更新日:2021年8月2日
自由診療とはなんでしょうか? 一般的に保険証を提示すれば医療費の自己負担は3割ほどで収まりますが、実は保険診療にかぎられています。自由診療の特徴と先進医療との違いを知っておきましょう。
この記事の監修者
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
松浦 建二
1990年青山学院大学卒。外資系生命保険会社でコンサルティングの経験を積んだのち、2002年からファイナンシャルプランナーとして主に保険の相談や執筆、講演活動などで活躍中。CFP(R)/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/FPオフィス ワーク・ワークス代表。
1990年青山学院大学卒。外資系生命保険会社でコンサルティングの経験を積んだのち、2002年からファイナンシャルプランナーとして主に保険の相談や執筆、講演活動などで活躍中。CFP(R)/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/FPオフィス ワーク・ワークス代表。
自由診療とは、公的な医療保険が適用されない医療技術や薬剤による治療のことです。
治療にかかる費用はすべて患者負担(10割負担)となります。
自由診療となる治療は数多くあり、下記にいくつか例をあげてみました。
自由診療を利用するメリットは、治療の選択肢が増え、自分の体質や病気にあった治療を制限なく受けられるということです。
また、「日本では未承認だが海外では承認済み」のような最先端治療を受けることもできるのです。
反対に自由診療のデメリットとしては、やはり医療費が高額になってしまうことでしょう。公的医療保険の適用にならないため、かかった医療費をすべて患者が負担することになります。
そのほかに、日本で未承認な治療なので、不測の事態が起きないともかぎりません。
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保険診療とは、国民健康保険法や健康保険法などにより定められている診療をいいます。日頃、私たちが医療機関で受けている治療のことです。
それぞれの病気に対して治療内容が決まっており、診療報酬点数が定められています。つまり、日本のどこの医療機関に行っても同じ金額で同じ治療を受けることができるのです。
また、保険証を提出することで患者の自己負担は原則3割(年齢、所得により異なる)になります。
そのうえ、1か月の医療費が高額になり定められた上限額を超えた場合、高額療養費を利用すれば、超えた分の払い戻しを受けられます。高額療養費のシミュレーションをしたい人は、高額療養費の計算ページをご覧ください。
公的医療保険適用の自己負担の割合は、小学校就学前の乳幼児は2割、一定以上所得者でない70歳以上の高齢者は1〜2割ですね
一方、自由診療は、公的医療保険を使用せずに治療を受けるため、全額が患者負担になります。
自由診療を取り入れるだけで、本来、公的医療保険の適用だった治療もすべてが自己負担になってしまいます。そのため、患者の経済的負担はかなり大きいといえるでしょう。
また、医療機関は自由診療の金額を自由に決めていいことになっています。患者と医療機関のあいだで個別に契約されるものなので、治療の内容や費用の制限がありません。
がんに有効な新しい治療法が世界中で開発されるなかで、国内未承認の抗がん剤などによる治療は健康保険が適用されず、「自由診療」で受けることになります。
診療の種類 | 説明・特徴 | 治療費 |
---|---|---|
保険 診療 |
国民健康保険法や健康保険法などにより定められている診療 一般的に医療機関で受けている治療のこと |
医療費のうち、通常、7割を国民健康保険や健康保険組合などが負担し、残りの3割を患者が自己負担(一部負担金)になる |
自由 診療 |
健康保険等を使用せずに治療を受けること 国内未承認の抗がん剤などによる治療は、健康保険などが適用されず、先進医療にも該当しないため、「自由診療」で受けることになる※ |
医療費が全額自己負担になる(本来、健康保険などが適用される治療を含む) |
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次の図の水色の部分が患者負担です。
保険診療であれば患者負担は3割で済みますが、自由診療では全額(10割)が患者負担となります。先進医療では、保険が適用できる部分は3割負担ですが、先進医療部分は全額が患者負担となります。
公的医療保険が適用になり、健康保険組合などが医療費の7割を負担します。そのため、患者の負担は3割になります。
たとえば、35歳男性が1か月に200万円の治療費がかかったとします。この場合、3割の60万円を医療機関の窓口で支払います。後日、高額療養費を利用すると、約50万円の払い戻しを受けられます。
