更新日:2025年7月15日
介護保険、医療保険、がん保険に加入している場合、介護医療保険料控除が適用され、1年間の保険料などの金額に応じて所得控除を受けられることを知っていますか?
この記事では、新制度と旧制度での控除限度額の違いや、控除額の計算方法を説明します。
この記事の監修者
CFP(R)資格/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/ファイナンシャル・プランナー、青山学院大学非常勤講師
松浦 建二
1990年青山学院大学卒。大手住宅メーカーから外資系生命保険会社に転職。その後、コンサルティング会社設立に参加。 2002年からファイナンシャルプランナーとして主に個人のライフプラン、生命保険見直し、住宅購入サポート等の相談業務を行っている他、ファイナンシャルプランニングに関する講演や執筆等を行っている。
1990年青山学院大学卒。大手住宅メーカーから外資系生命保険会社に転職。その後、コンサルティング会社設立に参加。 2002年からファイナンシャルプランナーとして主に個人のライフプラン、生命保険見直し、住宅購入サポート等の相談業務を行っている他、ファイナンシャルプランニングに関する講演や執筆等を行っている。
介護医療保険料控除とは、生命保険料控除の一つで1年間に支払った保険料などに応じて所得金額から一定額が差し引かれる所得控除であり、税制優遇制度です。
生命保険料控除は、一般の生命保険料控除、介護医療保険料控除、個人年金保険料控除の3つに分かれており、この中の一つである介護医療保険料控除について説明します。
ここからは、介護医療保険料控除の対象となる保険の種類について詳しく見ていきましょう。
介護医療保険料控除の対象は、病気もしくはケガ、またはこれらに類する事由に対して給付金などが支払われる保険契約です。
具体的には、下記の表1のように、介護保険や医療保険、がん保険が対象となります。
表1 対象となる保険契約の例
控除の種類 | 新制度 (2012年1月1日以降に契約) |
旧制度 (2011年12月31日以前に契約) |
---|---|---|
一般の生命保険料控除 |
終身保険 定期保険 収入保障保険 学資保険 など |
終身保険 定期保険 収入保障保険 学資保険 医療保険 がん保険 介護保険 など |
介護医療保険料控除 |
介護保険 医療保険 がん保険 など |
− |
個人年金保険料控除 | 個人年金保険 | 個人年金保険 |
上の表1でもわかるように、介護医療保険料控除の対象は、2012年(平成24年)1月1日以降に契約した保険契約です。2011年(平成23年)12月31日までに結んだ介護保険、医療保険、がん保険は、一般の生命保険料控除の対象となります。
介護医療保険料控除は、保険の契約日によって新制度と旧制度に分けられており、控除額の計算方法や上限も異なります。
具体的には、契約日が2012年(平成24年)1月1日以降のものは「新制度」、2011年(平成23年)12月31日以前は「旧制度」で、それぞれの控除額は下記の表2〜5のように計算します。
新制度の介護医療保険料の控除限度額と計算方法
新制度における介護医療保険料の控除限度額は、下記の表2、3にあるように所得税が4万円、住民税が2.8万円で、この額は、一般の生命保険料控除や個人年金保険料控除と同じです。
なお、一般の生命保険料控除、介護医療保険料控除、個人年金保険料控除の3種類を合計した控除額の上限は、所得税が12万円で、住民税が7万円となります。
表2 新制度における介護医療保険料控除額(所得税)の計算方法
所得税 | ||
---|---|---|
年間払込保険料額 | 控除される金額 | |
20,000円以下 | 払込保険料全額 | |
20,000円超 40,000円以下 |
(払込保険料×1/2) +10,000円 |
|
40,000円超 80,000円以下 |
(払込保険料×1/4) +20,000円 |
|
80,000円超 | 40,000円 |
表3 新制度における介護医療保険料控除額(住民税)の計算方法
住民税 | ||
---|---|---|
年間払込保険料額 | 控除される金額 | |
12,000円以下 | 払込保険料全額 | |
12,000円超 32,000円以下 |
(払込保険料×1/2) +6,000円 |
|
32,000円超 56,000円以下 |
(払込保険料×1/4) +14,000円 |
|
56,000円超 | 28,000円 |
旧制度の介護医療保険料の控除限度額と計算方法
旧制度における介護医療保険料は、一般の生命保険料控除の対象となり、下記の表4、5のように控除額を計算できます。
具体的に、一般の生命保険料控除の控除限度額は所得税が5万円、住民税が3.5万円です。
個人年金保険料控除と合計した場合の控除額の上限は、所得税が10万円、住民税が7万円となります。
表4 旧制度における介護医療保険料の控除額(所得税)と計算方法
所得税 | ||
---|---|---|
年間払込保険料額 | 控除される金額 | |
25,000円以下 | 払込保険料全額 | |
25,000円超 50,000円以下 |
(払込保険料×1/2) +12,500円 |
|
50,000円超 100,000円以下 |
(払込保険料×1/4) +25,000円 |
|
100,000円超 | 50,000円 |
表5 旧制度における介護医療保険料の控除額(住民税)と計算方法
