更新日:2022年10月20日
障害年金とは、どのような年金でしょうか?
病気やケガにより障害状態になると、国からの年金を受け取れる可能性があります。どのような状態でいくらくらいもらえるのか、あらかじめ確認しておきましょう。
この記事の執筆者
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
中村 宏
CFP(R)/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/FPオフィス ワーク・ワークス代表
CFP(R)/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/FPオフィス ワーク・ワークス代表
障害年金は、公的年金の加入者が所定の障害状態になった場合に支給される年金です。
障害状態になるきっかけとなった病気やケガで、初めて医師の診療を受けたときに加入していた公的年金で支給される障害年金が決まります。
国民年金の加入者であれば「障害基礎年金」が支給され、厚生年金の加入者であれば、障害基礎年金にプラスして「障害厚生年金」も支給されます。
障害厚生年金は、障害基礎年金よりも障害年金が支払われる障害状態の範囲が広くなっています。
さらに、その範囲に満たない障害が残った場合に、一時金の「障害手当金」が支給されます。
特別障害給付金は、従前の任意加入制度の対象者であった人が、公的年金に加入していない期間に障害状態になった場合に支払われます。
1986年3月以前の専業主婦や1991年3月以前の学生などが対象になります。
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それでは、どのようなときに障害年金がもらえるのか、その条件を見ていきましょう。
まず、公的年金(国民年金または厚生年金)の加入期間に初診日があることが求められます。
ただし、20歳前や60歳以上65歳未満の人は公的年金の加入義務者でないため、公的年金に加入していない場合には、まずは初診日が日本国内に住んでいるあいだにあることが求められます。
この条件に加え、保険料の納付要件について、次のいずれかを満たしていることも求められます。
ただし、20歳未満の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合には、保険料の納付要件がない代わりに、支給にあたっては所得制限があります。この障害年金を「20歳前障害による障害基礎年金」といいます。
障害年金には、障害の程度に応じた等級があります。
この等級は、障害基礎年金では1級と2級だけですが、障害厚生年金ではさらに3級があります。1〜3級の定義と具体的な障害の程度の例を次の表に示します。
障害年金1〜3級の定義と障害の程度の例
【程度の例】
【程度の例】
【程度の例】
このように、部位ごとに程度が定められています。
ここでは一部を抜粋しましたが、このほかにも精神障害(統合失調症、うつ病、認知障害、てんかん、知的障害、発達障害など)や内部障害(呼吸器疾患、心疾患、腎疾患、肝疾患、血液・造血器疾患、糖尿病、がんなど)についても程度の例が定められています。
認定が行われる日を障害認定日といい、原則、「初診日から1年6か月を経過した日」またはそれ以前に「傷病が治った日」になります。
「傷病が治った日」には、症状が安定してそれ以上の治療効果が期待できなくなった日も含まれます。
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障害認定されると、障害年金はいくらもらえるのでしょうか?
障害基礎年金も障害厚生年金も、障害の程度が大きいほど支給額が大きくなります。
このように1級は2級の1.25倍です。
これに子どもの加算があります。これは、人数により異なり、1〜2人目には各22万3800円、3人目以降には各7万4600円になります。
ここでも子どもとは、「18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子ども」か「20歳未満で障害等級1級または2級の障害者」にかぎられますよ
このように1〜3級まであります。
1級は2級の1.25倍で、生計を維持されている65歳未満の配偶者がいる場合に加給年金が加算されます。ちなみに、3級は加算がありません。
平均標準報酬月額×(7.125/1,000)×2003年3月までの被保険者期間の月数
+平均標準報酬額×(5.481/1,000)×2003年4月以後の被保険者期間の月数
国民年金加入者で2級の対象ですから、先ほどの障害基礎年金2級の計算式をもちいて計算します。
障害基礎年金の金額:77万7800円+子どもの加算(22万3800円)=100万1600円
ちなみに、子どもが18歳到達年度の末日を過ぎると子どもの加算がなくなるため、その後の支給額は77万7800円になります。
