更新日:2022年10月27日
がんの治療法としてあげられる「三大療法」。そのなかの1つである化学療法といわれる抗がん剤治療についてご説明します。治療が長期に及ぶこともあり注意が必要です。
この記事の執筆者
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
中里 邦宏
CFP(R)/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/日本証券アナリスト協会検定会員/FP提案書工房/マネーディアセオリー株式会社 取締役副社長
CFP(R)/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/日本証券アナリスト協会検定会員/FP提案書工房/マネーディアセオリー株式会社 取締役副社長
がん細胞の増殖を抑えたり破壊したりすることを目的に、抗がん剤を点滴や注射または内服により投与するがんの治療法が抗がん剤治療です。抗がん剤治療を単独で行う場合もあれば、がんを小さくするために手術の前に抗がん剤治療を行うこともあります。また、手術後に目に見えないレベルのがん細胞が残っている可能性がある場合に、再発や転移の確率を下げるために用いられることもあります。
抗がん剤の種類や投与する期間は、がんの種類や進行度、患者の年齢や身体状況などに応じて、現時点で最善とされる「標準治療」をベースに医者と話し合って決めます。
治療には、抗がん剤を投与する期間と休薬期間があり、これらを合わせて1クールとして、計画した回数を繰り返していきます。
たとえば1クール4週間の治療を6クール実施する場合は、24週、つまり約5カ月半かかります。
ただ、抗がん剤には副作用があります。抗がん剤は、細胞分裂の速いがん細胞を死滅させるように作られていますが、同時に細胞分裂が活発な毛根などの正常細胞もダメージを受けます。
その影響で、髪の毛などの全身の毛の脱毛や、白血球数の減少などの副作用が生じます。
なお、抗がん剤の種類により副作用は多岐にわたり個人差もあるため、治療効果と副作用のつらさとの相関はないようです。
抗がん剤治療のほか、薬を投与する治療法には、ホルモン療法(内分泌療法)があります。
がん細胞がある種のホルモンに感受性を持っていると、体内にあるホルモンががん細胞の増殖を促進させてしまいます。そこで、そのホルモンの分泌を止める薬や、そのホルモンと反対の作用をするホルモンを投与することにより、がん細胞の増殖や活動自体を抑えるのがホルモン療法です。ホルモン療法の対象となり得る主ながんは、乳がん、子宮体がん、前立腺がん、甲状腺がんなどです。がん細胞そのものを攻撃して殺す治療ではないため、手術や抗がん剤などと組み合わせるのが一般的です。
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ところで抗がん剤の治療費は、抗がん剤の種類と投与量で決まります。投与量は、患者の身体の大きさ(身長と体重から計算する体表面積)あるいは体重から計算されます。
抗がん剤治療の治療費は高額になりがちです。医療費の目安として、公的健康保険で使える「高額療養費制度」の自己負担限度額を把握しておくとよいでしょう。
これは、ひと月(1日から月末まで)の病院での支払額が一定の金額(自己負担限度額)を超えた場合に、保険者(加入中の健保や国保)に申請することで、超えた分が払い戻される制度です。
自己負担限度額を超える可能性がある場合には、あらかじめ保険者に「限度額適用認定証」を申請しておき病院の窓口で提示すれば、窓口での支払いがひと月の自己負担限度額までですみます。
たとえば、ある月の総医療費が100万円(実質自己負担3割の30万円)だった場合の自己負担限度額は以下のように計算します。
高額療養費の自己負担限度額シミュレーション、及び計算方法の詳細は「高額療養費の自己負担限度額」をご覧ください。
ただし、限度額適用認定証を提示しても、高額療養費の請求が別途必要になる場合があります。複数の病院にかかっている場合は、病院ごとに窓口で自己負担限度額まで支払うことになるからです。同じ病院でも、医科と歯科および入院と通院は、それぞれ別となります。なお、高額療養費として合算できるのは、1つの窓口でひと月に21,000円以上の自己負担額があったもののみ(70歳以上は全部)です。
医療用カツラや入院時の差額ベッド代(※1)などは健康保険適用外の費用ですから、限度額適用認定証の有無にかかわらず全額自己負担になりますので注意が必要です。
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近年、抗がん剤治療は、外来(通院)での治療が中心になってきています。従来と比べて副作用の少ない抗がん剤が開発され、副作用を抑える治療法も発展してきたからです。
厚生労働省のがん治療のデータでも、外来が大きく増え、入院が減っている傾向が見て取れます【図表2】。
このように、現在のがん治療が外来中心にシフトしてきているにもかかわらず、入院治療が中心であった頃に作られた「がん保険」は入院給付金が保障の中心となっているものが少なくありません。そして「通院保障特約」についても、入院給付金の支払い要件を満たした後の通院でなければ給付されないものが多くなっています。
そのため、外来での抗がん剤のみの治療や、入院を伴わない日帰り手術後の抗がん剤治療では、給付金が受け取れないケースも考えられます。
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このような入院から外来治療への流れを受け、がん保険で「抗がん剤治療特約」をオプションとして選べる商品が増えてきました。
この特約では、保険会社所定の抗がん剤治療を受けた場合に、5万円や10万円などの給付金が月ごとに支払われます。そのため、抗がん剤の外来治療が長期化した場合にも備えられます。なお、商品によっては通算給付金額や支払限度日数が定められているものもあります。
もうひとつ確認したいのが「ホルモン療法」が保障の対象かどうかです。商品により異なりますのでしっかり確認しましょう。ちなみに、ホルモン療法の治療費は、抗がん剤治療よりも相対的に安い傾向がありますが、5年など長期にわたることが多いようです。そのため、保障対象であったとしても給付金額を抗がん剤の場合の半分などにしている商品もあります。
そして注意しておきたいのが、がん保険の保険期間が終身にもかかわらず、この特約の保険期間が10年の場合です。当初の特約保険料は低く抑えられていますが、更新後はそのときの年齢と保険料率に応じた保険料となるため、アップする可能性があります。
なお、最近では、抗がん剤治療と放射線治療に特化するために、これらの保障を主契約にした保険も登場してきています。
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ところで抗がん剤のなかには、外国では承認されていても、日本では未承認のものもあります。日本で未承認であれば健康保険の適用外となるため、全額が自己負担の自由診療(※2)扱いになります。当然、高額療養費の適用もありません。
自由診療への備えは、がんと診断された場合に一時金が支払われる「がん診断給付金(主契約または特約)」などに余裕を持った保障を付けることである程度可能です。ただし、保障の充実は保険料の上昇に繋がり家計を圧迫しますのでよく考える必要があります。
がんの治療にあたり、お金ですべてを解決できるわけではありませんが、備えがあることで、治療の選択肢を広げたり、家族の負担を和らげたりできるのも事実です。
がんの治療法は年々進歩しています。
現在加入中の保険商品は、医療技術の進歩に対応しているかどうかをまずは確認しておきましょう。 そしてこの機会に保障内容を再確認しつつ、最近のがん保険商品(※3)を見比べてみてはいかがでしょうか。迷ったときには、どのような治療法を望むのかを念頭に、保障内容と保険料とのバランスを考えると良いでしょう。
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