更新日:2025年3月18日
生命保険に加入する時には、多くの場合保険会社が審査を行い、その保険を引き受けるかどうかの判断をします。審査の内容は保険金額や被保険者の年齢などで異なり、健康状態の告知のほかに医師等による診査が必要なこともあります。審査の結果によっては保険に加入できないこともあるので注意が必要です。
この記事の監修者
CFP(R)資格/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/住宅ローンアドバイザー/FPオフィス ワーク・ワークス代表
中村 宏
大阪市立大学経済学部卒業後、 大手出版会社に勤務。 在職中に上級FP資格であるCFP(R)資格を取得。2003年にファイナンシャル・プランナーとして独立し、 FPオフィス ワーク・ワークス を設立。「お客様の『お金の心配』を解消する!」をモットーに、個人相談、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿などを行っています。 個人相談件数は1,500件超。
大阪市立大学経済学部卒業後、 大手出版会社に勤務。 在職中に上級FP資格であるCFP(R)資格を取得。2003年にファイナンシャル・プランナーとして独立し、 FPオフィス ワーク・ワークス を設立。「お客様の『お金の心配』を解消する!」をモットーに、個人相談、セミナー講師、雑誌取材、執筆・寄稿などを行っています。 個人相談件数は1,500件超。
保険会社の審査は、被保険者のリスクを判定するために行われます。生命保険におけるリスクとは、被保険者が死亡する確率や、病気やけがで入院や手術が必要になる確率など、不測の事態が起こる確率です。単純に、保険金や給付金の支払いが発生する確率ということもできます。
保険は、たくさんの人が日頃から少額のお金(保険料)を出し合って、不測の事態が起こった人にお金(保険金や給付金)を支払う「相互扶助」の仕組みで成り立っています。多数の人がお互いに助け合うには、契約者どうしが公平でなければなりません。保険会社の審査は、契約者間の公平性を確保するために行われます。そのため、審査の結果リスクの高い人だと判定された場合は保険に入れないことがあります。
審査は大きく3つの観点から行われます。
第1に「健康状態」です。申し込み時の治療中の病気の有無や過去の一定期間の病歴、健康診断や人間ドックの結果、身体の障害状態等の情報が被保険者のリスク判定に使われます。体型についても、肥満度の高い人は生活習慣病にかかる確率が高くなります。また、過去に妊娠で異常があったか、申し込み時に妊娠しているかどうかも審査の対象になります。
第2は「職業」です。リスクの高い職業の方は、加入できないことや、加入できても保険金額に制限が加わることがあります。保険会社や保険の種類にもよりますが、レーサーや登山家、アイスホッケー選手、ラグビー選手、プロボクサー、プロレスラー、サーカス団員、スタントマンなどは、一般的に生命保険も医療保険も加入できないとされています。
第3は「道徳的」な観点です。生命保険の不正利用や悪用を防ぐために、保険契約者、被保険者、保険金受取人が反社会的勢力等の場合、保険に加入することはできません。
また、収入や資産等に応じて制限が加わることもあります。契約内容が収入や資産等に照らし合わせてふさわしい保障額であるかが判定され、たとえば、無職で収入のない人は加入できなかったり、保険金額に限度額が設けられたりします。
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保険会社の審査は「告知」が基本です。告知とは、健康状態や職業等についてありのまま正しく保険会社に知らせること。
具体的な審査の方法には、保険金額や年齢等によって「告知書扱い」、「診査扱い」があり、保険会社が保険の種類ごとに基準を設けています。
審査の方法 | 内容 | ||
---|---|---|---|
告知書扱い | 保険会社所定の告知書(質問項目を記した書面)に、被保険者本人が自発的に回答する方法 | ||
診査扱い | 健康診断書扱い | 告知書に加え、一定期間内に実施した健康診断書のコピーを保険会社に提出する方法 | |
医師の診査 (社医、嘱託医) |
医師の診査を受け、面談の場で告知書を記入する方法 (血液検査、尿検査、心電図など) |
||
面接士扱い | 告知書に加え、生命保険面接士が面談をして健康状態を聴取する方法 |
告知書扱いの保険契約は、加入が簡単な一方で、事実と異なる告知によって保険の公平性が保たれなくなることがあるため、保険金額に一定の制限が設けられるのが一般的です。
加入できる保険は医療保険、がん保険、個人年金保険、保険金額の小さい死亡保険などで、保険金額等の上限は、保険の種類ごとに年齢や職業などによって基準が決められており、たとえば、「契約年齢が20歳以上40歳以下の場合の保険金額の上限は3,000万円、41歳以上45歳以下は2,500万円、46歳以上50歳以下は2,000万円、51歳以上55歳以下は1,500万円、56歳以上65歳以下は1,000万円」などとなっています。
