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火災保険を学ぶ
火災保険の風災補償は、どのような場合に補償が受けられるのでしょうか?
火災保険の風災補償や被害に遭った場合の申請方法について解説します。
風災とは、台風や突風、竜巻、暴風などの強い風による災害のことをいいます。日本は台風などによる暴風や突風、竜巻による被害が多く、強風により災害が起こるおそれがあるときは強風注意報が発表され、重大な災害が起こるおそれがあるときは暴風警報が発表されます。
災害をもたらした気象事例
2022年(令和4年) | ||
---|---|---|
令和4年台風第14号による暴風、大雨等 | 9月17日〜9月20日 | 九州を中心に西日本から北日本の広い範囲で暴風となり、海では猛烈なしけや大しけ |
2021年(令和3年) | ||
発達した低気圧および強い冬型の気圧配置に伴う大雪・暴風 | 1月7日〜1月11日 | 北日本から西日本の日本海側を中心に広い範囲で大雪・暴風。北陸地方の平地で1メートルを超える積雪 |
2020年(令和2年) | ||
強い冬型の気圧配置による大雪 | 12月14日〜12月21日 | 北日本から西日本の日本海側を中心に大雪 |
群馬県みなかみ町藤原で期間降雪量291センチ | ||
台風第10号による暴風・大雨等 | 9月4日〜9月7日 | 南西諸島や九州を中心に暴風や大雨。長崎県野母崎で最大瞬間風速59.4メートル |
2019年(平成31年/令和元年) | ||
令和元年東日本台風(台風第19号)による大雨・暴風等※ | 10月10日〜10月13日 | 記録的な大雨・暴風・高波・高潮 |
2018年(平成30年) | ||
台風第24号による暴風・高潮等 | 9月28日〜10月1日 | 南西諸島および西日本・東日本の太平洋側を中心に暴風。紀伊半島などで顕著な高潮 |
台風第21号による暴風・高潮等 | 9月3日〜9月5日 | 西日本から北日本にかけて暴風。特に四国や近畿地方で顕著な高潮 |
強い冬型の気圧配置による大雪 | 2月3日〜2月8日 | 北陸地方の平野部を中心に日本海側で大雪 |
南岸低気圧及び強い冬型の気圧配置による大雪・暴風雪等 | 1月22日〜1月27日 | 関東甲信地方や東北太平洋側の平野部で大雪 |
日本海側を中心に暴風雪 | ||
2017年(平成29年) | ||
台風第21号および前線による大雨・暴風等 | 10月21日〜10月23日 | 西日本から東日本、東北地方の広い範囲で大雨。全国的に暴風 |
台風第18号および前線による大雨・暴風等 | 9月13日〜9月18日 | 南西諸島や西日本、北海道を中心に大雨や暴風 |
梅雨前線および台風第3号による大雨と暴風 ※平成29年7月九州北部豪雨 (7月5日〜7月6日) |
6月30日〜7月10日 | 西日本から東日本を中心に大雨。5日から6日にかけて西日本で記録的な大雨 |
では、風災で想定される被害には、どのようなものがあるのでしょうか。
上記の被害例は一部にすぎませんが、それでも建物や家財、人などに及ぶ風災はさまざまであることがわかります。
そして、風災で建物や家財が損害を受けたときに補償してくれる保険が火災保険です。
火災保険に加入すると、風災による被害は基本補償に含まれているのが一般的で「風災・雹災・雪災」がセットになっています。そのため、いずれかの災害が原因で建物や家財が所定の損害を受けた場合、補償が受けられます。
「自然災害の風災」で想定される10パターンの被害例をもとに「火災保険の風災」で補償される内容について解説します。
まず、「火災保険の風災」として認められるものについて見てみましょう。「火災保険の風災」で補償される損害は、強風や台風など風が原因で発生した場合です。また、火災保険では、保険の対象を建物のみ、家財のみ、建物と家財の3つの中から選びますが、保険の対象をどのように選択するかによって、風災に遭ったときに補償される損害が異なります。
保険の対象を建物のみとした場合、建物本体だけでなく、建物がある敷地内に設置されたもので、かつ保有しているものは補償されます。床暖房やトイレ、システムバス、システムキッチンなどのように、建物のなかにあるものでも動かせないものは建物とみなされます。保険の対象を家財のみとした場合、建物がある敷地内に収容される家財が補償されます。家具やテレビ、冷蔵庫などの家電製品、自転車など生活用動産が該当します。保険の対象を建物と家財とした場合は、建物のみと家財のみの両方が補償されます。
「火災保険の風災」で補償されるもの
保険の対象 | 主な対象物 |
---|---|
![]() 建物 |
|
![]() 家財 |
|