つまり、この人が実質負担する金額は、約10万円程度に収まります。
公的医療保険が全体的に適用されないため、かかった治療費の全額(10割)が患者負担になります。
たとえば、35歳男性が1か月に200万円の治療費がかかり、このうち100万円が自由診療だとします。この人が負担する金額は、200万円です。
「先進医療」とは、厚生労働大臣によって定められた高度な医療技術を使った治療のことです。医療技術ごとに設定されている一定の施設基準に該当する医療機関においてのみ、通常の保険診療と先進医療の併用が認められています。
したがって、医療費のうち公的医療保険が適用される治療部分は、健康保険組合などが7割を負担し患者負担は3割になります。先進医療部分にかぎり、全額(10割)が患者負担になります。
たとえば、35歳男性が1か月に200万円の治療費がかかり、このうち100万円が先進医療だとします。この場合、公的医療保険適用部分の100万円は30万円(3割負担)にできるので、先進医療と合計すると、医療機関の窓口で支払う金額は130万円です。後日、高額療養費を利用すると、公的医療保険適用部分は、約21万円の払い戻しを受けられます。
つまり、この人が実質負担する金額は、先進医療と合計し約109万円になります。
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がん治療においては数多くの新たな治療方法が開発されており、最先端の治療を自由診療で受けることが可能です。
自由診療の例としては、未承認抗がん剤、適応外抗がん剤、薬剤の適用外投与、適用外の検査などがあります。
自由診療までカバーできる、実損填補タイプ
一部の保険会社では、実際にかかった医療費を保障するタイプのがん保険を取り扱っています。
自由診療も保障対象にしており、患者は医療費の心配をすることなく希望する治療を受れるため、非常に心強い保険といえます。ただし、医療費以外については別の備えが必要です。
一定の給付金が受け取れる、定額給付タイプ
昨今は、がんと診断されたら受け取れる診断給付金や、がんの治療をしたら受け取れる治療給付金など、入院日数や手術内容に連動しない一時金として定額給付されるがん保険も増えています。
受け取った給付金は自由に使え、自由診療の費用にあてることもできるため、時代とともに変わるがんの治療にも対応しやすくなっています。
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混合診療とは、保険診療(保険で認められている治療法)と自由診療(保険で認められていない治療法)の併用のことで、今の日本では原則として禁止されています。そのため、全体が自由診療の扱いになります。
厚生労働省が無制限な混合診療を禁止しているのは、全額患者負担の自由診療が一般化すると、患者の負担が不当に拡大される可能性があるからです。
安全性や有効性などが確認されていない医療が保険診療と併用されてしまうことで、科学的根拠のない特殊な医療を助長するおそれがあります。
基本的に混合診療は禁止ですが、評価療養と選定療養については、限定的に保険診療との併用が認められています。
評価療養は保険導入するか評価中のもの、選定療養は保険導入を前提としないものをいいます。
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患者申出療養とは、患者からの申し出により、未承認薬などの使用の安全性が一定程度確認できたら、保険外併用療養として受けられるようにする制度です。つまり、保険診療との併用を認められ、その治療や投薬自体が10割負担だとしても、入院費などの保険診療にあたる部分は保険適用される、ということです。
申し出の対象になる医療は、将来的に保険適用をめざすための計画がたてられる医療にかぎります。
具体的には、次のような場合に申し出を行います。
先進医療と似ていますが、先進医療は医療機関からの申し出により実施されるのに対し、患者申出療養は患者からの申し出により実施される点が違います。
主な内容 | 審査に かかる期間 |
|
---|---|---|
先進医療 |
|
6か月程度 |
患者申出療養 |
|
2〜6週間 |
治療の選択肢が広がり、患者負担の金額がいくらか軽減できるなど、メリットも多いように感じます。
しかし、未承認薬などが保険診療として認められるわけではないので、高額な費用がかかるのは否めません。治療を受けるには資金準備が重要といえるでしょう。
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患者が全額負担する自由診療は、経済的な備えがないと受けることが難しいため、経済的な医療格差が起こりやすくなっています。
貯蓄や保険でできるかぎりの経済的な備えをし、希望する治療方法を経済的な理由で断念することのないようにしておきたいものです。