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火災保険を学ぶ
地震保険は、単独で加入することはできず、火災保険とあわせて契約する必要があります。地震保険の保険料は、どこの保険会社で加入しても一律同じです。では、地震保険の仕組みはどうなっているのでしょう? 地震保険の仕組みについて詳しく解説します。
地震保険とは、地震や津波、噴火を原因とする火災・損壊・埋没・流失による損害を補償する保険です。地震はその発生時期や頻度の予測が困難なうえ、ひとたび起こると広範囲に巨大な損害をもたらす可能性があるため、民間の保険会社だけでは補償できないケースも想定されます。
そのため、大きな地震や津波・噴火で所定の損害が発生した場合は、「地震保険に関する法律」に基づき、国が保険金の支払いの一部を負担する(再保険)契約を保険会社は政府と結んでいます。このように地震保険は保険会社と政府が共同で運営する公共性の高い保険といえます。
地震保険は単独で加入することはできず、民間の火災保険と必ずセットで契約します(すでに加入している火災保険にあとから付けることも可能)。火災保険は、加入する保険会社や商品、プランによって、補償内容や保険料が異なりますが、地震保険はどの保険会社で契約しても内容や保険料に違いはありません。この点でも、火災保険と地震保険は全く異なるといえるでしょう。
地震や噴火が原因で発生した火災については火災保険では補償されませんが、火災保険に用意されている「地震火災費用特約」を付加すれば、建物が半焼以上、または家財が全焼した場合に火災保険金額の5%などを限度に補償されます。火災保険金額2000万円なら100万円ですから、生活再建に十分とはいえません。また、地震火災費用特約は火災のみが対象で、地震などを原因とする損壊・埋没・流失による損害は補償されません。
地震保険の補償の対象となるのは、居住用の建物と生活用動産(家財)で、工場や事務所専用の建物などは対象となりません。また、30万円を超える宝石や書画・骨董(こっとう)、有価証券、自動車などは対象外です。契約方法には、建物と家財、建物のみ、家財のみという3つの選択肢があります。
地震保険の契約金額は、火災保険の契約金額の30〜50%の範囲で設定します。たとえば建物に火災保険2000万円をつけているなら、地震保険は600万〜1000万円で設定するわけです。ただし、建物は5000万円、家財は1000万円が限度となっています。地震保険は「被災者の生活の安定」を目的としており、火災保険金額の全額が支払われるわけではない点は注意しましょう。
支払われる保険金は、損害の大きさ(損害区分)によって異なります。地震によって損害が発生すると、保険会社の調査により「全損」「大半損」「小半損」「一部損」の4段階に区別され、それぞれの損害の程度に応じて保険金が支払われます。全損の場合、契約した地震保険の保険金額の100%が支払われるのに対して、大半損では60%、小半損では30%、一部損では5%のみとなっています。
区分 | 建物の認定基準 | 家財の認定基準 | 支払われる 保険金の額 |
---|---|---|---|
全損 |
@主要構造部の損害額が、 時価額の50%以上 A焼失・流失した床面積が、 建物の延床面積の70%以上 |
損害額が 家財全体の時価額の 80%以上 |
地震保険金額の100% (時価額が限度) |
大半損 |
@主要構造部の損害額が、 時価額の40%以上 50%未満 A焼失・流失した床面積が、 建物の延床面積の50%以上 70%未満 |
損害額が 家財全体の時価額の 60%以上 80%未満 |
地震保険金額の60% (時価額の60%が限度) |
小半損 |
@主要構造部の損害額が、 時価額の20%以上 40%未満 A焼失・流失した床面積が、 建物の延床面積の20%以上 50%未満 |
損害額が 家財全体の時価額の 30%以上 60%未満 |
地震保険金額の30% (時価額の30%が限度) |
一部損 |
@主要構造部の損害額が、 時価額の3%以上 20%未満 A全損・大半損・小半損に至らない場合、 床上浸水または地盤面より45cmを超える浸水 |
損害額が 家財全体の時価額の 10%以上 30%未満 |
地震保険金額の5% (時価額の5%が限度) |
地震保険は総支払額に限度額が設けられており、1回の地震などで12兆円(2021年4月現在)を超える損害が発生したときには、個々に支払われる保険金の額が減額されることがあります。ただし、この総支払限度額は関東大震災クラスの巨大地震を想定した金額となっており、過去の実績などを参考に見直しも行われています。
保険料は、建物の構造と所在地(都道府県)によって異なります。地震保険の構造は、セットで契約する火災保険の構造で区分が決まり、家財もそれを収容する建物の構造で決定します。鉄骨やコンクリート造など耐火や準耐火構造の建築物(イ構造)と、木造住宅など非耐火(ロ構造)に分かれますが、非耐火のほうが、耐火や準耐火に比べて燃えやすく、津波や地震による土砂崩れでも流失しやすいなど、損害が大きくなる可能性が高いため、保険料は高くなります。
火災保険の建物の構造 | 地震保険の建物の構造 | 例 |
---|---|---|