厚生年金に加入している場合には、障害基礎年金と障害厚生年金の両方が支給されます。
まずは障害基礎年金を計算します。
障害基礎年金の金額:77万7800円+子どもの加算(22万3800円×2人)=122万5400円…①
次に、障害厚生年金を計算するために、報酬比例の年金額を求めます。
報酬比例の年金額=平均標準報酬額×(5.481/1,000)×2003年4月以後の被保険者期間月数(最低300月)
=(420万円÷12か月)×(5.481/1,000)×300月=57万5505円
これを次の式にあてはめて計算します。
障害厚生年金の金額:報酬比例の年金額(57万5505円)×1.25+加給年金額(22万3800円)=94万3181円…②
したがって、ケース2の障害年金額は、生涯基礎年金と障害厚生年金を合計(①+②)した216万8581円になります。
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このような障害年金ですが、障害の状態によっては途中でもらえなくなることもあります。
永久認定は、基本的にずっと支給を受けられます。
有期認定では、1〜5年ごとの更新制となっており、その更新時期に障害の程度が軽くなっていれば、障害年金の等級が下がったり支給停止されたりする可能性があるのです。
更新時期には、医師の診断書欄のついた「障害状態確認届」が送付され、これを返送することで障害の程度を判断されます。これを提出しない場合には支給が停止されます。
また、毎年必要な「現況届」を提出しないときにも支給が停止されます。
支給停止になったとしても、その後、障害の程度が重くなれば、再び支給されるようになるので心配いりません
同じ病気やケガで、障害年金と労働者災害補償保険(労災保険)の障害補償給付(労災年金)の両方を受け取れることがあります。
その場合には、労災年金の額は障害年金の種類によって73〜88%に減額されて支給されますが、障害年金は全額支給されます。
ただし、20歳前障害による障害基礎年金の場合には、障害年金が全額支給停止され、労災年金が全額支給されます。
支給停止では再び支給があるかもしれませんが、失権した場合はそのかぎりではありません。
障害年金が失権する事由には、次の3つがあります。
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障害年金を受けるための申請には、「障害認定日による請求」と、「事後重症による請求」の2つがあります。
通常は「障害認定日による請求」で、障害認定日以降に障害年金を請求することをいいます。請求日からさかのぼって、障害認定日の翌月分から年金をもらうことができます。
「事後重症による請求」とは、障害認定日に障害年金に該当しなかった場合で、その後症状が悪化して障害等級に該当する状態になったときに請求することをいいます。請求日の翌月から年金をもらえるため、請求が遅くなるとその分受け取りが遅くなります。
これらの申請にあたっては、次のような書類が必要になります。
これらの書類の提出先は住所地の市区町村役場の窓口になりますが、初診日が国民年金第3号被保険者期間中の場合には最寄りの年金事務所になります。
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ここまで障害年金について見てきましたが、民間の保険商品の中にも障害状態になった場合に保障を受けられるものが2つあります。
1つめの候補は、終身保険や定期保険などの生命保険で、死亡保険金の代わりに受け取れる高度障害保険金です。
ただし、高度障害保険金の支給要件は、障害年金とは異なるものです。
たとえば、病気やケガにより両眼の視力をまったく永久に失うことや、両上肢とも手関節以上で失うことなど、約款所定の高度障害状態になった場合にかぎられます。
受け取れる保険金額は、死亡保険金と同額ですが、支払われると契約は消滅します。つまり、死亡保険金はなくなります。
もう1つは、病気やケガで働けなくなった場合に、一定期間、年金形式の給付金が支払われるタイプの保険です。
商品によって保障内容が異なり、支給開始時期や支給期間のほか、給付される状態の要件まで異なります。
比較的多い要件としては、入院中であるか在宅療養中であるかは問われず、「働けない状態である」という医師の診断を基に保険会社が判断するものです。
そのため、医療保険ではカバーしきれない、働けなくなることによる収入の減少をカバーすることができます。
このように、病気や事故によるケガなどにより、万一障害状態になったとしても、生活の支えになる障害年金があります。
ただし、子どもの教育費や住居ローンなど、すべての支出をまかなえるとはかぎりません。その不足部分に備えたい場合には民間の就業不能保険があります。
万一のときの保障も考えてみてはいかがでしょうか。
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