告知書扱いの制限を超える保険金額の死亡保険などへの加入は、診査扱いによる審査が前提となっています。
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告知書は、保険会社や保険の種類によって異なりますが、一般的には以下のような質問項目で構成されており、「はい」か「いいえ」などを選択して回答していきます。
年収 | 約 万円 |
---|---|
身長・体重 | 身長 cm 、 体重 Kg |
勤務先名(学校名) | 電話番号 |
職種 | |
最近の健康状態 | 最近3ヶ月以内に、医師の診察、検査、治療、投薬のいずれかを受けたことがありますか? |
病気・けがについて | 過去5年以内に、病気やけがで、継続して7日以上の入院をしたことがありますか? |
過去5年以内に、病気やけがで、手術を受けたことがありますか? | |
過去5年以内に、病気やけがで、通算して7日以上にわたり医師の診察、検査、投薬のいずれかを受けたことがありますか? | |
健康診断・人間ドックについて | 過去2年以内に、健康診断・人間ドックを受けて、異常を指摘されたことがありますか? (異常とは、要経過観察・要再検査・要精密検査・要治療をいいます) |
身体の障害について | 下記のいずれかの身体の障害がありますか? ●視力・聴力・言語・そしゃく能力の障害 ●手・足・指の欠損または機能障害 ●背骨(脊柱)の変形または障害 |
女性の方 (満16歳以上) |
過去5年以内に、妊娠・分娩に伴う異常で、入院や手術を受けたことがありますか? (帝王切開を含む) |
現在、妊娠していますか? |
質問項目への回答が「はい」や「指摘あり」等に該当した場合は、さらに病気やけがの名前、診察・検査・投薬・治療の期間、現在の状況、入院期間、手術名・種類、手術部位、手術年月、薬剤名、健康診断結果や再検査の結果などについて詳細に記載する必要があります。
告知書には、ありのままのことをわかる範囲で正しく記載しなければなりません。告知内容が事実と違っていた場合には、告知義務違反として契約や特約が解除され、保険金等が支払われない場合があります。
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告知書の提出や医師の診査などを実施した後、審査結果が保険会社から知らされるまでの期間は目安として1週間から3週間程度でしょう。
なお、保険会社からの回答は、申し込んだ保障内容の通りに契約を無条件で引き受けるか、リスクが高く契約を引き受けない「謝絶」かのどちらかだけではありません。その間に、特別条件を付けて引き受けるケースもあります。これらは被保険者のリスクの種類や程度に応じて、契約者間の公平性を確保するための仕組みです。特別条件が付くことを契約者が承諾すれば加入することができます。
引き受け条件の種類 | 特徴 | ||
---|---|---|---|
無条件 | 申し込んだ保障内容の通りに引き受ける | ||
特別条件付きの引き受け | 保険料割増 | 通常の保険料に対し、リスクの種類や程度によって一定額を上乗せる条件で引き受ける | |
部位不担保 | 身体の特定の部位については一定期間保障しない条件で引き受ける | ||
特定疾病不担保 | 特定の病気を保障対象外にする条件で引き受ける | ||
保険金削減 | リスクの種類や程度によって一定期間保険金を削減する条件で引き受ける | ||
謝絶 | 引き受けない |
なお、審査の基準や引き受けの判断は、保険会社によって異なります。また、同じ保険会社であっても保険の種類によって異なります。そのため、ある保険会社で特別条件が付く場合でも、別の保険会社は無条件で引き受けることもあります。したがって、ひとつの会社の審査結果だけであきらめないほうがいいでしょう。
特別条件が付く場合の中でも、部位不担保や特定疾病不担保で保険に加入する方は、持病以外の病気やけがに備えることが目的になるでしょう。持病が悪化した場合に備えるには、引受基準緩和型保険や無選択型保険もあります。引受基準緩和型保険は、告知書の質問項目を少なくして引き受け基準を緩和したタイプの保険で、持病があり健康状態に不安がある人でも加入しやすくなっています。無選択型保険は無審査・無告知で誰でも入れる保険です。ただ、これらの保険は通常の保険より保険料が割高に設定され、一定期間は保険金が削減されます。家計の保険料負担に見合うだけの保障かどうかを十分に検討して加入したほういいでしょう。
保険は、加入しようとする人がさまざまな保険会社の多様な商品の中から選ぶことができる一方で、保険会社からも審査によって選ばれます。一般的に年齢を重ねるほどリスクが高くなる傾向があるだけに、保険に加入する意思があるなら、必要な保障額と必要な保障期間を早めに見極めて、リスクの低い健康状態が良い時に加入したほうがいいでしょう。
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