更新日:2026年7月30日
高額療養費制度とは、医療費の自己負担額が一定額に抑えられる公的医療保険の制度です。
ここでは、2026年8月の改正に伴う自己負担限度額の計算方法や、高額療養費制度の申請方法、利用するときの注意点をわかりやすく解説します。

この記事の監修者

CFP®資格/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/ファイナンシャル・プランナー、青山学院大学非常勤講師
松浦 建二
1990年青山学院大学卒。大手住宅メーカーから外資系生命保険会社に転職。その後、コンサルティング会社設立に参加。 2002年からファイナンシャルプランナーとして主に個人のライフプラン、生命保険見直し、住宅購入サポート等の相談業務を行っている他、ファイナンシャルプランニングに関する講演や執筆等を行っている。
1990年青山学院大学卒。大手住宅メーカーから外資系生命保険会社に転職。その後、コンサルティング会社設立に参加。 2002年からファイナンシャルプランナーとして主に個人のライフプラン、生命保険見直し、住宅購入サポート等の相談業務を行っている他、ファイナンシャルプランニングに関する講演や執筆等を行っている。
高額療養費制度とは、医療費が高額になったときの経済的負担を軽減するための公的医療保険制度です。
1日から月末までの1カ月間の医療費の自己負担額が「自己負担限度額」を超えた場合、超過分の支払いが不要、または払い戻される仕組みです。
自己負担限度額は、年齢と所得によって決まります。
ここからは、2026年8月の診療分から適用されている自己負担限度額について解説します。
70歳未満の自己負担限度額
70歳未満の場合の自己負担限度額は、以下の表1のとおりです。
たとえば、年収約370万円〜770万円で、1カ月の総医療費が100万円だった場合、3割負担であれば、本来は30万円の自己負担となります。
ですが、高額療養費制度を利用すると、自己負担額は92,940円(85,800円+(1,000,000円−286,000円)×1%)までですみます。
表1 70歳未満の自己負担限度額
| 所得区分 | 月単位の自己負担限度額 (世帯ごと) |
年単位の上限額(年間上限) |
|---|---|---|
| 多数回該当 | ||
| 住民税非課税 | 36,900円 | 290,000円 |
| 24,600円 | ||
|
年収〜約370万円
健保(標準報酬月額<※1>):26万円以下 国保(旧ただし書き所得<※2>):210万円以下 |
61,500円 | 530,000円(※3) |
| 44,400円 | ||
|
年収約370万円〜約770万円
健保(標準報酬月額):28万円〜50万円 国保(旧ただし書き所得):210万円〜600万円 |
85,800円+(医療費−286,000円)× 1% | 530,000円 |
| 44,400円 | ||
|
年収約770万円〜約1,160万円
健保(標準報酬月額):53万円〜79万円 国保(旧ただし書き所得):600万円〜901万円 |
179,100円+(医療費−597,000円)× 1% | 1,110,000円 |
| 93,000円 | ||
|
年収約1,160万円〜
健保(標準報酬月額):83万円以上 国保(旧ただし書き所得):901万円超 |
270,300円+(医療費−901,000円)× 1% | 1,680,000円 |
| 140,100円 |
70歳以上の自己負担限度額
70歳以上の自己負担限度額は、以下の表2のとおりです。
一部の所得区分では、通院などの外来の医療費は個人ごと、入院などの外来以外は世帯ごとに限度額が定められています。
表2 70歳以上の自己負担限度額
| 所得区分 |
月単位の自己負担限度額 (世帯ごと) |
年単位の上限額 (年間上限) |
|
|---|---|---|---|
| 外来 (個人ごと) |
多数回該当 | ||
| 住民税非課税 (所得が一定以下) |
8,000円 | 15,700円 | 180,000円 |
| - | |||
| 住民税非課税 | 11,000円 (年間上限96,000円) |
25,700円 | 290,000円 |
| 24,600円 | |||
|
年収〜約370万円
健保(標準報酬月額):26万円以下(※1) 国保・後期(課税所得<※2>):145万円未満(※1、3) |
22,000円 (年間上限216,000円) |
61,500円 | 530,000円(※4) |
| 44,400円 | |||
|
年収約370万円〜約770万円
健保(標準報酬月額):28万円〜50万円 国保・後期(課税所得):145万円以上 |
85,800円+(医療費−286,000円)× 1% | 530,000円 | |
| 44,400円 | |||
|
年収約770万円〜約1,160万円
健保(標準報酬月額):53万円〜79万円 国保・後期(課税所得):380万円以上 |
