山が多く、台風や大雨、地震も多い日本は、がけ崩れや地滑り、土石流などの土砂災害が発生しやすい環境にあるといえます。土砂災害に備えて気を付けておきたいことや、災害に見舞われたときに火災保険・地震保険でカバーされる範囲などについてご紹介します。

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住まいを守る保険には、火災保険と地震保険があります。
火災保険は、火災のほか、落雷やガス爆発などの破裂・爆発、竜巻などの風災、雹(ひょう)災、雪災、水災、自動車の飛込みなどの衝突・飛来・落下、水漏れ、デモなど騒じょうによる暴行・破壊、盗難といったさまざまなリスクに対応することが可能です。
土砂災害は、大雨によって引き起こされるケースが多く、その場合は、水災として火災保険の対象になります。
各損害保険会社が取り扱っている火災保険は、基本補償に水災補償が含まれているものもありますが、水災補償を外すことができるものや、水災補償が含まれていないプランもあります。また、保険金の支払いに一定の条件が定められていることもあります。
地震や火山の噴火によって引き起こされた土砂災害で被害に遭った場合は、火災保険の対象にはなりませんが、地震保険の対象になります。地震保険は、政府と損害保険会社が共同で運営する地震や噴火に備えるための保険で、火災保険とセットで加入する必要があります。
2018年4月の大分で起こった山崩れのように、雨が降っていない場合の土砂災害は、火災保険や地震保険の対象になるのでしょうか。
国土交通省の発表によると、土砂災害の原因は、基礎となる岩盤が風化したことによるものとみられています。このケースは、災害の原因が地震、噴火、津波、水災(台風や暴風雨、豪雨など)、不測かつ突発的な事故に該当しません。また、約款で「土地の沈下・隆起・移動等に起因する損害」は免責とされていることから、火災保険からも地震保険からも補償を受けられません。
では、土砂災害による被害で想定される例には、どのようなものがあるのでしょうか。
これらの例をもとに、土砂災害による被害が保険で補償されるのかについて見ていきましょう。
台風による大雨が原因で山崩れを起こし、建物が損害を受けているため、火災保険で保険の対象を「建物」としていた場合は、水災補償が受けられる可能性があります。土砂の一部が家のなかに入り、家具や家電製品などの家財も被害に遭うこともあります。その場合は、建物とは別に、「家財」を火災保険の対象として契約している必要があります。
火災保険の水災補償では、一般的に下記のいずれかの支払要件に当てはまった場合に損害保険金が支払われます。損害保険金として支払われる金額は、損害額から免責金額(※1)を差し引いた残りの金額です。
一般的な支払要件と損害保険金の支払金額
| 支払要件 |
|
|---|
損害保険金の支払金額
長雨が原因で土砂崩れが発生し、庭木に損害があった場合は、火災保険で保険の対象を「建物」としていると、水災補償が受けられる可能性があります。ただし、補償が受けられる場合でも、建物も損害を受けていて、一定期間内に庭木が枯死した場合に限るなどの支払要件や、1回の事故に支払われる損害保険金の上限金額が決まっています。動物や植物は、保険会社によって保険の対象に含めるかどうかが異なるため、注意が必要です。
自動車は、火災保険の家財に含まれないため補償の対象外となりますが、任意の自動車保険に車両保険を付けていると、そこから補償が受けられます。
地質が原因で起きたとみなされる災害は、火災保険からも地震保険からも補償が受けられません。
地震が原因で起こった地滑りが発生し、建物が損壊した場合は、地震保険で保険の対象を「建物」としていると、補償が受けられる可能性があります。建物内の家具や家電製品などの家財も損害を受けた場合は、建物とは別に、「家財」を地震保険の対象として契約している必要があります。
地震保険の保険金額は、火災保険の保険金額の30〜50%の範囲で設定します。ただし、保険金額は、建物は5000万円、家財は1000万円が限度です。
地震保険では、保険の対象となっている建物や家財の損害の状況に応じて、「損害の程度」を「全損」、「大半損」、「小半損」、「一部損」に分類します。その「損害の程度」によって支払われる保険金が決まります。