では次に、10パターンの被害例が「火災保険の風災」で補償されるのかを詳しく見ていきましょう。
風災で想定される被害例 | 保険の対象 | |||
---|---|---|---|---|
建物のみ | 家財のみ | 建物と家財 | ||
強風で屋根の瓦が飛んでしまった | ○ | × | ○ | |
強風で庭の物置が倒れ、隣家の塀を壊してしまった | × | × | × | |
竜巻による風で物が飛んできて窓ガラスが割れた | ○ | × | ○ | |
台風並みの暴風によりベランダが破損した | ○ | × | ○ | |
台風で屋根瓦が飛び、そこから入る雨により家具がぬれた | 屋根瓦の修理○ 家具の損害× |
屋根瓦の修理× 家具の損害○ |
○ | |
強風により自転車が倒れ破損した | × | ○ | ○ | |
突風で自動車が横転した | × | × | × | |
突風でカーポートの骨組みが傾斜した | ○ | × | ○ | |
強風の影響で転んでケガをした | × | × | × | |
竜巻とともに飛んできた木材が体に刺さりケガをした | × | × | × |
被害例:
被害に遭った屋根の瓦、窓ガラス、ベランダ、カーポート(車庫)は、いずれも建物に含まれるため、保険の対象を建物のみと建物と家財にしている場合、補償の対象となります。
被害例:
風災で損害が発生しているのは、隣家の塀です。物置も損傷があるかもしれません。火災保険の補償の対象となるのは、自分が所有している建物やその建物の敷地内に収容されている家財です。物置は建物とみなされるため、修理や買い替えが必要であれば補償されます。一方、隣家に与えた損害は、風災によるものでも火災保険の対象とはなりません。また、自然災害のような不可抗力の事故では、一般的に賠償責任は発生しません。建物の管理上、重大な過失があった場合は損害賠償が発生しますが、火災保険や自動車保険の個人賠償責任保険特約を付けていると、そこから補償が受けられます。(関連ページ:火災保険の個人賠償責任特約とは)
被害例:
この例は、台風などの強い風で屋根瓦が飛んでしまい、修理のためにシートをかぶせてあったものの、その後、雨が降りだし、強い雨風でシートの隙間から雨漏りしソファなどの家具やテレビなどの家電製品が使えなくなってしまった、というものです。風災によって屋根瓦が飛んでしまった場合、建物を保険の対象としていると屋根の修理が補償されるのは、被害例 と同じです。「火災保険の風災」では、建物または屋外設備・装置の外側の部分が風災によって破損し、その破損部分から建物内部に雨などが吹き込むことによって生じた損害も補償の対象です。ただし、この例のように、家具などの家財に生じた損害を「火災保険の風災」で補償するには、家財も保険の対象にしておく必要があります。(関連ページ:家財の保険金額を決める)
被害例:
自転車は家財に含まれます。総排気量が 125cc以下の原動機付自転車も家財に含まれます。
風災による自転車や原動機付自転車の損害が心配な方は、家財も保険の対象にしておくといいでしょう。
被害例:
自動車(マイカー)は家財に含まれないため、任意の自動車保険に車両保険を付けていると補償が受けられます。
被害例:
火災保険では、補償の対象に人は含まれません。風災によってケガをした場合は、傷害保険に加入していると補償が受けられます。
雹(ひょう)災とは雹による被害のことで、そもそも雹とは直径が5mm以上の氷の粒をいいます(5mmより小さいものは霰(あられ)です)。気象庁のホームページによると、雹は大きいものでは5cm以上になるものもあるそうです。
少し前になりますが、2014年(平成26年)6月に東京都三鷹市周辺で降った雹は30センチくらいつもり、季節外れの雪景色になったことをニュースなどで見られた人も多いのではないでしょうか。
雹災も局地的な被害に遭うことが特徴です。
最後に、雪災とは豪雪や雪崩による被害のことで、雪の重みで軒がゆがんでしまったときや、雪崩に巻き込まれて自宅が倒壊したときなどに補償されます。ただし、雪が解けて洪水になる融雪洪水は雪災に含まれず、水災として補償されます。
2021年(令和3年)1月に起きた大雪(令和3年豪雪)では、建物損害による保険金の請求が6万件を超えています。(参考:日本損害保険協調査結果)
「火災保険の風災」で補償が受けられない主な例としては、次のようなものがあります。
通風口や窓の隙間などから雨などが吹き込み、室内に損害が生じた場合は、「火災保険の風災」とみなされません。補償の対象となるのは、風災が原因で、建物の外側の部分(外壁、屋根、開口部など)が破損し、そこから雨などが吹き込んだり雨漏りしたりする場合に限ります。