179,100円+(医療費−597,000円)× 1% | 1,110,000円 | |
| 93,000円 | |||
|
年収約1,160万円〜
健保(標準報酬月額):83万円以上 国保・後期(課税所得):690万円以上 |
270,300円+(医療費−901,000円)× 1% | 1,680,000円 | |
| 140,100円 | |||
2027年8月の診療分から、負担能力に応じた所得区分の細分化など、高額療養費制度の見直しが予定されています。
そのため、自身の該当区分や限度額が変わる可能性があります。まずは、現時点での自己負担限度額を確認しておくとよいでしょう。
1カ月の自己負担限度額に加え、医療費負担がさらに軽減される場合があります。
ここからは、負担が軽減される主な仕組み3つの適用条件を確認してみましょう。
多数回該当とは、当月を含めた過去12カ月で3回以上、自己負担限度額を超えた場合に、4回目から月額の自己負担限度額がさらに下がる仕組みです。
たとえば、以下の図3にあるように、70歳未満で年収約370万円〜770万円の場合、4回目以降の月額限度額は44,400円に引き下げられます。そのため、治療が長期化したときの経済的な負担が軽減されます。
月単位の自己負担限度額とは別に、年単位(8月1日〜翌年7月31日)の上限(年間上限)があります。
月ごとの限度額に到達していなくても、自己負担の合計が年間上限に達した場合、当該年はそれ以上の医療費の負担は不要になります。
なお、年間上限額も年齢と所得によって異なります。
詳しい限度額は、上の表1・表2内「年単位の上限額」欄をご確認ください。
世帯合算とは、同一世帯で同じ公的医療保険に加入している場合、複数人の医療費を合算できる仕組みです。
合算額が自己負担限度額を超えると、高額療養費の支給対象となります。
世帯合算を利用した場合でも、多数回該当の条件を満たすことで、4回目以降は負担がさらに軽減されます。
ただし、70歳未満は、1回の支払いが21,000円以上の場合に限り合算できる点に気をつけてください。
高額療養費制度の利用方法は、医療機関で提示するものによって大きく2パターンにわかれます。
それぞれの手順を確認してみましょう。
以下の場合、医療機関での医療費の支払いは、自己負担限度額までとなります。
そのため、医療費の立て替えや、高額療養費の事後申請は必要ありません。
ただし、同月内に複数の医療機関を受診した場合や、家族の医療費と合算(世帯合算)する場合などは、医療費の合算を行います。
このケースでは、マイナ保険証や限度額適用認定証がない場合と同様、医療費の立て替えと事後申請の手続きが必要になります。
マイナ保険証や限度額適用認定証がない場合は、資格確認書を提示して医療費(3割など)を全額立て替えた後で、高額療養費の払い戻しの手続きを行います。
高額療養費の申請方法
1.医療機関の窓口で医療費を支払う
2.高額療養費の申請書と必要書類を、加入する公的医療保険へ提出する
3.診療月の約3カ月後に、限度額の超過分が指定口座に払い戻される
申請方法や必要書類は、加入する公的医療保険のホームページなどで、事前に必ず確認してください。
なお、高額療養費の事後申請が必要な場合に利用できる高額医療費貸付制度があります。
高額療養費の払い戻しを待つ間、医療費の一部を無利子で借りられる制度で、後日払い戻される高額療養費と相殺されるため、返済手続きは不要です。
ただし、貸付金(借入額)は加入している公的医療保険によって異なり、協会けんぽ(全国健康保険協会)では、高額療養費支給見込額の8割相当額まで(※)です。
高額療養費制度を利用しても、自己負担がなくなるわけではありません。
制度を活用するときに知っておきたい注意点を2つ紹介します。
高額療養費制度が適用されるのは、保険が適用される診療費のみです。
以下の費用は対象外となり、全額自己負担となります。
高額療養費制度は、1日から月末までの1カ月間で計算されます。
たとえば7月に入院して8月に退院した場合、医療費は7月分と8月分に分けて計算されます。
その結果、7月、8月それぞれの医療費が自己負担限度額を超えず、実質的な負担が増えることもあります。
月の下旬や月末からの入院を予定している場合は、月をまたぐ際の費用負担も確認しておきましょう。
高額療養費制度を利用しても、自己負担限度額までの医療費は自己負担となります。
さらに、食事代や差額ベッド代、先進医療費など公的医療保険が適用されない費用は、負担が大きくなる可能性があります。
自己負担の補てんや、経済的な理由で治療の選択肢を狭めないために、民間の医療保険で備えておくと安心です。
なお、会社員などが加入している健康保険組合によっては、高額療養費制度に上乗せして独自の給付(付加給付)があるため、最終的な自己負担額がさらに少なくなります。
このように、状況によって「自分に足りない備え」は異なります。まずは、備えが不足する分を確認し、そのうえで、民間の医療保険を検討してみるとよいでしょう。