更新日:2025年10月23日
個人年金保険料控除を受けた場合、税金がいくら戻ってくるか知っていますか?
この記事では、年末調整で個人年金保険料控除を受けられる条件や控除額の上限、還付金額のほか、申請書の書き方や申告時の注意点を説明します。

この記事の監修者

ファイナンシャル・プランナー、青山学院大学非常勤講師
CFP®資格、1級ファイナンシャル・プランニング技能士
松浦 建二
1990年青山学院大学卒。大手住宅メーカーから外資系生命保険会社に転職。その後、コンサルティング会社設立に参加。 2002年からファイナンシャルプランナーとして主に個人のライフプラン、生命保険見直し、住宅購入サポート等の相談業務を行っている他、ファイナンシャルプランニングに関する講演や執筆等を行っている。
1990年青山学院大学卒。大手住宅メーカーから外資系生命保険会社に転職。その後、コンサルティング会社設立に参加。 2002年からファイナンシャルプランナーとして主に個人のライフプラン、生命保険見直し、住宅購入サポート等の相談業務を行っている他、ファイナンシャルプランニングに関する講演や執筆等を行っている。
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個人年金保険料控除とは、生命保険料控除の一つで、1年間に支払った保険料に応じて所得金額から一定額が差し引かれる税制優遇制度です。
また、個人年金保険料控除には新制度と旧制度があり、保険の契約日によって分けられています。
具体的には、2012年(平成24年)1月1日以降の契約は新制度、2011年(平成23年)12月31日までに結んだ保険契約は旧制度で、控除額の上限などが異なります。
控除限度額や計算方法は、「個人年金保険料控除限度額の計算方法」で詳しく説明します。
そもそも個人年金保険とは、一定額の年金を毎年受け取れる貯蓄型の保険で、公的年金の補てんを目的に加入する場合が多いです。
まだ加入していない場合は、老後の資金を効率的に準備する手段の一つとして、個人年金保険の加入を検討してみるとよいでしょう。
すべての個人年金保険が、個人年金保険料控除の対象となるわけではなく、控除を受けるには、個人年金保険料税制適格特約を付加しなければなりません。
さらに、個人年金保険料税制適格特約を付加するには、以下4つの要件をすべて満たす必要があります。
なお、運用実績で年金額などが変動する変額個人年金保険は、一般の生命保険料控除の対象となります。
また、外貨建て個人年金保険は、個人年金保険料税制適格特約を付加することで、個人年金保険料控除の対象になる場合もあります。
「個人年金保険料税制適格特約」とは?
個人年金保険料税制適格特約(以下、税制適格特約)とは、個人年金保険料控除を受けるために個人年金保険に付加する特約のことです。
そのため、税制適格特約を付加していない場合は、一般の生命保険料控除の対象となります。
個人年金保険料控除は、個人年金保険の契約日によって新制度と旧制度に分けられます。
契約日が2012年(平成24年)1月1日以降の場合は新制度、2011年(平成23年)12月31日以前は旧制度となり、控除額の計算方法と控除限度額は、下記の表1〜4のとおりです。
具体的に、新制度の控除額の上限は所得税が4万円、住民税が2.8万円で、旧制度の場合は、所得税が5万円、住民税が3.5万円となります。
表1 新制度の個人年金保険料控除額(所得税)の計算方法
| 所得税 | |
|---|---|
| 年間払込保険料額 | 控除される金額 |
| 20,000円以下 | 払込保険料全額 |
| 20,000円超 40,000円以下 |
(払込保険料×1/2)+ 10,000円 |
| 40,000円超 80,000円以下 |
(払込保険料×1/4)+ 20,000円 |
| 80,000円超 | 40,000円 |
表2 新制度の個人年金保険料控除(住民税)の計算方法
| 住民税 | |
|---|---|
| 年間払込保険料額 | 控除される金額 |
| 12,000円以下 | 払込保険料全額 |
| 12,000円超 32,000円以下 |
(払込保険料×1/2)+ 6,000円 |
| 32,000円超 56,000円以下 |
(払込保険料×1/4)+ 14,000円 |
| 56,000円超 | 28,000円 |
表3 旧制度の個人年金保険料控除額(所得税)の計算方法
| 所得税 | |
|---|---|
| 年間払込保険料額 | 控除される金額 |
| 25,000円以下 | 払込保険料全額 |
| 25,000円超 50,000円以下 |
(払込保険料×1/2)+ 12,500円 |
| 50,000円超 100,000円以下 |
(払込保険料×1/4)+ 25,000円 |
| 100,000円超 | 50,000円 |
表4 旧制度の個人年金保険料控除額(住民税)の計算方法
| 住民税 | |
|---|---|
| 年間払込保険料額 | 控除される金額 |
| 15,000円以下 | 払込保険料全額 |
| 15,000円超 40,000円以下 |
(払込保険料×1/2)+ 7,500円 |
| 40,000円超 70,000円以下 |
(払込保険料×1/4)+ 17,500円 |
| 70,000円超 | 35,000円 |
新制度と旧制度、それぞれに該当する契約がある場合の計算方法
