更新日:2025年5月12日
先進医療とはどんな医療行為なのでしょうか。どんな種類があり、それぞれの技術料はいくらが相場なのでしょうか?先進医療の費用と種類を解説します。
この記事の監修者
CFP(R)資格/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/ファイナンシャル・プランナー、青山学院大学非常勤講師
松浦 建二
1990年青山学院大学卒。大手住宅メーカーから外資系生命保険会社に転職。その後、コンサルティング会社設立に参加。 2002年からファイナンシャルプランナーとして主に個人のライフプラン、生命保険見直し、住宅購入サポート等の相談業務を行っている他、ファイナンシャルプランニングに関する講演や執筆等を行っている。
1990年青山学院大学卒。大手住宅メーカーから外資系生命保険会社に転職。その後、コンサルティング会社設立に参加。 2002年からファイナンシャルプランナーとして主に個人のライフプラン、生命保険見直し、住宅購入サポート等の相談業務を行っている他、ファイナンシャルプランニングに関する講演や執筆等を行っている。
先進医療とは、公的医療保険制度に基づく評価療養のうち、厚生労働大臣が定める高度な医療技術で、「保険給付の対象とすべきものであるか否かについて適正な医療の効率的な提供を図る観点から評価を行うことが必要な療養」です。
先進医療を実施する医療機関は医療技術ごとに定められています。これは保険給付の対象にするべきかどうかの評価をするため、医療機関へ定期的な報告を求めているからです。医療技術によっては施設基準を設定していることもあります。
先進医療の技術数は2025年4月1日時点で77種類(先進医療Aが26種類、先進医療Bが51種類)です。
先進医療Aは未承認等の医薬品や医療機器の使用(適応外使用)を伴わない医療技術で、先進医療Bは未承認等の医薬品や医療機器の使用(適応外使用)を伴う医療技術です。
先進医療のそれぞれの医療技術は、有効性や安全性が確認できて公的医療保険の適用になれば先進医療から外れます。取り下げたり削除されたりする医療技術もあります。また医療技術の進歩により、評価が必要な医療技術が新たに出てきて、先進医療に加わることもあります。そのため、先進医療の技術数や内容は一定ではありません。
今人気のがん保険がわかる!
先進医療技術については全額患者の負担ですが、将来的な保険導入のための評価を行うものとして、先進医療以外の部分については保険診療との併用が認められています(保険外併用療養費制度)。
先進医療の具体的な費用は医療技術の種類や医療機関によって異なります。
先進医療技術ごとの実施件数・費用・入院期間
技術名 | 年間実施 件数(件) |
1件当たりの 額(円) |
平均入院 期間(日) |
---|---|---|---|
陽子線治療 | 824 | 2,659,010 | 15.6 |
重粒子線治療 | 462 | 3,135,656 | 4.2 |
細胞診検体を用いた遺伝子検査 | 282 | 80,522 | 4.3 |
ゲムシタビン静脈内投与および 重粒子線治療の併用療法(膵臓がん) |
13 | 56,083 | 8.2 |
ウイルスに起因する 難治性の眼感染疾患に対する迅速診断(PCR法) |
844 | 28,140 | 2.7 |
多項目迅速ウイルスPCR法による ウイルス感染症の早期診断 |
54 | 41,110 | 108.8 |
抗悪性腫瘍剤治療における 薬剤耐性遺伝子検査 |
202 | 37,514 | 50.6 |
流産検体を用いた染色体検査 | 16 | 85,488 | 0.6 |
術後のアスピン経口投与療法 (下部直腸を除く大腸がん) |
590 | 1,650 | 0.6 |
先進医療は200万円を超える高額な医療技術もあります。高額な先進医療の中でも実施件数が多いのは陽子線治療と重粒子線治療です。陽子線治療とは、放射線の一種である陽子線を病巣に照射するがんの治療方法、重粒子線治療とは、放射線の一種である重粒子線(炭素イオン)を病巣に照射するがんの治療方法のことです。
<陽子線治療などの例>
陽子線治療などは医療機関ごとに費用が異なります
名古屋市立大学医学部附属西部医療センターのように市立や県立病院の場合、市民や県民向けに減免措置があります。
一例として「1か月の医療費300万円、うち先進医療費200万円、標準報酬月額40万円(40歳)」の場合を計算してみましょう。
高額療養費制度により保険診療分は87,430円、これに全額自己負担の先進医療200万円を足した約209万円が実際に負担する費用となります。
今人気のがん保険がわかる!