住民税 | ||
---|---|---|
年間払込保険料額 | 控除される金額 | |
15,000円以下 | 払込保険料全額 | |
15,000円超 40,000円以下 |
(払込保険料×1/2) +7,500円 |
|
40,000円超 70,000円以下 |
(払込保険料×1/4) +17,500円 |
|
70,000円超 | 35,000円 |
新制度と旧制度、双方が対象になる契約がある場合の控除額の計算方法
新制度と旧制度(一般の生命保険料控除)に該当する契約がある場合、以下の3つの方法からいずれか1つを選択して手続きを行います。
これら3つの中で、控除額が最も大きくなる方法を選択するとよいでしょう。
所得税の控除額の目安としては、旧制度に該当する契約の年間払込保険料などが6万円を超える場合は旧制度の契約のみを申告することで、控除額が最大になります。
一方で、6万円を下回る場合は、新制度と旧制度を合算して申告するほうが、控除額が大きくなります。
ただし、この金額は目安のため、実際の控除額を計算したうえで選択してください。
なお、新制度と旧制度の契約を合算する場合は、控除額の上限に注意が必要で、所得税は新制度と旧制度合わせて12万円、住民税は7万円が上限となります。
税負担をより軽減できるよう、最適な方法を選んで、介護医療保険料控除の手続きを進めましょう。
介護医療保険料控除を受けるための条件として、給付金などの受取人が契約者本人、もしくはその配偶者、親族でなければなりません。
また、介護医療保険料控除を受けられるのは、保険の契約者ではなく、保険料を支払っている方です。
このように、介護医療保険料控除を受ける際には、注意しなければならないことがあります。
給与所得者と個人事業主などでも申告方法が異なるため、これらの注意点も踏まえて、介護医療保険料控除の手続き方法について説明します。
給与所得者は原則、年末調整で介護医療保険料控除の手続きを行います。
年末調整とは、勤務先が1年間に給与所得者から源泉徴収した所得税を再計算し、過不足を調整する手続きです。
年末調整での手続きが間に合わない場合、自身で確定申告を行う必要があるため、基本的に年末調整で控除を受けられるよう、あらかじめ手続きの流れなどを確認しておくとよいでしょう。
年末調整における介護医療保険料控除の手続きの流れ
@ 生命保険料控除証明書を受け取る
10月ごろに保険会社から「生命保険料控除証明書」が届きます。この証明書は年末調整の際に必要で、介護医療保険料が記載されているため、必ず保管しておいてください。
なお、保険会社の専用サイトなどから、生命保険料控除証明書の電子データを取得できる場合もあります。
A 給与所得者の保険料控除等申告書に記入する
勤務先で配布される「給与所得者の保険料控除等申告書」に、保険の種類や保険会社の名称、1年間に支払った保険料など、生命保険料控除証明書に記載されている内容を正しく記入します。
B 証明書と申告書の提出
給与所得者の保険料控除等申告書に記入した後、生命保険料控除証明書とあわせて勤務先に提出します。
これにより、年末調整で介護医療保険料控除が適用され、所得税や住民税の負担が軽減されます。
年末調整で間に合わなかった場合、手続きを忘れた場合や、個人事業主などは、確定申告で介護医療保険料控除の手続きを行います。
確定申告における介護医療保険料控除の手続きの流れ
@ 保険料控除証明書を受け取る
年末調整時と同様に、10月ごろに保険会社から届く「生命保険料控除証明書」を大切に保管しておきます。
A 確定申告書を作成する
確定申告書の第一表、第二表内、「生命保険料控除」の欄に、年間払込保険料額などを正しく記入します。
国税庁の専用サイト「確定申告書等作成コーナー」を利用した場合、画面の案内に沿って入力するのみで確定申告書が作成できます。
B 申告書と証明書の提出
作成した確定申告書と生命保険料控除証明書を、所轄の税務署に提出します。提出方法は、e-Tax(電子申告)、郵送、税務署への持参から選択できます。
e-Taxの場合、マイナンバーカードとICカードリーダライタを利用して提出する「マイナンバーカード方式」と、税務署で発行されたIDとパスワードを利用して提出する「ID・パスワード方式」があります。
なお、e-Taxを利用する場合、生命保険料控除証明書の提出は不要です。ただし、提出や提示を求められる場合もあるため、申告期限から5年間は保管が必要です。
介護医療保険では一般的に、給付金などの受取人は被保険者となります。また、被保険者と契約者が異なる場合もあるため、必ずしも契約者と受取人が同一人物になるわけではありません。
そのため、介護医療保険料控除を受けるには、給付金などの受取人が、保険料を支払っている契約者本人、または、その配偶者や親族である必要があります。
このほか、控除を受けられるのは、保険料を支払っている方です。ただし、保険料を支払っている方は、契約者の配偶者、もしくは生計を一にする親族であることが条件です。
たとえば、契約者が妻、夫が保険料を支払っている場合、控除を受けられるのは夫になります。
これらの手続きを正確に行うことで、介護医療保険料控除を受けられ、所得税や住民税の負担が軽減できます。
手続きをスムーズに進められるよう、書類の書き方や控除額の計算方法など、事前に確認しておくとよいでしょう。
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