更新日:2024年1月31日
犬にしこりができる原因にはどのようなものがあるのでしょうか?
また、しこりができる原因として考えられる病気や対処法について見てみましょう。
この記事の監修者
獣医師
三宅 亜希
TRIPECT lab.代表、東京都獣医師会広報委員
TRIPECT lab.代表、東京都獣医師会広報委員
基本的に、しこり=できもの がある場合、それは腫瘍をさします。
腫瘍には悪さをしない良性のものもたくさん存在するので、しこりを見つけたからといって「悪性の腫瘍(がん)」とはかぎりませんが、早期に正しい検査を行うことが大切です。
疾患以外のものはなし
病気以外で皮膚にしこりができることは厳密にはありません。それが良性で悪さをしないイボであっても病名があるからです。
ちなみに、長毛種(ポメラニアン、トイプードルなど)の、とくに耳のあたりにできた毛玉をしこりと勘違いしてしまうことがあります。
以下の病気などにより、しこりが生じることがあります。
乳腺腫瘍
乳腺にできる腫瘍で、避妊手術をしていないメスでよく見られる腫瘍のひとつです。
多くは10歳くらいでみられますが、若いうちに発生することもあり、まれではありますが、オスに発生することもあります。
約5割が良性であることがわかっていますが、悪性の場合は、リンパ節や肺への転移が最も多く、肝臓、腎臓、脾臓などへの転移もありえます。
皮膚の腫瘍
皮膚にしこりが触れる腫瘍はたくさん存在します。
その中でよく見られたり、重要であったりする腫瘍を以下に記載します。
@ 脂肪腫
脂肪細胞が原因の良性腫瘍で、中齢以降でみられることが多いです。単発でできることが多いですが、同時に複数個できることもあります。
皮膚などにできた小さな脂肪腫は、命に関わるような症状がでることはありません。
A 肥満細胞腫
肥満細胞が原因の悪性腫瘍です。犬では皮膚にできることが一般的で、ほかの臓器などに最初に発症することはほとんどありません。
犬に発生する、皮膚の腫瘍の中で一番発生率が高いのが肥満細胞腫であり、悪性度の低いものから高いものまでさまざまです。
B 組織球系腫瘍
若齢で発症することが多い良性の組織球系腫瘍と、中齢以降で発症することが多い悪性の組織球系腫瘍があります。
悪性の場合、進行が早いことが知られています。
C 皮膚型リンパ腫
皮膚に生じるタイプのリンパ腫で、中〜高齢で発生する悪性腫瘍です。
単発で腫瘍が生じたり、多発したりする場合もあります。
D 皮脂腺の腫瘍
皮脂腺の腫瘍は、腺腫様過形成、皮脂腺腫、皮脂腺癌の3つに分類されています。
すべて高齢で発生しやすく、発生部位として多いのは頭部です。
そのほか
炎症、外傷、感染などによる皮膚の病気でも病変部がしこりのようになることがあります。
一般的に皮膚にしこりが触れる場合、腫瘍を疑い検査をすることになります。
良性か悪性かは見た目だけでは判断できないので、しこりが小さい、犬が気にしていない、大きくなる様子がない、という場合でも、必ず病院に行って検査をしてもらいましょう。確定診断をするには、腫瘍を切除して病理検査をする必要があります。
また、細い注射針でしこりの細胞を少量採取し検査することで、ある程度どんな腫瘍かわかることもあるので、まずは、かかりつけ医にどんな検査が可能であるか相談しましょう。「ひとまず様子を見ておこう」と放っておいたことで、腫瘍が大きくなり完全に切除できなくなることもあるので、早めに病院に行き検査することが大切です。