更新日:2022年6月9日
がん保険を調べていると「上皮内新生物(上皮内がん)」という言葉をよく目にしますが、実は「がん」には悪性新生物(がん)と上皮内新生物(上皮内がん)の2種類があります。その違いや、がん保険における保障内容の違いについて、注意点にも触れながら詳しく解説します。
上皮内新生物(上皮内がん)とは、がん細胞が「上皮」と呼ばれる場所の内側にとどまっているものを指します。上皮とは、胃や腸などの臓器の粘膜や皮膚をおおっている表面の浅い部分のことです。上皮より深い部分には「基底膜(きていまく)」と呼ばれる膜があり、さらにその奥には皮下組織や粘膜下組織と呼ばれる場所があります。
上皮にとどまっていたがん細胞が悪性化し、基底膜を破って浸潤(しんじゅん)※すると、一般的な悪性新生物(がん)になります。つまり、上皮内新生物(上皮内がん)は悪性新生物(がん)になる手前の状態であり、一般的な悪性新生物(がん)とは区別されます。(参考資料:厚生労働省委託事業 がん対策推進企業アクション「がん対策のニュースレター」)
上皮内新生物(上皮内がん)と悪性新生物(がん)の大きな違いは、「転移」の有無です。転移とは、がん細胞が最初に発生した場所から血管やリンパ管に入り込み、血液やリンパ液に乗って別の臓器などに移動してそこで増えることをいいます。
上皮内新生物(上皮内がん)は上皮内にとどまっていて血管やリンパ管のある深い部分まで浸潤していないため、転移の可能性がありません。上皮内新生物(上皮内がん)の段階で発見できれば、基本的には皮膚や粘膜の表面を浅く削る手術で取ることができます。病変を完全に取りきってしまえば完治するといってもよく、再発の可能性はありません。そのため、治療費がそれほどかからないといわれています。
一方、悪性新生物(がん)は血管やリンパ管のある深い部分まで浸潤しているため、転移の可能性があります。転移している可能性の部分も含めて取りきることが必要となるため、上皮内新生物(上皮内がん)に比べて治療が大がかりになります。また、治療がうまくいったようにみえても、治療で取りきれなかった小さな悪性新生物(がん)が再び大きくなったり、別の場所に同じ悪性新生物(がん)が出現したりするなど、再発の可能性もあります。
それでは、実際にがんと診断された人のうち、どのくらいの人が上皮内新生物(上皮内がん)と診断されているのでしょうか。厚生労働省の「全国がん登録2018」を基に、診断割合をみてみましょう。
上皮内新生物(上皮内がん)と診断された割合は、全部位では10.7%となっています。それに対して悪性新生物(がん)の診断割合は80.2%です。男女ともに罹患数の多い大腸がんや、女性に多い乳がんも、悪性新生物(がん)の診断割合が高くなっています。そのため「がん」を不安に感じる人は、まず悪性新生物(がん)に対する備えをしっかりと準備しておくことが大切です。
部位 | 集計対象数 | 上皮内がん | 限局 | リンパ節転移 | 隣接臓器浸潤 | 遠隔転移 | 不明 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
全部位 | 1,059,130人 | 10.7% | 43.1% | 8.4% | 12.1% | 16.5% | 9.1% |
食道 | 28,393人 | 9.5% | 38.7% | 7.6% | 22.7% | 14.8% | 6.7% |
大腸 (結腸・直腸) | 191,208人 | 21.7% | 36.7% | 13.1% | 8.5% | 14.4% | 5.6% |
結腸 | 129,425人 | 23.3% | 36.0% | 12.0% | 8.8% | 14.4% | 5.4% |
直腸 | 61,783人 | 18.4% | 38.1% | 15.4% | 7.7% | 14.3% | 6.0% |
肺 | 121,911人 | 2.3% | 33.3% | 8.9% | 9.9% | 36.1% | 9.6% |
皮膚 | 30,248人 | 20.3% | 66.8% | 1.0% | 5.7% | 0.9% | 5.2% |
乳房 | 105,556人 | 11.1% | 52.5% | 18.6% | 3.6% | 5.6% | 8.6% |
子宮 | 52,054人 | 45.0% | 30.4% | 2.2% | 12.2% | 5.3% | 4.9% |
子宮頸部 | 34,712人 | 67.4% | 12.6% | 1.5% | 11.3% | 3.3% | 3.8% |
膀胱 | 42,721人 | 45.5% | 35.9% | 1.1% | 6.2% | 2.7% | 8.5% |
上記を基に、各部位の上皮内新生物(上皮内がん)と悪性新生物(がん)の割合分布をグラフにしました。悪性新生物(がん)は、限局・所属リンパ節転移・隣接臓器浸潤・遠隔転移を統合した割合です。
もちろん、全体の約10%を占める上皮内新生物(上皮内がん)の存在も無視はできません。膀胱や子宮、子宮頸部といった部位は、およそ半分の人が上皮内新生物(上皮内がん)と診断されています。子宮がんや子宮頸がんが心配という女性は特に、悪性新生物(がん)とあわせて上皮内新生物(上皮内がん)にも備えておくと安心です。
今人気のがん保険がわかる!
