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更新日:2025年11月11日

妊婦でも海外旅行保険に加入できるの?

海外旅行の予約をした後に妊娠が判明した場合や授かり婚の新婚旅行など、いわゆる「マタ旅」に出かける際には、渡航先や宿泊先、行程、準備物、体調管理などに十分な注意が必要です。しっかりと準備をしたうえで、海外旅行保険に加入できるとより安心して旅を満喫することができるはず。今回は、妊婦の海外旅行保険についてご紹介します。


この記事の要点
  • 妊娠、出産、早産、流産などに起因する治療などの費用は保険金支払いの対象外
  • 妊娠初期(21週までなど)の場合に限り、妊娠に関連した治療などの費用は補償対象となる場合がある
  • 海外旅行保険には妊娠に関連しない病気や旅行中に起こる可能性があるさまざまなトラブルに対しての補償がある
  • 健康保険の「海外療養費制度」で、妊娠に関連した異常に対する治療費の一部が戻ってくる可能性がある

この記事の監修者

國場 弥生(くにば やよい)

ファイナンシャル・プランナー、株式会社プラチナ・コンシェルジュ所属、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、ファイナンスMBA

國場 弥生

大学卒業後、証券会社にて個人向けの資産運用プラン作りやアドバイス業務を行う。FP転身後は、個人相談、書籍や雑誌・Webサイト上での執筆活動を幅広く行っている。All Aboutマネーガイドも務めている。早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。

大学卒業後、証券会社にて個人向けの資産運用プラン作りやアドバイス業務を行う。FP転身後は、個人相談、書籍や雑誌・Webサイト上での執筆活動を幅広く行っている。All Aboutマネーガイドも務めている。早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。


妊婦でも海外旅行保険に加入できるの?

海外旅行をする場合、慣れない土地でのトラブルに備えて海外旅行保険に加入することが推奨されていますが、「妊娠中は海外旅行保険に加入できない」と思い込んでいる人が少なくありません。でも、実は加入すること自体は可能です。加入はできるのですが、残念ながら妊娠や出産、早産、流産などに起因する治療費用や救援費用に関しては、保険金支払いの対象外となってしまいます。なかには妊娠初期(21週までなど)の場合に限って、妊娠に関連した治療費用や救援費用が補償される海外旅行保険もあるので、該当するなら補償される保険を選んで加入することをおすすめします。

ちなみに、双子以上を妊娠している、出産予定日が近くなって※から飛行機(国際線)に搭乗する場合など、医師の診断書の提出が必要になることもあるので、妊娠中であることを旅行代理店や航空会社などへ事前に伝えておくほうが安心です。

  • ANAの場合、出産予定日15日以上28日以内は診断書が必要。出産予定日14日以内は診断書と医師の同伴が必要。
  • JALの場合、出産予定日8日以上28日までは診断書が必要。出産予定日7日以内は診断書と医師の同伴が必要。
双子以上を妊娠している場合や出産予定日が近い場合は、医師の診断書の提出が必要になることもあります

海外旅行保険に加入したほうがいいの?

妊娠中に海外旅行保険に加入した場合は原則として妊娠や出産、早産、流産などに起因する治療費用や救援費用は保険金支払いの対象外となり、本人や家族がいちばん不安を感じる部分をカバーすることができません。しかし、だからといって入る必要がないわけではなく、妊娠に関わらなくても旅行中に起こる可能性のあるトラブルは数多くあり、それを補償してくれる海外旅行保険が心強い存在であることは間違いありません。

海外旅行保険を扱うジェイアイ傷害火災によれば、2019年度の事故発生率は4.14%で、24人に1人が保険金の支払いを受けています。割合が高いのは、ケガや病気の治療費用や救援費用、パスポートやスーツケース、カメラ、携帯電話といった手荷物の盗難や破損(携行品損害)、航空機の遅延や欠航、航空会社に預けた手荷物が現地に届かないといった予期せぬ偶然な事故により費用を負担しなければならなくなった(旅行事故緊急費用)などです。海外旅行中は、国内では考えにくいトラブルに巻き込まれることもあるので、渡航前に具体例に目を通しておくとイメージしやすく、保険加入時の参考にもなるはずです。

