更新日:2023年10月4日
犬の咳の原因にはどのようなものがあるのでしょうか?
また、咳の原因として考えられる病気や対処法について見てみましょう。

この記事の監修者

獣医師
三宅 亜希
TRIPECT lab.代表、東京都獣医師会広報委員
TRIPECT lab.代表、東京都獣医師会広報委員
犬も咳をすることがありますが、人と比べると、頻繁に症状がでることはありません。
また、人の咳と犬の咳は聞こえ方もかなり異なり、犬の場合は、「カハッ」と何かを吐き出したいような聞こえ方をします。
そのため、「えずいている」「吐きたそうにするが吐けない」と感じる飼い主さんも多いです。
生理現象
咳は、気道に異物が入ることを防ぎ、また、入ってしまった異物をだすための、身体の防御反応です。
ごはんを食べたり、水を飲んだり、ほこりを吸い込んだりした際にでる咳は、生理現象のため、心配はいりません。
ごはんを急いで食べることで咳をしている場合は、少量ずつ与えたり、早食い防止用の食器を使ったりするようにしましょう。
また、給水ボトルをケージなどに取り付けて水を飲んでいる場合、犬の舌の構造だと飲みにくい状態であると考えられます。
それが原因で咳が起こりやすくなっている可能性もあるため、床にお皿を置いて水を飲ませたほうがいいでしょう。
以下の病気などにより、咳が生じることがあります。
ケンネルコフ
伝染性の呼吸器疾患の総称で、「伝染性気管支炎」とも呼ばれる病気です。主な症状は咳です。
原因は、ウイルス、細菌、マイコプラズマ属菌など、さまざまです。
生後6週〜6カ月齢の子犬が最も影響を受けやすく、重症化した場合、気管支炎や肺炎などを引き起こすおそれがあります。
鼻炎
鼻の粘膜が炎症を起こしている状態のことです。鼻の粘膜が刺激を受けることにより、くしゃみ、鼻水などの症状がでます。
鼻水は、最初はサラサラとした形状ですが、ネバネバとした鼻水になったり、膿が混じったり、鼻の粘膜から出血が起こることで血液が混じったりすることもあります。
気管虚脱
呼吸の際に気管が変形してつぶれてしまう病気で、咳がでたり、異常な呼吸音がしたり、場合によっては、呼吸困難を起こすこともあります。
肺炎
病原体が肺に感染することで、肺が炎症を起こす病気です。
食べ物や胃の中のものなどを誤嚥(食物などが気管に入ってしまうこと)することにより生じる誤嚥性肺炎や、寄生虫やアレルギーによる肺炎などがあります。呼吸が苦しいためチアノーゼを起こしたり、呼吸困難になったりすることがあります。
食道内異物
誤飲したものが食道に詰まったり、食道に腫瘍ができたりすることで、咳の症状がでることがあります。
肺水腫
毛細血管から肺胞内へ、血液の液体成分が過剰に漏れでてたまってしまう病気です。
肺は空気を取り込む場所のため、呼吸がしづらくなり、呼吸困難を起こすことがあります。重症の場合、命に関わることがあります。
心臓病
僧帽弁閉鎖不全症や、拡張型心筋症、フィラリア感染などにより、心臓の働きに障害が起こり、肺から心臓へ血液が戻りにくくなったり、全身へ送る血液量が減ったり、心臓が肥大したりします。
家に来たばかりの子犬が咳をしている場合は、ケンネルコフが疑われます。
放っておくと悪化することがあるので、早めに病院に行くようにしましょう。
ケンネルコフ以外でも、鼻、喉、気管、肺、食道などに炎症や刺激が起こっている場合は咳がでます。
炎症や刺激を起こす原因は、場所によっても異なりますが、細菌感染、ウイルス感染、寄生虫感染、アレルギー、異物、腫瘍などさまざまです。
また、心臓の働きが低下することにより、肺から心臓へ血液が戻りにくくなり、うっ血を起こして咳が出たり、心臓が大きくなり気管を圧迫して咳がでたりすることもあります。
毎日のように咳をしたり、急に激しい咳を繰り返したりするときは、あきらかに異常がありますので、家で様子を見ずに病院に行くようにしましょう。