましょう。
また、長時間続く場合や、一つの発作が治まる前に、次の発作が始まるような場合は、早急な受診が必要です。
病院へ行く必要のある痙攣の症状について
上記が原因としてあてはまらない場合は、病気や中毒、臓器機能不全、低血糖などを疑って、受診しましょう。
犬の震えを予防するには、寒さ、恐怖心、警戒心、ストレスなどの原因を取り除くことが一番の予防法になります。
また、恐怖心や警戒心は、子犬の頃からいろいろな経験や物事に慣れさせることで軽減できます。
そのほか、疾患が原因で震えを起こしている場合は、処方された薬をしっかりと投薬することや、定期的に受診をすることも予防につながります。