補償項目別 事故発生割合

  • 補償項目 割合
    治療・救援費用 47.8%
    携行品損害 26.9%
    旅行事故緊急費用 20.4%
    そのほか 4.9%
    • ジェイアイ傷害火災調べ
    • 記載の以下項目は( )内を含みます。
    • @治療・救援費用 (傷害治療費用、疾病治療費用、救援者費用、疾病応急治療・救援費用)
    • A携行品損害 (生活用動産)
    • B旅行事故緊急費用 (航空機遅延、航空機寄託手荷物遅延)
  • 補償項目別 事故発生割合

過去に発生した事故例

事故状況(発生年度) 治療・救援費用
保険金支払額
アメリカ 咳(せき)・息苦しさを訴え受診。気胸と診断され10日間入院・手術。家族が駆けつける。(2015年度) 1,203万円
カナダ バス降車時に貧血で意識を失い転倒、顔を強打し救急車で搬送。頭蓋骨・下顎(かがく)骨折と診断され3日間入院・手術。(2014年度) 383万円
イタリア ホテル前で車にひかれ救急車で搬送。多発外傷と診断され手術。家族が駆けつける。(2015年度) 637万円
オーストリア 咳・鼻水が続き受診。肺炎と診断され14日間入院。家族が駆けつける。看護師が付き添い医療搬送。(2015年度) 623万円
フランス 嘔吐(おうと)・腹痛で歩行および横にもなれない状態になり受診。子宮外妊娠と診断され8日間入院・手術。家族が駆けつける。看護師が付き添い医療搬送。(2014年度) 541万円
シンガポール 激しい腰痛を訴え受診。子宮筋腫と診断され3日間入院・手術。(2015年度) 346万円
タイ 頭痛が数ヶ月続き受診。髄膜腫と診断され10日間入院・手術。(2015年度) 393万円
  • 参照:ジェイアイ傷害火災「海外の医療情報・事故データ(海外での事故例)」より支払保険金300万円以上のデータを抜粋

海外旅行保険以外で、妊婦に対する補償ってあるの?

旅行中に海外で治療を受けることになった場合、支払った費用の一部を日本で加入している公的な医療保険が払い戻してくれる「海外療養費制度」があります。国内とは医療事情が異なることも考えられますが、基準となるのは国内で健康保険が適用される医療行為かどうかです。治療費も国によって差が生じますが、国内で同様の治療を受けた場合にかかるはずの金額から、いくら払い戻されるかが計算されます。

海外療養費制度」は妊婦も同様に扱われるので、旅行中に妊娠に関連する不調が生じて治療を受けたときにも利用することができる心強い制度です(妊娠・出産は本来病気ではないので健康保険の適用外ですが、つわりがひどかったり、出血や痛みがあったり、早過ぎる破水など、異常が見られる場合は適用され、かかった治療費などの3割を自己負担すればよいことになっています)。また、旅行中に海外で急遽出産した場合には、国内と同様に出産育児一時金※を受け取ることが可能です。

  • 出産育児一時金は、出産した人やその家族の経済的な負担を軽減するために支払われるお金。海外では、出産育児一時金を医療機関へ直接支払う直接支払制度は利用できません
旅行中に妊娠に関する不調が生じて治療を受けたとき「海外療養費制度」を利用することができます

まとめ

海外旅行保険では、妊娠に関連した治療費用などに対する補償は原則ありませんが、妊娠初期であれば補償される商品もあります。海外旅行保険を検討する際は、補償の対象に含まれるかどうかを確認するようにしましょう。

治療費用などが100%カバーされるわけではありませんが、海外旅行保険以外に妊婦をサポートしてくれる制度があります。しかし、海外療養費制度も出産育児一時金も、申請には診療内容や現地で支払った金額を証明できる書類、出生証明書などが必要ですし、それらの書類の翻訳文も添えることも求められるので、妊婦の方が海外旅行をする場合は、念のため事前に加入している健康保険に問い合わせをしてから出かけましょう。



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