更新日:2025年11月10日
医療保険は、病気やケガをしたときの治療費を負担するもので、公的医療保険と民間医療保険がありますが、それぞれの役割を知っていますか?
この記事では、公的医療保険と民間医療保険の仕組み や種類など、備えておきたい医療保険について解説します。

この記事の監修者

CFP(R)資格/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/ファイナンシャル・プランナー、青山学院大学非常勤講師
松浦 建二
1990年青山学院大学卒。大手住宅メーカーから外資系生命保険会社に転職。その後、コンサルティング会社設立に参加。 2002年からファイナンシャルプランナーとして主に個人のライフプラン、生命保険見直し、住宅購入サポート等の相談業務を行っている他、ファイナンシャルプランニングに関する講演や執筆等を行っている。
1990年青山学院大学卒。大手住宅メーカーから外資系生命保険会社に転職。その後、コンサルティング会社設立に参加。 2002年からファイナンシャルプランナーとして主に個人のライフプラン、生命保険見直し、住宅購入サポート等の相談業務を行っている他、ファイナンシャルプランニングに関する講演や執筆等を行っている。
医療保険は、病気やケガによる通院や入院をして、手術などの治療を受けた際、その医療費の一部を負担するものです。
さらに医療保険には、公的医療保険と民間医療保険があり、それぞれ異なる特徴をもっています。
まず、公的医療保険は、私たちが治療を受けた際、その医療費の一部を負担する保険のことです。
たとえば、医療費が高額になった場合に、その負担が軽減される高額療養費制度のほか、出産時の出産手当金、病気やケガで働けなくなったときの傷病手当金といった現金給付によっても負担が軽減されています。
しかし、公的医療保険では、病気やケガで入院・手術などの治療を受けたときの費用を、すべてまかなえるわけではありません。
このような公的医療保険ですべてをカバーできない場合に備えておきたいのが、民間医療保険です。
そのため、公的医療保険と民間医療保険の2つを備えておくことで、より安心を得られます。
ここからは、公的医療保険と民間医療保険それぞれの役割や種類について、詳しく説明します。
日本の公的医療保険制度は、すべての国民が公的医療保険に加入する「国民皆保険制度」のもとに成り立っています。
これは、病気やケガによって生じる経済的な負担を互いに支え合うことを目的にした公的な制度で、健康保険組合や市区町村が保険者となっています。
この制度があることで、私たちは医療費の一部を負担するだけで医療サービスを受けられています。
日本では当たり前の制度と捉えられているかもしれませんが、たとえばアメリカでは、高齢者や身体の不自由な方、低所得者以外は、公的な医療保障を受けられません。(※1)
そのため、公的医療保障の対象ではない方が、仮に急性虫垂炎で手術、1日入院をした場合、約1万ドル以上、日本円で約142万円以上(※2)請求されることもあります。(※3)
一方、日本で同じ治療を受けたとすると、高額療養費制度を利用した場合の自己負担額は一般的に、医療費の約9万円と個室代、雑費しかかかりません。
このように、諸外国の公的医療保障制度を見ると、日本の国民皆保険制度は、誰もが安心して医療を受けられる制度であると、改めてわかるでしょう。
職業や年齢によって、加入する公的医療保険が異なる
公的医療保険の具体的な種類は、下記の表1のとおりです。
まず、被用者保険、国民健康保険、後期高齢者医療制度の大きく3つに分類されます。
1つ目の被用者保険は、主に会社員や公務員などの雇用されている方とその家族が加入する保険です。
2つ目の国民健康保険は、自営業者やフリーランス、農業従事者などを対象とした保険、3つ目の後期高齢者医療制度は、75歳以上の高齢者が加入する保険となっています。
表1 公的医療保険の種類
| 種類 | 保険名称 | 対象者 | |
|---|---|---|---|
| 被用者保険 | 健康保険 | 全国健康保険協会 (協会けんぽ) |
中小企業の従業員とその家族 |
| 健康保険組合 | 主に大企業の従業員とその家族 | ||
| 共済組合 | 公務員、教職員、特定の団体に所属する従業員 | ||
| 船員保険 | 船員とその家族 | ||
| 国民健康保険 | 自営業者、農林漁業従事者、退職者、非就業者など | ||
| 後期高齢者医療制度 | 75歳以上の方 | ||
公的医療保険制度における医療費の自己負担割合は、多くの場合3割ですが、この負担割合は年齢や所得によって異なります。
たとえば、下記の表2にあるように、小学校入学前(6歳未満)は医療費の2割負担、6歳以上69歳以下の方は3割の負担で診察や治療を受けられます。