新制度と旧制度の契約がある場合は、新制度の契約のみを申告、旧制度の契約のみを申告、新制度と旧制度を合算して申告、と3つの方法から選択できます。その際、控除額が最大になる方法を選びましょう。
この場合、所得税の控除額に関しては、旧制度の契約の年間払込保険料が6万円を超えるかどうかが、申告方法を選ぶときの目安になります。6万円を超える場合は旧制度の契約のみを申告し、反対に6万円を下回る場合は、新制度と旧制度を合算して申告することで控除額が最大になります。
申告する際は、年間払込保険料と控除額を確認したうえで、最適な申告方法を選択してください。
控除額の計算方法がわかったところで、年収500万円の30歳男性(会社員・扶養家族なし)を例に、年間払込保険料12万円(月額1万円)で個人年金保険料控除を受けた場合、税金がいくら戻るのか見ていきましょう。
年間支払保険料12万円に対して、所得税の控除額は4万円、住民税の控除額は2.8万円となります。
また、給与所得控除や個人年金保険料控除などの各種控除を適用し、課税所得が232万円になると仮定します。
所得税率は課税所得金額によって異なり、今回の例では課税所得が232万円のため、下記の表5から所得税率は10%となります。住民税は課税所得金額に関係なく、一律10%です。
表5 所得税の速算表
| 課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 195万円未満 | 5% | 0円 |
| 195万円以上 330万円未満 |
10% | 97,500円 |
| 330万円以上 695万円未満 |
20% | 427,500円 |
| 695万円以上 900万円未満 |
23% | 636,000円 |
| 900万円以上 1,800万円未満 |
33% | 1,536,000円 |
| 1,800万円以上 4,000万円未満 |
40% | 2,796,000円 |
| 4,000万円以上 | 45% | 4,796,000円 |
以上のことから、所得税の控除額4万円に10%の所得税率を適用し、所得税が4,000円軽減されます。住民税も、控除額2.8万円に一律の10%を適用し、2,800円軽減されます。
よって、合計6,800円の減税が見込まれます。
このように、個人年金保険料控除を活用することで、毎年一定の節税効果を期待できます。
なお、累進課税制度によって、所得が高いほど所得税率も上がるため、節税効果も大きくなります。
給与所得者は一般的に、年末調整で個人年金保険料控除を申告します。
ここからは、年末調整での申告の流れ、保険料控除申告書の書き方などを説明します。
個人年金保険料控除の申告に必要な生命保険料控除証明書は、10月ごろに加入している保険会社から届きます。保険会社によっては、電子データ(電子的控除証明書)で取得できる場合もあります。
また、個人年金保険料税制適格特約を付加している場合、個人年金保険料控除証明書の名目で証明書が発行されることもあるため、よく確認してください。
届いた保険料控除証明書は、勤務先で配布される「給与所得者の保険料控除申告書」とあわせて提出します。勤務先が電子化対応をしている場合、電子データでの提出が可能です。
もしも、保険料控除証明書を紛失した場合は、保険会社に問い合わせて再発行の手続きを行ってください。保険会社によっては、専用サイトから再発行依頼が可能な場合もあります。
「給与所得者の保険料控除申告書」にある個人年金保険料控除の書き方を、下記図6の記入見本、記入方法とともに説明します。
個人年金保険料控除の記入方法
以下@〜Fの項目は、手元にある生命保険料控除証明書の記載内容を正しく転記してください。
年末調整での申告が間に合わなかった場合は、2026年(令和8年)2月16日(月)から同年3月16日(月)の間に、自身で確定申告をすることで還付を受けられます。
そのほか、自営業者やフリーランス、副業所得が年間20万円以上ある場合なども、確定申告をする必要があります。
また、年末調整を忘れてしまった場合でも、5年以内に確定申告を行うことで控除が適用されます。
年末調整が可能な場合は確定申告を行う必要がないため、年末調整で必要な控除を受けられるよう、申告方法や申告書の書き方を事前に確認しておくとよいでしょう。
個人年金保険は年金受取時に税金がかかるため、加入の際には、税制の仕組みについて知っておく必要があります。
ここでは、その注意すべきポイントを説明します。
契約者(保険料負担者)と年金の受取人が同一人かどうかで、年金を受け取る際にかかる税金が異なります。
契約者と受取人が同一の場合
所得税がかかる
契約者と受取人が異なる場合
年金受取開始年は贈与税、2年目以降は所得税がかかる
上記のように、契約者と年金受取人が同一人の場合は、毎年受け取る年金に所得税がかかります。
一方、年金受取人が契約者の配偶者など、契約者と異なる場合、2年目以降は所得税がかかります。その際、2年目以降は配偶者の所得として加算されます。
これによって、配偶者の合計所得金額が58万円(給与収入のみの場合は年収123万円超)を超えると配偶者控除を受けられなくなります。
ただし、合計所得金額が133万円以下(給与収入のみの場合は年収201万6千円未満)であれば、配偶者特別控除が適用されることもあります。
このように、控除の種類が変わる場合や、控除を受けられない可能性もあるため、年金を受け取る前に確認しておくとよいでしょう。