先進医療保障は医療保険やがん保険に特約などで付加できます。しかし医療保険にある先進医療保障と、がん保険にある先進医療保障では保障内容が異なります。
医療保険の先進医療保障……病気・ケガで所定の先進医療を受けたとき
がん保険のがん先進医療保障……がんの治療を目的として所定の先進医療を受けたとき
先進医療の保障額は、医療保険の場合でもがん保険の場合でも、「先進医療にかかる技術料相当額」としている保険が多いですが、なかには1回につき定額(15万円程度)や技術費に連動(技術料の10〜20%)相当額の一時金を上乗せで保障する場合もあります。
先進医療の技術数や全患者数、先進医療の総額について、過去7年分の実績をまとめてみました。
先進医療実績
技術数 | 全患者数 | 先進医療及び 旧高度先進医療の総額 |
|
---|---|---|---|
2017年度(平成29年度) | 102種類 | 32,984人 | 約207億円 |
2018年度(平成30年度) | 92種類 | 28,539人 | 約240億円 |
2019年度(令和元年度) | 88種類 | 39,178人 | 約298億円 |
2020年度(令和2年度) | 83種類 | 5,459人 | 約62億円 |
2021年度(令和3年度) | 83種類 | 5,843人 | 約62億円 |
2022年度(令和4年度) | 83種類 | 26,556人 | 約67億円 |
2023年度(令和5年度) | 81種類 | 144,282人 | 約101億円 |
全患者数は増減を繰り返していましたが、2020年度(令和2年度)には、前年の2019年度(令和元年度)の約7分の1にまで減少し、先進医療費用の総額も大きく減少しています。これは、2020年4月に実施医療機関や患者数の多かった技術が先進医療ではなくなったことが大きく影響しているものと考えられます。
また、2023年度(令和5年度)に患者数が増えたのは不妊治療の一部が先進医療に導入された影響が大きいと考えられます。
今人気のがん保険がわかる!
先進医療の技術は随時見直されるため、治療を受けようとしたときには先進医療ではなくなっている可能性もあります。もし保険診療になっていれば負担割合は3割などで済むので、経済的負担をかなり抑えることができます。もし自由診療になっていれば保険診療との併用分も全額患者負担になるので、経済的負担は逆に増してしまいます。常に新しい情報を得るようにしておきましょう。
先進医療を受けられる医療機関は、先進医療Aでは26種類の先進医療技術を延べ2,399の医療機関で、先進医療Bでは51種類の先進医療技術を延べ435の医療機関で実施しています(2025年4月1日現在)。
以下はそれぞれの先進医療を実施している医療機関の例です。
陽子線治療(先進医療A)を実施している医療機関
都道府県 | 医療機関 |
---|---|
千葉県 | 国立がん研究センター東病院 |
兵庫県 | 兵庫県立粒子線医療センター |
静岡県 | 静岡県立静岡がんセンター |
茨城県 | 筑波大学附属病院 |
福島県 | 一般財団法人脳神経疾患研究所附属 南東北がん陽子線治療センター |
鹿児島県 | 一般社団法人メディポリス医学研究所 メディポリス国際陽子線治療センター |
福井県 | 福井県立病院 |
愛知県 | 名古屋市立大学医学部附属西部医療センター |
北海道 | 北海道大学病院 |
長野県 | 社会医療法人財団慈泉会 相澤病院 |
岡山県 | 津山中央病院 |
北海道 | 社会医療法人禎心会 札幌禎心会病院 |
大阪府 | 医療法人伯鳳会 大阪陽子線クリニック |
兵庫県 | 兵庫県立粒子線医療センター附属神戸陽子線センター |
愛知県 | 成田記念陽子線センター |
奈良県 | 社会医療法人高清会 高井病院 |
京都府 | 京都府立医科大学附属病院 |
北海道 | 社会医療法人孝仁会 札幌孝仁会記念病院 |
神奈川県 | 湘南鎌倉総合病院 |
岐阜県 | 社会医療法人厚生会 中部国際医療センター |
重粒子線治療(先進医療A)を実施している医療機関
都道府県 | 医療機関 |
---|---|
千葉県 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 QST病院 |
兵庫県 | 兵庫県立粒子線医療センター |
群馬県 | 国立大学法人群馬大学医学部附属病院 |
佐賀県 | 九州国際重粒子線がん治療センター |
神奈川県 | 神奈川県立がんセンター |
大阪府 | 大阪重粒子線センター |
山形県 | 山形大学医学部付属病院 |
ほかの医療機関では先進医療として受けることはできません。
先進医療に限ったことではありませんが、手術など医療行為を受ける場合は同意書に署名することが必要となります。
先進医療を受けた場合の技術料等は一般的に医療費控除の対象となるので、技術料や食事標準負担額等の記載された領収書は大切に保管しておきましょう。
今人気のがん保険がわかる!
先進医療は技術料が全額患者負担であることから、費用が高額になりやすいです。ただ、お金がないからなどの経済的な理由で希望する治療方法を諦めるようなことは避けたいものです。そのためにも、貯金や先進医療保障のある保険などによって必要な経済的備えを確実にしておきましょう。
AFH234-2024-0238 7月29日(260729)
この記事の関連コンテンツ