更新日:2024年10月24日
犬の貧血とは、どのような傷病なのでしょうか?
症状や原因、治療法について見てみましょう。
この記事の監修者
獣医師
三宅 亜希
TRIPECT lab.代表、東京都獣医師会広報委員
TRIPECT lab.代表、東京都獣医師会広報委員
貧血とは、血液中のヘモグロビン濃度が薄まった状態をいいます。
そもそも、ヘモグロビンは赤血球の中に存在します。そのため、赤血球の数が少なくなったり、赤血球は十分にあるが、1つひとつの赤血球の中のヘモグロビンが少なくなったりすると、貧血になります。
ヘモグロビンは酸素を運搬する能力を担っているため、貧血になるとすべての臓器が正常に働けなくなり、命に関わることもあります。
十分に治療を行えるものもあれば、輸血をするしか方法がないものもあります。
貧血が起こる原因は大きく分けて2つあり、端的に表現すると、「消費されすぎている」か「生産できていない」かです。
消費されすぎているというのは、赤血球をきちんと造っているが、その赤血球がなんらかの原因(ケガによる失血、病気による溶血など)によって失われることによるものです。一方、生産できていないというのは、赤血球を造る場所がなんらかの原因(急性白血病など)により正常に赤血球を造れなくなってしまうことによるものです。
軽度であれば、あきらかな症状がみられないこともあります。貧血は酸素が行きわたらなくなり、粘膜や歯肉が白っぽくなる、運動したがらない、疲れやすくなるなどの酸欠の症状がでることがあります。重度の貧血は、呼吸困難を起こしたり、臓器がダメージを受けたりすることがあり、命に関わる場合があります。
交通事故などによる出血、臓器にできた腫瘍が破裂することなどによる貧血(失血性貧血)、ヘモグロビンを作るのに必要な鉄分が足りないことによる貧血(鉄欠乏性貧血)、自己免疫疾患や、たまねぎ中毒などにより赤血球が壊される貧血(溶血性貧血)、腎臓から分泌される赤血球を作らせるホルモンの減少(腎性貧血)などの原因があります。また、慢性的な炎症により貧血が起こることもあります。白血病などの骨髄の病気により貧血を起こすこともあり、この場合は赤血球だけではなく、白血球や血小板なども同様に減少してしまいます。
免疫介在性溶血性貧血は、プードル、コッカー・スパニエルで起こりやすいことが知られています。
治療方法は、原因によってさまざまですが、以下の治療法があります。
失血性貧血
止血、寄生虫の駆虫、外科手術
溶血性貧血
免疫抑制剤の使用
鉄欠乏性貧血
鉄分の補給
腎性貧血
赤血球を作らせるホルモンの補給
貧血が見られるものの、血液を造る機能は十分にあるという場合は、治療をすることで貧血の改善が見込めますが、輸血をするしか方法がないケースもあります。
貧血になった場合、どのくらいの治療費がかかるのでしょうか?
保険会社の保険金支払いデータをもとにした治療費の例を見てみましょう。
犬種:ビーグル(5歳)
内容:通院1日
| 診療明細例 | |
|---|---|
| 診療項目(内容) | 金額(円) |
| 診察 | 500円 |
| 血液検査 | 5,000円 |
| 処方 | 2,800円 |
| 合計 | 8,300円 |
適度な運動
散歩など、毎日適度な運動をさせたり、バランスのよい総合栄養食を与えたり、「元気がない」、「運動をしたがらない」などの貧血の症状に早めに気づけるようにしましょう。また、鉄欠乏性貧血は、吸血性の寄生虫の感染などによる慢性的な貧血で起こることもあるので、寄生虫予防などを行うことも大切です。
交通事故や、ネギ類の誤飲事故、腎臓病や腫瘍の既往歴など、貧血を引き起こす原因になるような出来事がないかを確認します。
貧血があるかないかは血液検査で確認できますが、貧血の原因を探るには、超音波検査やレントゲン検査などの画像診断や、骨髄検査、直接クームス検査など、多くの検査が必要になることも少なくありません。
直接クームス検査は、直接抗グロブリン試験ともいい、赤血球表面に結合している免疫グロブリンや補体成分を検出する検査法です。自己免疫性溶血性貧血が見られる場合は、陽性を示します。