更新日:2024年10月24日
犬のクッシング症候群とは、どのような傷病なのでしょうか?
症状や原因、治療法について見てみましょう。
この記事の監修者
獣医師
三宅 亜希
TRIPECT lab.代表、東京都獣医師会広報委員
TRIPECT lab.代表、東京都獣医師会広報委員
クッシング症候群とは、腎臓のそばにある副腎から分泌される「コルチゾール」というホルモンが出すぎて、体に悪影響を与えている状態をいいます。犬でよくみられるホルモン異常の病気ですが、症状が進行すると免疫力が低下し、皮膚炎や膀胱炎などにかかりやすくなったり、糖尿病などの病気を併発したりするので注意が必要です。
そもそも副腎は、脳下垂体から出るACTH(副腎皮質刺激ホルモン)というホルモンの影響により、「コルチゾール」を分泌させます。
そのため、脳下垂体に腫瘍ができてACTHが出すぎてしまうと、副腎もコルチゾールをたくさん分泌させてしまいます。
また、脳下垂体が正常であっても、副腎そのものに腫瘍ができることでも「コルチゾール」の分泌は過剰になります。
散歩に行きたがらず疲れやすくなるような症状や、抜け毛に関しては、「年を取ったせいだろうか」と思い見過ごしてしまうことも多いです。
脳下垂体に腫瘍ができているケースでは、神経症状(徘徊、夜鳴きなど)を併発することもあります。
また、皮膚が弱くなることでおなかの筋肉を支えられず膨れて目立つようになったり、皮膚感染のリスクが高まったりすることもあります。
病気が進行してくると、免疫力が低下し、皮膚炎や膀胱炎などの感染症にかかりやすくなります。
また、糖尿病を併発することもあり、治療が遅れ病状が悪化した場合、命に関わる可能性があります。
クッシング症候群の特徴的な「水をよく飲み尿も増える=多飲多尿」は、糖尿病、子宮蓄膿症、腎臓病などでもみられる症状です。
クッシング症候群の原因は大きく分けて2つあります。
9割は、脳下垂体の腫瘍によるものだといわれています。
なお、長期間グルココルチコイド製剤(ステロイド)を使用することで、クッシング症候群と同じ症状が起こることがあります。これを医原性クッシング症候群といいます。
クッシング症候群にかかりやすい犬種はとくにありません。
すべての犬種でかかる可能性があり、とくに高齢の犬がかかりやすい病気です。
クッシング症候群の可能性が疑われた場合、血液検査でコルチゾール値を測定します。
診断には、単純な測定のほかに、ACTH(副腎皮質刺激ホルモン)を注射してコルチゾールの数値がどう変化するかが重要になるため、数回の採血が必要です。
また、超音波検査で副腎に腫瘍ができているか、CTやMRI検査で脳下垂体に腫瘍があるかを調べます。
治療方法は、原因が脳下垂体にあるか副腎にあるかで異なります。
投薬
腫瘍が小さいときは、内服薬で副腎から分泌されるコルチゾールを抑えます。
根本的に治癒する治療ではないため、生涯薬を飲み続ける必要があります。
外科手術
腫瘍が大きいときは、内服薬での治療のほかに、放射線治療や外科手術による摘出が選択されることもあります。
ただし、脳下垂体の手術は難しく、手術を受けられる病院は限られています。
外科手術
外科手術による副腎摘出が第一選択になります。
ほかの臓器に転移している場合は、手術ができない場合があります。
クッシング症候群にかかってしまった場合、どのくらいの治療費がかかるのでしょうか?
保険会社の保険金請求データをもとにした治療費の例を見てみましょう。
犬種:ポメラニアン
| 診療明細例 | |
|---|---|
| 診療項目(内容) | 金額(円) |
| 診察料 | 1,000円 |
| 血液検査 | 10,000円 |
| 超音波検査 | 3,500円 |
| 内服薬 | 3,000円 |
| 合計 | 17,500円 |
残念ながら、腫瘍性疾患なので効果的な予防法はありません。クッシング症候群かもしれない症状がみられたら早めに病院に行くようにしましょう。
多飲多尿、皮膚トラブル、腹部膨満など、クッシング症候群の特徴的な症状が見られるかを確認します。
また、一般的な血液検査や尿検査の結果から、クッシング症候群特有の変化があるかを調べます。
具体的には、赤血球の増加や、白血球のストレスパターン、血液中の肝酵素の上昇、高脂血症、尿比重の低下の有無などを確認します。
なお、白血球のストレスパターンとは、血中のコルチゾール増加によって起こる変動で、リンパ球減少、単球増加、好中球増加などを確認できます。
これらの結果からクッシング症候群が疑われる場合は、続いて、ホルモンを注射した後の血中のコルチゾール値を計測する内分泌学的検査や、副腎のサイズ(肥大しているか、片側か両側かなど)を確認するための超音波検査などを実施します。
そのほか、クッシング症候群の主な原因である、下垂体腫瘍の有無を確認するためには、一般的に全身麻酔が必要なCT検査、MRI検査に加えて、白血球のストレスパターンを調べます。