建物の経年劣化や老朽化によって、建物内部や家財に水ぬれなどの損害が発生した場合は、補償の対象にはなりません。老朽化で家に隙間ができてしまったとしても、老朽化に対応する保険はないので、家のメンテナンスは定期的にしていきましょう。
保険金の請求期限は保険法で3年とされているため、被害に遭ったら速やかに保険会社に連絡しましょう。保険会社によっては、法律とは異なる請求期限を設けていることもあるため、保険請求期限の時効についてあらかじめ確認しておくと安心です。風災補償を付けていることを忘れていた、そもそも火災保険に入っていることを知らなかったなどの理由で事故の連絡が遅れてしまった場合、時効が過ぎてしまっていても請求が認められる可能性もありますので、保険会社に問い合わせてみるといいでしょう。
火災保険では、支払要件に当てはまった場合、契約時に決めた保険金額を限度として損害保険金が支払われます。損害保険金として支払われる金額は、損害額から免責金額(※4)を差し引いた残りの金額です。
損害保険金の支払金額
ただし、風災補償は、免責金額を別途設定できるようにしている保険会社が多くあります。一般的に、免責金額を高額にするものと、免責金額をなしにするかわりに損害額が20万円以上となった場合のみ補償されるものがあります。これは、住んでいる地域や建物の構造によって、自然災害から受ける損害の大きさに違いがあるためです。
実際に事故が発生し損害を受けたときには、どのような手続きが必要になるのでしょうか。一般的な保険金の請求方法とその流れを見てみましょう。
損害保険金の請求手続き
①契約者は、保険会社に風災事故で損害があったことを連絡します。連絡する内容は、契約者名や保険証券番号、事故の日時・場所、保険の目的、事故の状況などが一般的です。事故の状況や原因などはわかる範囲で問題ありません。
②保険会社に連絡をすると、保険金の請求に必要な書類などについての案内が送られてきます。
③保険金の請求に必要な書類などをそろえて保険会社に提出します。通常、保険金の請求には、次のようなものが必要となります。
被害の程度が大きく保険金請求額が高額になる場合は、印鑑証明書や建物登記簿謄本(保険の対象が建物の場合)などの提出が必要になることもあります。
④保険会社は、現地で損害状況の確認・調査を行います。調査結果と契約者から提出された書類や画像データなどに基づき、保険金支払いの審査・認定を行います。補償の対象と認定されると、損害保険金の金額が確定します(保険会社は、契約者に支払う保険金の金額について連絡し了解を得ていることが前提です)。
⑤契約者が指定する銀行口座に保険金が支払われ、手続きは完了します。
風災補償では、次の2つのことに気をつけましょう。
台風が上陸する回数が多い地域や台風の通り道になっている地域は、風災による被害を受ける可能性があります。免責金額は、その金額が高いほど保険料を節約することができますが、実際に事故が起こると、免責金額は自己負担しなければいけません。そのため、免責金額は、貯蓄の中からいつでも無理なく支払える金額に設定しておきましょう。(関連ページ:火災保険の免責とは)
マンションに住んでいる人であれば、家財の被害が起きにくいと考えて補償を外すことを検討することや、高台に住んでいて、風の通り道になっているのであれば、建物部分の補償は免責金額をなくすといった、住環境や補償対象によって、必要な補償や保険金額、免責をつけるかつけないかなど検討していきましょう。(関連ページ:火災保険の対象を決める、分譲マンションの火災保険選び)
近年、住宅の修理に関するトラブルが増えています。工事の見積もりや保険金の請求手続きを代行する業者から、「保険が使える」などと勧誘され、契約を交わした後にトラブルが発生するというものです。トラブルの例は次のとおりです。
火災保険では、事故により損害を受けた建物や家財を、原状回復という事故の前と同じ状態に戻すために必要な費用が補償されます。見栄えを良くしたり、既存の部品や製品よりも高品質の製品を用いたりして行うリフォーム工事は対象外です。台風・集中豪雨・大雪・地震などの自然災害の後に業者から勧誘されることも考えられます。自宅に被害があった場合は、心に余裕がなくなっていることもあるかもしれませんが、業者と契約する前に、まず保険会社あるいは保険代理店へ相談しましょう。
中山 弘恵(なかやま ひろえ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
国内損害保険会社での代理店支援業務、都市銀行での資産運用アドバイス・住宅ローン審査業務を経て独立。1人でも多くの人が心豊かで幸せな人生を送れるサポート役として、講演活動、執筆業務、個別相談を通して、生活に欠かせないお金についての正しい情報と知識を発信している。
潟vラチナ・コンシェルジュ所属