ただし、病気やケガで医療費が高額になった場合は、3割などの一部の負担であったとしても、家計への医療費負担の影響がないとは言い切れません。
なお、6歳未満、小学生、中学生、高校生は、各自治体の医療費助成制度によって自己負担額がない、もしくは軽減されている場合があります。
表2 医療費の負担割合
| 年齢 | 負担割合 |
|---|---|
| 6歳未満 (小学校入学前) |
2割負担 |
| 6歳〜69歳 | 3割負担 |
| 70歳〜74歳 | 2割負担 ※現役並みの所得者は3割負担 |
| 75歳以上 | 1割負担 ※現役並みの所得者は3割負担、一定以上の所得者は2割負担 |
高額な医療費負担を軽減する高額療養費制度がある
医療費が高額になった場合、公的医療保険には高額療養費制度があります。
この制度を利用することで、自己負担限度額を超えた医療費が、高額療養費として給付され、医療費の負担を抑えられます。
高額療養費制度を利用した場合、1カ月あたりの自己負担額は約9万円ですが、所得や年齢によって異なります。
具体的な自己負担額の目安は、以下の記事で紹介していますので、高額療養費制度の仕組みや申請方法なども合わせて、記事を参考にしてみてください。
ここからは、民間医療保険の役割や保障内容について解説します。
民間医療保険は、公的医療保険ではカバーしきれない費用を補うための保険で、民間の保険会社が運営しています。
そのため、保険会社ごとに異なる保障やサービスが提供されています。
加えて、社会の変化や医療の発展、医療費の増加やライフスタイルの多様化に応じて、保障内容なども変化しており、より個々のニーズに応じた保障を受けられる保険とも考えられます。
民間医療保険では主に、下記の表3のように入院費用を保障する入院給付金と、手術費用を保障する手術給付金があります。
たとえば、入院給付金は入院1日ごとに受け取れる日額タイプ、入院1回につき5万円や10万円などのまとまった金額を受け取れる一時金タイプなどがあります。
同様に、手術給付金も商品によって詳細が異なるため、保障内容などをよく確認しましょう。
表3 民間医療保険の主な保障
| 保障項目 | 保障内容 | 用途例 |
|---|---|---|
| 入院給付金 | 病気やケガで入院した場合に、給付金を受け取れる | 食事代、雑費、個室代など、入院時に必要な費用の一部を補う |
| 手術給付金 | 手術を受けた場合に、給付金を受け取れる | 食事代、雑費、個室代に加えて、手術や高額な医療費などの一部を補う |
民間医療保険は、先ほどの主な保障に特約を追加することで、保障を手厚くできます。
特約の一例は、下記の表4のとおりです。
保険会社や商品によって、特約の名称や保障内容が異なる場合があるため、加入の際はよく確認してください。
表4 民間医療保険の主な特約の種類
| 入院一時金特約 | 病気やケガで入院した際、入院日数にかかわらず入院時にまとまった金額を受け取れる |
|---|---|
| 特定疾病特約 | がん(悪性新生物)、急性心筋梗塞、脳卒中などの重大な病気で入院や手術をした場合、一時金を受け取れる |
| 女性疾病特約 | 女性特有の病気で入院や手術をした場合、入院・手術時に受け取れる給付金が上乗せされる |
| 先進医療特約 | 高額な医療技術を用いた先進医療を受けた場合、その治療費の実費分を受け取れる |
| 通院特約 | 入院給付金が支払われる入院をし、退院した後も同じ病気の治療を目的で通院した場合、給付金を受け取れる |
公的医療保険の補てんだけでなく、必要に応じて主な保障に特約を追加し、保障を手厚くできるのが、民間医療保険の特徴でもあります。
そのため、個々の健康状態や医療保障に対する考え方に合った保障を備えられるとも考えられます。
このことから、もしものときに備えて民間医療保険に加入しておくと、より安心です。
では、どれだけの方が民間医療保険に加入しているのか、実際の加入率を見てみましょう。
生命保険文化センターの調査によると、下記の図5のように、男女ともに6割以上の方が、民間の医療保険(疾病入院給付金が支払われる生命保険)に加入していることがわかっています。
男女別の加入率では、男性は60.2%、女性70.1%と、いずれも半数以上の方が加入しています。
加入率のデータを見ると、病気やケガに対する備えが必要であることを、多くの方が実感していると考えられます。
なお、民間医療保険の必要性は、貯蓄状況や扶養家族の有無、病気にかかるリスクの上昇など、年代によっても異なります。
そのため、「医療保険が必要な理由を年代別で解説」の記事を参考に、自身の年齢やライフステージを踏まえて、民間医療保険の必要性について考えてみるとよいでしょう。
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