生命保険の動向
2025年9月更新
記事の監修者
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松浦 建二ファイナンシャル・プランナー、青山学院大学非常勤講師
CFP®資格、1級ファイナンシャル・プランニング技能士
家族構成によって生命保険の必要性や保障額は異なる
生命保険の主な目的は、自身の死後に遺族が生活に困らないよう備えることです。
遺族の生活費や子どもの教育費など、まとまった費用が必要になる場合が多く、時代が変わっても、この必要性は変わりません。
ただし、生命保険の必要性や保障額(保険金額)は、年齢や家族構成、経済状況などによって異なります。
ここからは、参考として、世帯ごとに設定している保険金額の傾向を見てみましょう。
夫婦と子あり世帯(末子が小中学生)
以下の図1のように、末子が小中学生の世帯では、保険金額を3,000万〜5,000万円で設定している割合が最も多いです。
遺族の生活費や子どもの教育費を長期間まかなわなければならないため、比較的大きな保障を確保する必要があります。
図1 夫婦と子あり(末子が小中学生)世帯が設定している保険金額
- 出典:2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査(生命保険文化センター)
夫婦のみ世帯(世帯主40歳以上)
一方で、夫婦のみの世帯では、以下の図2のように保険金額を500〜1,000万円で設定している割合が多くなっています。
特に、配偶者に一定の収入がある場合は、大きな保障は必要ありません。
図2 夫婦(世帯主40歳以上)のみ世帯が設定している保険金額
- 出典:2024(令和6)年度 生命保険に関する全国実態調査(生命保険文化センター)
なお、単身世帯の場合は、扶養家族がいないため、大きな保障を必要としないケースが一般的です。
このように、必要な保障額は、家族構成や収入などの経済状況、就業状況や住居形態によって異なるため、生活状況に合わせて選ぶことが大切です。
資産形成ニーズの高まりで、変額保険に注目が集まる
近年は、新NISAの拡充による税制優遇や、ライフプランや資産形成に関する情報を知る機会が増えていることなど、投資を後押しする制度や環境が整いつつあります。
こうした背景から、生命保険でも、死亡や高度障害に対する保障に加えて、将来の資産形成を同時にできる商品が注目されるようになりました。
その代表例が、変額保険です。
変額保険は、死亡などへの保障をもちながら、支払った保険料の一定割合を株式や債券などで運用し、運用実績に応じて、受け取れる保険金や解約返戻金が増減する生命保険です。
図3のデータにもあるように、2019年度から2023年度までの5年間、変額保険の新契約件数は毎年増加しています。加えて、2023年度の件数は2019年度の2倍以上に伸びていることもわかります。
図3 変額保険の新契約件数
- 出典:2024年版 生命保険の動向 個人保険の種類別新契約件数の推移(一般社団法人 生命保険協会)
なお、資産形成ニーズは、今後も高まることが予想されます。それに伴って、変額保険は保障と資産形成を両立できる選択肢として、その存在感をさらに強めていくでしょう。
保障内容の定期的な確認と見直しが重要
生命保険の保障内容は、時代やニーズの変化に合わせて多様化し、近年では従来の死亡保障に加えて資産形成機能を備えた商品も選べるようになっています。
一方で、商品の選択肢が広がっても、状況に合った死亡保障を確保することの重要性は変わりません。十分な保障がなければ、遺族が生活を維持できなくなってしまう可能性があるためです。
そのため、生命保険の保障内容は、家族構成や生活環境の変化に合わせて見直すことが大切です。たとえば、結婚や出産、住宅を購入したときなど、ライフステージが変わるタイミングで保障内容を確認し、必要に応じて見直しましょう。
そのうえで、老後の生活資金など将来に向けた資産形成を検討している場合は、変額保険などの資産形成機能を備えた保険を活用することも選択肢の一つです。