地震保険で支払われる保険金(契約時期:2017年1月以降)
| 損害の程度 | 支払われる保険金(建物・家財) |
|---|---|
| 全損 | 地震保険金額の全額(時価額が限度) |
| 大半損 | 地震保険金額の60%(時価額の60%が限度) |
| 小半損 | 地震保険金額の30%(時価額の30%が限度) |
| 一部損 | 地震保険金額の5%(時価額の5%が限度) |
時価とは、同等の物を新たに建築あるいは購入するのに必要な金額から、使用期間や経過年数などに応じた消耗分を差し引いた金額のことです
土砂災害の被害に遭っても火災保険や地震保険の補償が受けられない主な例に、次のようなものがあります。
保険金の請求期限は保険法で3年とされているため、被害に遭ったら速やかに保険会社に連絡しましょう。保険会社によっては、法律とは異なる請求期限を設けていることもあるため、保険請求期限の時効についてあらかじめ確認しておくと安心です。火災保険に加入していることを忘れていた、そもそも火災保険で請求ができることを知らなかったなどの理由で事故の連絡が遅れてしまった場合、時効が過ぎてしまっていても請求が認められる可能性もあります。気づいた時点で保険会社に問い合わせてみるといいでしょう。
実際に事故が発生し損害を受けたときには、どのような手続きが必要になるのでしょうか。火災保険と地震保険それぞれの一般的な保険金の請求方法とその流れを見てみましょう。
@契約者は、保険会社に土砂災害で損害があったことを連絡します。連絡する内容は、契約者名や保険証券番号、事故の日時・場所、保険の目的、事故の状況などが一般的です。事故の状況や原因などはわかる範囲で問題ありません。
A保険会社に連絡をすると、保険金の請求に必要な書類などについての案内が送られてきます。
B保険金の請求に必要な書類などをそろえて保険会社に提出します。通常、保険金の請求には、次のようなものが必要となります。
被害の程度が大きく保険金請求額が高額になる場合は、印鑑証明書や建物登記簿謄本(保険の対象が建物の場合)などの提出が必要になることもあります。
C保険会社は、現地で損害状況の確認・調査を行います。調査結果と契約者から提出された書類や画像データなどに基づき、保険金支払いの審査・認定を行います。補償の対象と認定されると、損害保険金の金額が確定します(保険会社は、契約者に支払う保険金の金額について連絡し了解を得ていることが前提です)。
D契約者が指定する銀行口座に保険金が支払われ、手続きは完了します。
@契約者は、保険会社に地震が原因で土砂災害の損害があったことを連絡します。連絡する内容は、契約者名や保険証券番号、事故の日時・場所、保険の目的、事故の状況などが一般的です。
A保険会社から、地震保険調査員の訪問調査日について連絡があるので、日程を調整します。
B調査日に、地震保険調査員が訪れ、被害状況を確認します。必要に応じて、保険金請求に必要な書類の案内があります。
C保険会社は、調査結果から「損害の程度」を「全損」、「大半損」、「小半損」、「一部損」に分類し、算出した保険金を契約者に連絡します。
D契約者は、保険会社の連絡を受け、保険金請求に必要な書類を提出します(保険会社は、契約者に支払う保険金の金額について連絡し了解を得ていることが前提です)。
E契約者が指定する銀行口座に保険金が支払われ、手続きは完了します。
免責金額を高く設定すると、低く設定した場合に比べて、保険料を抑えることが可能です。一方で、事故の際に自己負担する金額が大きくなります。
また、免責金額を高く設定することで、損害の程度によっては、損害保険金がほとんど支払われないこともあります。
日本は、国土の約7割が山地や丘陵地で、傾斜が急な山や火山が多い国です。台風や大雨、地震なども多いため、土砂災害が発生しやすい国土環境にあります。そのため、土砂災害が起こる原因はさまざまで、その原因によって、補償される保険が異なることは、これまで見てきたとおりです。
土砂崩れやがけ崩れなど土砂災害は広範囲で甚大な被害になることが多いため、自宅の周りでそのような災害が起こりやすい箇所はないか、ハザードマップなどで確認をするとともに、日頃から保険や貯蓄などで災害に備えておくと安心です。