住宅物件 M・T構造、A・B構造 店舗併用住宅、工場物件など 特級・1級・2級構造 |
イ構造(耐火) | コンクリート造、鉄骨造など![]() |
住宅物件 H構造、C・D構造 店舗併用住宅、工場物件など 3級・4級構造 |
ロ構造(非耐火) | 木造など![]() |
また、地震が発生する確率が高く、さらに地震が発生した際に被害が大きいと予想される地域ほど保険料は高くなります。たとえば、南海トラフ地震や首都直下地震などの発生を想定して、東海地域(静岡・愛知・三重・和歌山)や四国南部(高知・徳島)、建物が密集する首都圏(東京・神奈川・千葉・埼玉・茨城)などの保険料が高くなっています。
保険金額1000万円あたり、保険期間1年の保険料(単位:円)
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地震保険は建物の免震・耐震性能に応じて、保険料の割引制度が設けられています。割引を利用するには、必要な確認書類を提出する必要があります。なお、割引は重複して受けることができないので、割引率が大きいものを1つ選ぶとよいでしょう。
名称と割引率 | 適用対象 | 主な必要書類 ※ |
---|---|---|
免震建築物割引 【50%】 |
・「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づく免震建築物 |
・「建設住宅性能評価書」または「設計住宅性能評価書」 ・フラット35Sに関する「適合証明書」または「現金取得者向け新築対象住宅証明書」 ・「住宅性能証明書」 ・長期優良住宅に関する「技術的審査適合証」 ・「認定通知書」等の長期優良住宅の認定書類および、「設計内容説明書」等の免震建築物であることまたは耐震等級が確認できる書類 ・「耐震性能評価書」(耐震等級割引の場合のみ) ・「満期案内書類」や「契約内容確認のお知らせ」 など |
耐震等級割引 【50%】 【30%】 【10%】 |
・「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づく耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)を有している建物 ・国土交通省の定める「耐震診断による耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)の評価指針」に基づく耐震等級を有している建物 |
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耐震診断割引 【10%】 |
・地方公共団体等による耐震診断または耐震改修の結果、改正建築基準法(昭和56年6月1日施行)における耐震基準を満たす建物 |
・「耐震基準適合証明書」 ・「住宅耐震改修証明書」 ・「地方税法施行規則附則に基づく証明書」 ・「満期案内書類」や「契約内容確認のお知らせ」 など |
建築年割引 【10%】 |
・昭和56年6月1日以降に新築された建物 |
・「建物登記簿謄本」「検査済証」「建物登記済権利証」「建築確認書」 などの公的機関等が発行する書類 ・宅地建物取引業法に基づく「重要事項説明書」「不動産売買契約書」「賃貸住宅契約書」 ・建築工事施工業者が交付する「工事完了引渡証明書(建物引渡証明書)」 など |
また、保険料を節約するには、保険期間1年ではなく長期契約(2〜5年)を結ぶ方法が有効です。
保険期間1年の保険料に下記の長期係数を掛けた金額が保険料となります。たとえば、保険期間5年で契約すると、1年間を5回更新するよりも、保険料は約6%安くなる計算です。
期間 | 2年 | 3年 | 4年 | 5年 |
長期係数 | 1.90 | 2.85 | 3.75 | 4.70 |
さらに、払い込んだ地震保険料の一定額が、その年の契約者の所得から控除され、税金が軽減される「地震保険料控除」もあります。
税金の種類 | 控除対象額 |
所得税 | 地震保険料の全額(最高50,000円) |
住民税 | 地震保険料の1/2(最高25,000円) |
このような割引や税金の控除などの制度を上手に活用して、地震保険料の負担を抑えるといいでしょう。
近年では、2011年3月の東日本大震災、2016年4月の熊本地震、2018年9月の北海道胆振東部地震といった最大震度7の地震が起きています。また、政府(地震調査研究推進本部)が、南海トラフで30年以内にマグニチュード8〜9クラスの巨大地震が発生する確率を70〜80%とみているとの報道もあります。そのような状況から火災保険に地震保険をセットして契約している件数の割合は69.0%(2021年度 全国)と年々増加してきています。
田辺 南香(たなべ みか)
(株)プラチナ・コンシェルジュ ファイナンシャル・プランナー(CFP)
ライフプランから見た家計管理・保険・住宅などマネーに関するアドバイスや、セミナー・Webサイト・雑誌等で情報発信を行う。主な書著「“未来家計簿”で簡単チェック! 40代から間に合うマネープラン」(日本経済新聞出版社)、「隠すだけ!貯金術」「家計簿いらずの年間100万円!貯金術」「女ひとり人生 お金&暮らしの不安が消える本」。
(KADOKAWA メディアファクトリー)。