更新日:2022年11月14日
要支援認定・要介護認定は「介護の手間」を数値化した1次判定と、医者と調査員の意見などが反映される2次判定によって、要介護状態が決まります。それぞれ図表を用いてわかりやすく解説します。
介護保険を利用する場合、まず、介護が必要な状態かどうか市区町村の認定を受ける必要があります。市区町村に申請すると、原則30日以内に認定結果が通知されます。要介護度により、利用できるサービスの総額やサービスの種類が異なります。
市区町村の窓口に申請すると、調査員が自宅や病院に来て、約80項目の質問項目に従い、心身の状態を調べたり、本人・家族への聞き取りや様子の観察をしたりすることによって判断します。その結果をコンピューターに入力し、1次判定の「要介護認定等基準時間」を算出します。これは過去の調査データから、同じような心身の状態の人に対する介護の手間がどの程度かかるかを統計的に予測したものです。
ただし、統計データが被保険者の状態と一致するとは限らないため、調査員が家族から介護にかかる手間や時間を具体的に聞き取り、「特記事項」として記入することになっています。その内容と「主治医意見書」により、介護認定審査会にて2次判定が行われます。
コンピューターによる1次判定は、約3,500人に対し行った「1分間タイムスタディー・データ」という研究データをもとに推測します。この研究をもとに、「介護にかかる手間」を数値化したものが要介護認定等基準時間になります。
(表2-1)要介護等認定基準時間の区分と、時間の表示範囲
行為区分 | 概要 | 時間の表示範囲 | |
---|---|---|---|
直接生活介助 | 食事 | 食事摂取、嚥下(えんげ)等 | 1.1〜71.4分 |
排泄 | 後始末、ズボン等の着脱等 | 0.2〜28.0分 | |
移動 | 日常生活における移動行為 | 0.4〜21.4分 | |
清潔保持 | 衣類の着脱、入浴、洗面等 | 1.2〜24.3分 | |
間接生活介助 | 洗濯、掃除等の家事援助等 | 0.4〜11.3分 | |
BPSD関連行為 | 徘徊(はいかい)に対する探索、不潔な行為に対する後始末等 | 5.8〜21.2分 | |
機能訓練関連行為 | 歩行訓練、日常生活訓練等の機能訓練 | 0.5〜15.4分 | |
医療関連行為 | 輸液の管理、じょくそうの処置等の診療の補助等 | 1.0〜37.2分 |
(表2-1)のように介護認定等基準時間は、日常生活における8つの生活場面ごとの行為(「食事」、「排泄」、「移動」、「清潔保持」、「間接生活介助」、「BPSD関連行為」、「機能訓練関連行為」、「医療関連行為」)の区分ごとの時間の合計と、さらに「認知症」の時間を加算して算出します。
具体的な時間の算出方法は、区分ごとに複数の質問が用意されており、それに回答することで、(表2-1)に示す「時間の表示範囲」内のいずれかの時間が必要であると判定されます。
(表2-2)1次判定における要介護区分と要介護等認定基準時間
介護認定 | 要介護等認定 基準時間 |
身体状態の目安 |
---|---|---|
自立 (非該当) |
25分未満 | 歩行や起き上がり等の日常生活上の基本的動作を自分で行うことが可能で、かつ、薬の内服、電話の利用などの動作を行う能力もある状態。 |
要支援1 | 25分以上 32分未満 |
食事や排泄などはほとんど1人でできるが、立ち上がりなど日常生活の一部に手助けが必要で、その軽減や悪化予防のために支援を要する状態。 |
要支援2 | 32分以上 50分未満 |
要支援1の状態から、日常生活動作を行う能力がわずかに低下し、なんらかの支援や部分的な介護が必要となる状態 |
要介護1 | 要支援2の状態から、日常生活動作を行う能力が一部低下し、日常生活を送るにはなんらかの介助が必要な状態 | |
要介護2 | 50分以上 70分未満 |
食事や排泄になんらかの介助が必要であり、立ち上がりや歩行などにも支えが必要。認知力や記憶力に衰えがみられることも。 |
要介護3 | 70分以上 90分未満 |
食事や排泄に一部介助が必要。立ち上がりなどが1人でできない。入浴や衣服着脱などの全面的な介助が必要。いくつかの問題行動や認知力・理解力の低下がみられることも。 |
要介護4 | 90分以上 110分未満 |
食事にときどき介助が必要で、排泄、入浴、衣服着脱に全面的介助が必要。介護なしで日常生活を送ることは困難。多くの問題行動や全般的な理解力の低下がみられることも。 |
要介護5 | 110分以上 | 食事や排泄などが1人でできないなど、介護なしで日常生活を送ることがほぼ不可能な状態。多くの問題行動や理解力の低下がみられることも。 |
総量の時間として、要介護認定等基準時間が算出されたら、(表2-2)の基準と照らし合わせて1次判定結果を出します。
(表2-2)において、要支援2と要介護1との境界がわかりにくいと思います。基準時間は同じですが、主治医の意見書を参考に、介護予防の効果がありそうかを加味して判別されます。具体的には、下記2つの要件のうち、いずれかに該当する場合は要介護1となります。
市区町村の付属機関である介護認定審査会での2次判定は、1次判定の結果に「主治医の意見書」と「認定調査の特記事項」を加味して行われます。
65歳未満の第2号被保険者が要介護認定を受けるには、16種類の特定疾病(とくていしっぺい)が原因で日常生活の自立が困難になっており、要介護・要支援状態が6か月以上にわたって続くことが予想される場合とされています。
「主治医の意見書の内容」や「認定調査票の特記事項」から基本調査項目の選択が適切に行われているかという、1次判定の確認作業を行い、結果を確定させます。
介護の手間の多少について議論し、「主治医の意見書」と「認定調査の特記事項」から介護の手間が特別に必要とされる場合にのみ1次判定を変更します。
介護認定の有効期間の設定を行います。このとき、「要介護状態の軽減または悪化の防止のために必要な療養についての意見」が付け加える場合があります。
市区町村は、申請日から原則30日以内に介護認定結果通知書を送付することになっています。認定には有効期限が設定されており、有効開始は申請日にさかのぼって設定されます。つまり申請後に利用した介護サービスも保険給付の対象になります。
要介護認定結果の内容に不服がある場合は、都道府県に設置されている「介護保険審査会」に審査請求を行うことができます。ただし、通知を受け取った翌日から起算して60日以内に請求を行う必要があります。
介護認定の結果には有効期限があり、期限が切れると介護保険が利用できなくなります。有効期限が終了する60日前から、更新の申請が可能となりますが、前述したように申請から結果通知まで最大30日かかることを踏まえると、有効期限の30日前までには更新の申請を行っておくのがよいでしょう。
なお、更新時の申請方法も、新規の申請とまったく同様の手続きが必要となります。
(表5-1)介護認定の有効期限
申請区分 | 原則の 有効期限 |
設定可能な 有効期限 |
|
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新規申請 | 6か月 | 3〜12か月 | |
区分変更申請 | 6か月 | 3〜12か月 | |
更新申請 | 「要支援 → 要支援」の更新 | 12か月 | 3〜48か月※ |
「要支援 → 要介護」の更新 | 12か月 | 3〜36か月 | |
「要介護 → 要支援」の更新 | 12か月 | 3〜36か月 | |
「要介護 → 要介護」の更新 | 12か月 | 3〜48か月※ |