悪性新生物(がん)と上皮内新生物(上皮内がん)の違いがわかったら、次はがん保険で上皮内新生物(上皮内がん)がどのように扱われるのかに注目してみましょう。
上皮内新生物(上皮内がん)の保障内容は保険商品によってさまざまです。そのため、がん保険を検討する際には保障内容をしっかりと確認する必要があります。保障内容は大きく分けると「保障対象外」「一部保障」「同等保障」の3タイプです。それぞれの特徴や注意点をご紹介します。
上皮内新生物(上皮内がん)は保障の対象外となるがん保険です。
このタイプのがん保険は、「保障の対象外だと知らなかった!」とならないように気を付けることが大切です。上皮内新生物(上皮内がん)が保障対象となるかどうか、必ず確認してから加入するようにしましょう。
これは、上皮内新生物(上皮内がん)でも保障はされるものの、悪性新生物(がん)と比べて保障金額が少なくなっていたり、支払い条件が厳しくなっていたりするタイプのがん保険です。
特に気にかけておきたいのは診断給付金の保障内容です。上皮内新生物(上皮内がん)と悪性新生物(がん)の保障が同額のものもあれば、上皮内新生物(上皮内がん)の場合には半額となるものもあります。また、診断給付金の支払い回数が1回だけに限定されているものもあります。
<悪性新生物(がん)と上皮内新生物(上皮内がん)で異なる保障内容のイメージ例>
保障種類 | 悪性新生物(がん)の場合 | 上皮内新生物(上皮内がん)の場合 |
---|---|---|
診断給付金 | 100万円 | 50万円 |
診断給付金の支払い回数 | 2年に1回(回数無制限) | 初回のみ |
上皮内新生物(上皮内がん)と診断された場合でも、悪性新生物(がん)と同等に保障されるがん保険もあります。保障内容に差がないので商品内容が理解しやすく、もしものときには悪性新生物(がん)と同様に手厚く保障される点が魅力です。上皮内新生物(上皮内がん)になる可能性が比較的高いと予想される女性の場合は特に、このタイプのがん保険を選んでおくと安心でしょう。
がん保険は商品によって保障内容が大きく異なります。上皮内新生物(上皮内がん)の保障内容を確認することも大切ですが、それだけではなく、以下の項目など、ほかの保障内容もしっかり確認したうえで総合的に判断することが大切です。
がん保険を検討するうえで確認したいこと
がん保険選びは総合的に判断することが大切です
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上皮内新生物(上皮内がん)は「がん」という名前が含まれているものの、悪性新生物(がん)とは区別されます。がん保険においても、保障の対象外であったり保障内容が限定されていたり、扱いが異なります。そのためがん保険を選ぶ際には、上皮内新生物(上皮内がん)の保障内容を忘れずに確認することが重要です。
必ずしも上皮内新生物(上皮内がん)の保障内容が悪性新生物(がん)と同等であることにこだわる必要はありません。なぜなら、上皮内新生物(上皮内がん)は転移することがほとんどなく、病変を取り除けば完治する可能性が高い病気だからです。悪性新生物(がん)と比べると、経済的負担が少なくて済む可能性が高いため、保障が多少手薄でも、ある程度の貯蓄があれば金銭的に困ることはあまりないといえるでしょう。
がん保険は商品によって保障内容の種類が豊富で、どの保険が割安・割高なのかを判断することは簡単ではありません。保険は保障が手厚くなるほど保険料も高くなるのが基本です。まずは自分が何に備えたいのかを考え、商品それぞれの保障内容や保険料を比較しながら「自分に最適ながん保険」を選びましょう。
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上皮内新生物(上皮内がん)とは、がん細胞が「上皮」と呼ばれる場所の内側にとどまっているもので、基本的には転移や再発がなく、手術で完治する可能性が高い病気です。がん保険での扱いは「保障対象外」「一部保障」「同等保障」の3タイプがあるので、経済的負担が少ないことを考慮しつつ、保障内容や保険料を比較検討して総合的に判断しましょう。